2年ぶりのアメリカ(その3)

2月16日、午前中にZengeler Cleanersを訪問した私は午後にCD One Price Cleanersを訪問した。社長のRafiq Karimiに会うのはおおよそ2年半ぶりだろうか。年間に1度は必ず会っていろいろな話しをする仲である。それがこの2年半もの間、全く話しをする事ができなかったのだからお互いに現状がどうなっているのか、は全くわからない状況だった。久しぶりのCD One本社。冷たい雨がしとしと降っていたが幸い雪にはならなかった。Rafiq社長が迎えてくれた。こちらはZengeler Cleanersとは全く方向性が違うのでどんな現状になっているのか、話しを聞くのがとても楽しみであった。

ここでCD Oneという会社がどういう会社か、簡単にお伝えしよう。この会社は2001年にシカゴで創業した比較的新しいクリーニング店だ。元々はテキサス州ヒューストンでこのビジネスモデルを経営していたのだが、2001年にシカゴに場所を移動している。当時から明朗会計のクリーニング店として多くのサラリーマンに愛用されている。価格はワイシャツとそれ以外、という2つの価格ですべての洋服を対象にしているのが特徴である。現在はシカゴに34店舗、ミネソタ州に1店舗を構えている。

CD Oneの外観。青と白の基調色でデザインされている。


店舗を見るととても面白い。すべてがユニット店になっている。カウンターから工場のオペレーションが見える様になっており、オープンキッチンレストランのような雰囲気である。店舗の大きさは出店地域により様々であるが、比較的小さなお店でもレジは3つ、大きい店舗だと5つもある。すごいのは売上でどのお店でも単体で年間1億円以上の売上を上げる店舗ばかりだ。従業員の仕事も店舗と工場の担当役割がとてもはっきりしていて、低価格であっても顧客満足や品質管理にはかなり気を遣っている事がうかがえる運営方法である。このビジネスモデルは日本でも大いに参考になるモデルと私は考えている。ちなみに2015年に行われた大阪での国際クリーニング会議IDCにもスピーカーとして登壇してもらい、彼らのビジネスモデルについてじっくりお話しいただいた先でもあるのだ。現在はワイシャツは$1.89、その他すべての洋服が$3.99となっている。地域によって多少の値段差があるようだがおおよそこのくらいの値段になっている。

カウンターからみた店舗内。後ろが工場になっていて主に仕上げ作業を見ることができるようになっている。

 

価格はこんな感じ。このお店ではワイシャツ以外は全部$4.49という価格になっている。Wash & Foldは$1.69/ポンドからのスタートとなっている。

 

そんな会社がこの2年間どんな状況だったのか、私はとても興味があった。業績から聞いてみるとZengelerと同じように2020年は80%の売上ダウンを余儀なくされたようだ。ロックダウンを敢行されるとどんな業種でもどんな客層でも売上は全く上がらなくなるのだな、と痛感する。故に2020年夏から1年間は大変な思いをしたそうだが、2021年の第4四半期ではコロナ前の売上の80%レベルまで回復したとの事だ。アメリカでは2021年3月くらいから国民へのワクチン接種積極策が功を奏したのか、少しずつすべての業種で業績が回復している。CD Oneも少しずつ戻ってきたそうだ。
しかしその売上構成を見てみるとコロナ前とは明らかに違うもので売上が上がっていたのが気になる。例えばゴルフ場のレストランで使うテーブルクロスやナプキン。これらは今までであればゴルフ場の中で処理されていたもので人を雇って洗濯されていたと言う。しかしこのコロナで固定費を払えなくなり、あえなく外注する事になったと言う。その下請け先がCD Oneと言うわけだ。そのほか、消防士や警察官のユニフォームもこのコロナ禍でかなり集まったという。別のジャンルでいうと家庭の毛布やタオルなどのいわゆるComforterというジャンルが結構集まったと言う。

しかしリモートワークという新しい働き方はクリーニング業に大きな影響を与えている。CD Oneのようなサラリーマンを相手にした商売は影響をもろに受けた業種であろう。既にRafiq社長はクリーニング業がコロナ前の水準には戻らないだろうと予想し、新しい試みを始めていたようだ。それはWash & Fold、洗濯代行業だった。実は彼らがこのWash & Foldに力を入れていたのは私も知っていた。実際にコロナ前に訪問した時、彼らは既に取組を始めていた。ただその時はまだ導入期であり、どこにニーズがあるのか?どんなやり方だとボリュームを稼ぐ事が出来るのか?などわからない事ばかりでいろいろ模索していた時期だった。現在では既にモデルができあがっており、ボリュームを集める事に集中できる体制が整いつつあった。
Rafiq社長はこのWash & Foldに大きな確信を持っていた。やはり試行錯誤しながら数年間取り組んできた経験が自信につながっているようだ。私はこのビジネスの要諦がどこにあるのか、を知りたかった。私が一番びっくりした事は彼らが外交サービスを始めていることだった。彼らのビジネスモデルは日本と同じような多店舗展開である。基本的にお客様にお店まで来てもらい、洋服の引き取りや受け渡しをする形態になっていた。ところがこのサービスを進めるにあたり、外交サービスを始めることとなったそうだ。何故か?実は家庭洗濯用の洋服は結構量がある。それをお店まで持ってくるのは一苦労だそうだ。しかもプライベートな洋服も含まれているのでそれらを店頭に持ってくる事は抵抗がある、とも言われている。外交サービスだと取りに来てくれるので気兼ねなくお願いする事ができる、というわけだ。
気になるお値段であるが1ポンド$1.69で最低$10は課金されることとなる。ということは最低5.9ポンド分は持ってきてくれないと割高になってしまう。$10以上であればどんな量でも持ってきて構わない事だそうだ。ただCD Oneが求めているのはサブスクリプションサービスを利用するお客様を増やす事だと言う。ここでのサブスクリプションサービスは$99/月で週1回の利用となっている。通常の外交サービスでは$4.99の外交費用が課金されるが、このサブスクリプションサービスを利用するとこの$4.99はかからない。このときにWash & Foldだけでなく通常のクリーニング品のお願いを一緒にすることもできるようになっている。現在、このサブスクリプションサービスに700名以上のお客様が契約していると言うことでこれからもその会員数は増えていくだろうと見込んでいる。最終的にCD OneはこのWash & Foldビジネスで全体の50%の売上シェアに持って行こうと考えている訳だから今後の活動を引き続きチェックしていきたいと思う。

Wash&Foldの洗濯機は右から3つ。

 

乾燥機はこの4つで運営している。

 

今回のCD Oneは大きな方向転換を図っていたことがよくわかった。やはりドライクリーニングの需要が多く残っているアメリカにおいてでもこのような方向転換を図らないと生き残る事が難しいと思い、既に明確な方向を打ち出して突き進んでいる事に大きな衝撃を受けた。日本はアメリカよりももっと厳しい状態に陥っている訳なので打ち手を見つけられていない皆さんにおいては一日も早く次の方向性を見つけることを強くお勧めしたい。日本にはアメリカの様なお金持ちがいない。ドライクリーニングがなくなるとは思ってはいないが商売の核にはならなくなるだろう。そうなったときに何で生きて行けば良いのか?を是非考えていただきたいと思う。このWash & Foldは間違いなく日本でも一つのモデルになるだろう。ただし、厚生労働省の消毒法の基準をもう少し考え直してもらいたいものだが・・・。