オランダで見てきたこと

6月27日、私は今年4回目の海外に旅立った。朝8時50分のフライトなので5時40分のバスに乗って行く予定だったのだが私の長男が親切に空港まで送ってくれた。それだけでも嬉しかったが私の乗る飛行機が出発するまでずっと空港の展望デッキで見送ってくれた。乗り込む時に手を振ってくれるとは・・・、かなり特別感を感じた。
今回もロンドン行きに乗り、ヒースロー空港で乗り継いでオランダ・アムステルダムまで行ったのだがなんと長い旅行だろうか。今回もウクライナ問題が影響して西に飛ぶことができず、アメリカ・カナダの上空を飛んでいったのでロンドンまで15時間かかった。アムステルダム・スキポール空港に到着した時は既に現地時間の夜10時。ドイツのパートナーであるFrank Ziermannが迎えにきてくれた。今回は彼と共にオランダ・ドイツを1週間旅することになっている。

翌日、我々は新規オープンしたクリーニング店を訪問した。名前はFornet、そう、中国で一番大きなクリーニングチェーンであるあのFornetである。なんとオランダにヨーロッパ一号店がオープンしたのだ。場所はAmsterdam Zuid(アムステルダム南駅)から100mのところ。ここは金融街と呼ばれており、比較的スーツなどを着る人々が仕事をしにくるところである。そこになんともおしゃれなお店ができたのだ。

ヨーロッパ1号店のFornet。
Amsterdam Zuid(アムステルダム南)駅が100mくらいのところにあった。絶好の立地!

 

オープンしたのは先週との事でまだ大々的なオープンというわけではない。しかし毎日近くで仕事をしている人々は「どんなお店だろうか?」と興味津々の様子だ。Fornetのビジネスモデルは元々ドライクリーニング機が1台にアイロン台で成り立った。イタリア型とも言えるし、フランスの5a Sec(サンカセック)と同じモデルとも言える。若干違うところはランドリーも受け付けるというところだ。ワイシャツだけではなく水洗い衣類、シーツ類など全般的に受け付けるところが違うところだろう。
しかし今までのクリーニング店と決定的に違うところは店構えと思う。とにかくおしゃれにできている。歴史的に考えても今までのクリーニング店は店構えを気にする必要はなかった。それまで人々はウール製品などのドライクリーニングを必要とする洋服ばかりを着ていたのでクリーニング店は店を通じたプレゼンテーションなど考える必要がなかったのだ。気にするところは工場を通じた技術力だったのだ。しかし時代は変わった。地球温暖化、変わりゆく洋服のトレンド、ドレスコードの消失などで人々は一気にドライクリーニングを必要とする衣類を着なくなってしまった。これからの時代は「如何にプレゼンテーションに力を入れられるか?」にかかっている。そうなると今までの原価率では対応できないだろう。もっと原価率を減らす努力、それは価格を上げるのか?コストを下げるのか?それはそれぞれの意思決定と思うが更に捻出する粗利をお店のイメージやプロモーションに注ぐ必要が出てくるのだ。

フロントカウンター。とてもきれいな空間で上品さを漂わせている。
オリジナルのアイロン台。工場は極めてシンプルにできている。

 

Fornetの訪問を終えて次に向かったのはMedo Cleanという会社。今までは単体でクリーニング店をやっていたのだがやはりそれだけでは持ちこたえられない、と判断。クリーニングの多角化に乗り出していたのだ。

Medo Cleanの外観。ここは完全に工場になっていた。


さて、多角化ってどうやるんだ?というのが最初に思った疑問だった。私が今までの経験値で話せる内容とするとWash & Fold(洗濯代行)やユニフォームの下請けなどだった。しかしMedo Cleanではもはや自家処理をするほどの洋服がなかったり、従業員がいないことで処理できないクリーニング店の下請けをやることが一つ、もう一つは販売チャネルを全くの異業種にお願いしていることだ。
まず最初の下請けであるが、これはある意味イメージできる。もはや自分たちで処理する体力がなくなってしまったところは数多いと推測する。Medo Cleanがそんなクリーニング店たちの後ろ支えするのはとても良い試みと私は思った。ただし、これを日本でやろうとしてもまだうまく行かないと推測する。なぜならば各店のオーナーたちが自分の品質価値を頑なに主張するからだ。大切なポイントかもしれないがこだわりすぎると何も協力できなくなってしまう。ある日本のクリーニング店の社長さんが私に似たようなことを提案してきたことを思い出した。その人は「圭介さん、自分でできなくなっているクリーニング店をご紹介いただけないか?私はそういう人々の役に立てるクリーニング店になることができる」と。その時も私は「現時点ではまだ現実的ではないのではないか?」と答えたことを覚えている。オランダではこういう協業ができていることを日本のクリーニング経営者はもっと学んでもいいのではないだろうか?

他社ブランドのフィルムを使っているので聞いている筆者。なかなか面白い取り組み。


もう一つのチャネルを異業種に展開することであるが、この会社ではスーパーマーケットにお願いしているらしい。日本でもインショップとして展開しているクリーニング店は多いが、ちょっとこちらの形態は違う。こちらではクリーニング店関係者は一人も従事せず単にロッカーをおいて置くだけで運営そのものはスーパーマーケットに委託している。しかしクリーニングのプロはお店には一人もいないので詳しい相談などはそのロッカーに番号が書いてあり、その番号にかけることで対応する、という仕組みになっている。このやり方だと国の法律でできる国とできない国があると思う。しかしオランダはできるということなのでその方法をとっている。最近はそれぞれの地域にクリーニング店が存在しなくなってきているのでこのようなスーパーにクリーニングサービスセンターがあることで人々の役に立っているとのことだ。一方でMedo Cleanではちょっと遠い地域であっても販売チャネルが出来上がっているので売上増につながるだろう。私は「どうやってこのようなネットワークができたのか?」と聞いた。社長のMichaelさんは「最初は先方からの問い合わせで始まった。この商売をやるには立地条件が大きく左右する。だから我々はここに会社を構えたんだ」と。彼の会社の位置はユトレヒトに一番近いが、アムステルダムやロッテルダム、ハーグなどもおおよそ1時間圏内にあるのでいろんな地域でコラボすることができるという。日本で同じことは簡単に成り立たないとは思うが、異業種にお店機能を任せるというやり方は考えてみても良いことかもしれない。彼らはそれだけではなくユニフォームの下請けなどもやっていていろんな方面から仕事を受けようとしているその姿勢が結果として忙しくしている理由と感じた。

ドイツの代理店(右)とMedo Cleanの社長(中)と筆者。とても興味ある訪問だった。

オランダの業界は日本よりももっと小さい。しかしこんな環境でも力強くやっている人々がいることを再確認してとても嬉しい気持ちになった。まだまだできることはある!見方を変えていくことが大切と思った。固定概念からの脱却ができる会社が残る!これはオランダでも同じだった。