2023年最初の出張はシンガポール

少々遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年もできるだけ耳寄りな情報を皆さんにお届けしたいと思います。よろしくお願いいたします。


三幸社は昨年12月28日に2022年の業務を終了し、今年は1月5日から始動している。とても穏やかな正月を迎えることができたが年末年始に海外からお客様がいらっしゃったことから意外と忙しく過ごしていた。12月26日にロサンゼルスからDoor to Door CleanersのHabib Veera氏とそのご家族が家族旅行として来日し、翌日の27日には本社を訪問してくれた。また新年の業務がスタートした1月5日にはオーストラリアとシンガポールからBill Hudson氏、Justin Hudson氏、Raajesh Shrinivas氏の3名が来社した。あまり正月気分に浸れないくらい来客対応に追われた年末年始であったが、確実に世の中は動き始めていることを実感している。

1月5日に来社したときの様子。オーストラリアから2名、シンガポールから1名が来社した。

 

この1月5日に来日した3人のうちの一人はシンガポール人だった。Raajesh Shrinivas氏は相当な意欲を表明していた。しかし彼のビジネスモデルが良くわからない。わかったことはアプリを利用した100%外交クリーニングということだった。お目当てはノンプレスだったのだがそれをどのように使うのか?などが全く見えない。そこでシンガポールを訪問することをそのときに決意したのだった。

時は2週間後の1月18日。私は羽田空港国際線ターミナルにいた。シンガポールは何年ぶりだろうか。パスポートを見てみたら最後に押されていたスタンプは2016年11月。6年以上も訪問していなかったのだ。東南アジアは我々にとってはあまり大きな市場ではない。タイやインドネシアなど訪問する市場はあるもののアメリカやヨーロッパに対してはとても小さな市場と言わざるを得ない。それもそのはず、ドライクリーニングだからだ。こんな温かいところでドライクリーニングを必要とする洋服を着る人々の率はとても低い。結果として一部のクリーニング店、ランドリー工場に機械を買ってもらうことはあってもその台数は少ない。故に私がリサーチに行く理由がどうしてもなかったのだ。
しかし今回はちょっと違う。我々がノンプレス仕上げ機を開発したことで今まで顧客ではないだろう人々が一気に顧客になる可能性が出たのだ。もしかしたらシンガポールも大きな市場に化ける可能性がある。今までドライクリーニング衣類しか対象にできなかったのが一般水洗い衣類においても対象が広がったことで東南アジアがとても面白い市場になるかも、と考えるようになったのだ。私も今までにないポジティブな感じを抱くようになった。

Piingの本社と工場。出来上がった洋服が配送車待ちをしている。
左が社長のRaajesh、右が運営のトップをやっているAditya。自分たちのビジネスモデルに確信を持っている。

 

到着の翌日に早速会社を訪問した。この会社の名前はPiing、お店は一切持たずアプリを使って受け取り、そして配達をする会社である。彼らが開発したアプリは話を聞けば聞くほど優秀なソフトだとわかる。通常のアプリは顧客と会社をつなぐだけだが、彼らのはUberに似ている。配達に使う人材を自社の社員だけで行うのではなくフリーランス、いわゆる契約ドライバーも利用して行うのが面白い。まず顧客は何日の何時に取りに来てもらいたいか、を登録する。これは1時間単位で登録が可能なのだから顧客にとってとても便利である。そしてその登録が集まってくるとこのソフトがドライバーにどこを順番に訪問すればいいか、を集計して指示する。近い顧客をグルーピングして一気に回収してくる、というわけだ。顧客はお渡しの日時も設定できるのでその日と時間に合わせてまたドライバーが訪問する順番をソフトが勝手に指示してくれるのでそれに従って渡していく、という具合だ。

このPCを使ってタグを発行する。発行されたタグは洋服に縫い付けられる。何回でも利用可能。顧客との合意は取れているらしい。
当社のダブルボディ。機械の左に彼らの専用ディスプレイとスキャン装置が付いている。すべての洋服をプレスする前にここでスキャンして確認を取る。
こちらのウールプレス機にも付いている。このようにすれば具体的な顧客要望を正確に読み取ることができる。その他いろいろなデータを収集できるのがすごい!


このソフトはここまでではなく工場の生産管理にまで波及する。それらの洋服が誰の洋服でどんなブランドなのか、そしてどんな特別指示が顧客からもたらされているのか、などの情報が全部入っている。そしてそのバーコードやQRコードをスキャンしたらオペレーターはそこに出てくる情報に従って作業すれば良い、ということで一つひとつをオペレーターが判断する必要はない、という仕組みになっている。ゆくゆくは我々の機械にもそのバーコードなどをスキャンしたらその洋服に合ったタイマー設定などがオートマチックで設定できてオペレーターはただ着せてボタンを押せば良い、という将来がやってくるかもしれない。このようにこの会社の強みはまさにこのアプリを通じたソフトであり、そこに顧客、契約ドライバー、工場を一手にまとめ、混乱を全く起こさずにサービスを提供している。2016年に創業してすでに6年が経過、すでにシンガポールの10%のマーケットシェアを握っており、ここ2〜3年で一気に20%のシェアを期待しているようだ。売上額は申し上げられないがそこそこの規模になっていることだけは伝えておきたい。通常では一日1000点の洋服を処理しているとのことだがちょうど訪問した時は春節の需要もあって倍の点数を扱っているとのことだ。こういうことであればノンプレスに興味を持つのも頷ける。彼らのさらなる飛躍のお手伝いができればとても嬉しいと感じた。

ここで一つ気になったのはシンガポールに存在するドライクリーニング需要だ。やはり東南アジアのリーディング都市と言えるのだろう。他の国と比べてもドライクリーニング比率は高いと言える。このPiingでもドライクリーニングと水洗いの比率は50:50と言っていた。ある意味驚きである。それだけシンガポール人のドレスコードはその他東南アジアより高いのか?と思ってしまう。実際に高級層にはJeevesが君臨している。Piingはどちらかといえば中流層をターゲットにしたサービスなのだがこのターゲット層がそれなりにドライ品を出していることに驚きを感じたのだ。

シンガポールはとにかく便利でとてもきれいな街だ。値段については為替のせいでもあるが6年前と比べるととても高く感じる。一方でシンガポール人のお金に対するメンタリティは日本人と似ているように感じた。彼らはとても厳しく、相手に利益を簡単に与えない力が働いているように感じた。だからなのかどうかはわからないが多くの日本企業が進出している。朝のウォーキングではお菓子やケーキで有名なシャトレーゼがあった。何らかのご縁があって進出しているのだと思うが、もしかしたらシンガポールは日本人にとって進出しやすい場所なのかもしれない。シンガポール人も日本企業を全般的にとても友好視しているのもポイントであろう。

久々のシンガポールで新しく見えたところがたくさんあった。Piingのビジネスモデルはとても面白く、今後の彼らの動向は注視していきたい。近いうちに再訪問することになりそうだ。