9月20日、私は羽田空港にて中国は上海行きの飛行機を待っていた。考えてみれば今年16回目の海外出張である。今年、私は57歳になった。この仕事を1997年から始めて1998年から海外出張を始めた。もうかれこれ30年に近い歳月をこの海外出張に費やしてきた。途中から自社の営業には直接結びつかない役割に変えた。そして各国や地域の業界をリサーチし、そこで足りない事は何か?何をやっていけばいいのか?を考える出張に変えた。会社にとってプラスになるかどうか、はその当時わかるわけがない。しかしその活動が世の中のお客様の心を掴む原動力になったわけだから現在はここまでエキサイティングな仕事になった。自社製品を売ることだけしか考えない仕事は人々に感謝されないし、訪問を受け入れてもらえない。やはり仕事は「他利第一主義」を掲げればとても美しくなるし、人々からも感謝されるものになる。私のこの活動スタイルは死ぬまで変わらないだろう。
ということで、今回は中国・上海で行われるTexcare Asia & China Laundry Expoに参加してきた。今回の展示会はとても興味があった。というのも、日本のクリーニング業が苦境にさらされている。洋服が集まらなくなっている。理由はズバリ「ポリエステル混紡材」で構成されている洋服が世の中の大勢を占める様になってきたからだ。しかし、ここに至るのには色々な理由が存在する。私の以前のブログを読んでいただいている方々にはおおよそご理解いただいていると思うが、初めての方もいらっしゃるので改めて説明する。


ポリエステル混紡材の台頭は欧米からスタートする。この流れは昔からアパレル業界vsドライクリーニング業界にあり、洋服のクリーニングで事故が起きると必ず「アパレルの作り方が悪い」とか「ドライクリーニングの処理の仕方が悪い」とかでそれぞれの非を相手になすりつけ合うところからスタートする。その結果、アパレルは「ドライクリーニングを必要としない洋服作り」を目指すようになり現在に至る。女性服は実に顕著であるが、実際に女性服の売り場に行ってみればよく分かる。単価10万円以上する洋服であってもポリエステル混紡材が主流である。そして売り場の店員は「家でも洗ってご利用出来ます」と平気で言う。10万円の洋服を家で洗うか?と人々は思うだろうが、そのくらいアパレル業界はドライクリーニング業界との交わりを嫌がっている。それだけの苦い経験をしてきているのだ。

今回、この流れで困ったのはドライクリーニング業界である。アパレル業界との紛争だけならなんとかなるが、地球温暖化からやってきた長期の真夏日である。30年前であれば30℃を越えた気温を人々は「真夏日」と呼んでいた。しかし現在はどうであろうか?30℃を超える日は何日あるだろうか?6月から9月はほぼ毎日のように記録されたのではないだろうか?今年の日本は雨の多い年だったのでそこまで感じられなかったかもしれないが、この数年間はそんなイメージが強いのではないかと思う。その状況から人々は政府の奨励である「クールビズ」を受け入れ、一気にカジュアル化が進み、それまで当たり前とされていた男性ユニフォームであった「スーツにワイシャツ、ネクタイ」が一気に消失した。人々は社会から新たに了承されたドレスコードであるポロシャツやTシャツ、チノパンやジーンズで出勤できるようになり、日本のファッションが大幅に変わった。そこで重宝されるようになったのがこのポリエステル混紡剤である。これからはクリーニング業界もこのポリエステル混紡剤をどのように味方につけなければならないか、がポイントとなると私は予想する。


今回の中国の展示会においては、私は「日本で起こっている流れが中国のような地域においても同じタイミングで変化が起こっているのかどうか?」を見極める目的があった。
展示会場に行ってみてまずびっくりしたことがあった。今回も二つの大きなホールを使って多くの企業を誘致していた。我々もその一社ではあったが、合計で328社が出展していたらしい。しかし、ドライクリーニング業を目的とした出展は10%にも満たなかったのではないだろうか?そのくらい、中国でもドライクリーニングに対する展望はあまり明るくなかった。実際に町中を見てみればそれもよくわかる。人々が綿やウールなどの天然素材で作られている洋服など全く着ていないのだ。私はそれまで「中国はこれからのドライクリーニング業で大流星するマーケットではないか?」と考えていたのだが、残念ながらその可能性はなくなっている。洋服の素材変化も一つの要因ではあるが、もう一つの要因として中国で現在発生しているデフレがその根底にある。中国は発展する可能性があった。人々はもっと豊かになるはずだった。現在は不動産バブル崩壊から国全体が不景気に喘いでいる。仮に中国の不景気がなかったとしても、洋服の流れは景気に関係なく影響を受けているだろう、ということがよくわかった。この流れは今後のドライクリーニング業においては大きな転機になっていくと思う。

さて、中国マーケットについて述べたいが、中国市場は日本市場を全くお手本にしていない。欧米の最先端ビジネスモデルに注目している。だから各メーカーの展示は欧米が今一番注目していることを一生懸命模倣している。日本市場がどのようになっていて、どうなっていくか?を予想しながらソリューションを発表している会社は一つもなかった。それだけ日本のビジネスモデルは中国には人気がない、というよりは現在の中国の業界ソリューションに合っていないのだろう。日本はいつの間にか発展途上国のお手本にもなっていない市場になってしまった、ということなのだろうか…。
欧米の市場は基本的に「人件費高に苦しんでいる市場」といえる。だから何かと「自動化」というキーワードに揺れ動く。一方、日本市場は「人不足」がキーワードになっている。トレンドの切り口はそれぞれ違うのだが、現世界は「自動化:オートメーション」に流れているのと言えるだろう。また、我々が今まで作り続けてきた仕上げ機がだんだんと注目されなくなってきている。これもポリエステル混紡材で構成されている洋服が台頭してきているから、と結論づけることが出来る。

今回の展示会で目立ったのは二つである。一つはイタリア・Metalprogettiを模倣しているようなコンベアシステム、そしてもう一つはRFIDチップであった。どちらもユニフォームには欠かせないアイテムと言える。洋服のソーティングをいつまで人間の手でやっていくのか?そして洋服のタグ付けもいつまで紙タグに頼って毎回貼り付けたり剥がしたりしていくのだろうか?これからのアイテムは欧米の来場者にとっても間違いなく勉強になるはずである。日本の展示会ではまずお目にかかることの出来ないものばかりだった。ブースのデザインもとても鮮やかだった。日本の展示会はどうしてあんなに垢抜けないのだろうか…。一つひとつを比較しても日本の展示会CLV21はTexcare Asia & China Laundryと比較しても全く勝負にならない。


日本のクリーニング業界は間違いなく世界から置いていかれている。クリーニング業法においても現在の世の中に対して全くミートしていない。もっと根本から変えていかなければ日本の業界はダメになっていくだろう。ホームクリーニングの水洗いへの本格商業化は業界全体で真剣に考えていかなければならない問題だろう。しかし、果たして日本の業界従事者の何割の方々がこの話を真剣に受け止めるのであろうか?変化を嫌がる事業者は消えてしまうであろう。日本の皆さん、もっと世界を旅して同じクリーニング業でもこんなにやっていることが違うのだ!ということを目の当たりにしないと大変なことになりますよ。将来のお手本は海外にあります。今回の中国の展示会でもそれをひしひしと感じる機会となった。


