オーストラリアのワイナリー巡り

12月10日、私は19:40発のJAL771便にてシドニー経由メルボルンまで移動する事になっていた。この日の朝はゴルフの試合。大学時代の仲間達4人でチームになって行うスクランブルに参加していた。場所は埼玉の鳩山カントリークラブ。このゴルフ場から成田空港まで2時間。スタートは9時。17時半までには空港に入っていなければまずい。こんなことになるとは考えてもいなかったのだが相変わらず自分の短絡的なスケジュール管理に嫌気がさす。今回はいつもJCPCの海外視察などでコンビを組む日本ツアーサービスの藤島さんと一緒に旅することになっていた。彼女は大阪から飛んでくるので飛行機に乗り遅れる訳にはいかない。ゴルフの試合が途中であってもいざとなれば失礼して空港に移動しようと思っていたくらいである。そうしたら藤島さんからメッセージが入る。「出発が2時間くらい遅れるらしい」と。となると21:40の出発だ。急に楽になった。ゴルフを終えたら風呂にも入らずに移動しなければ、と思っていたのだがしっかり風呂に入って行く事が出来たのでこの遅延は少々有り難かった。トーナメントは残念ながら上位5位には2打差で入れず全日本ファイナルには進めなかったのだが・・・。

(大学時代のメンバーと。皆さん(一人のぞいて)上手なんですよ〜)

ゴルフ場から空港まで急いで車を走らせて18時に到着。少し藤島さんを待たせることとなってしまったがこれでオーストラリアに行くことは出来る。ちょっとほっとした。今回の旅はIDC国際クリーニング会議の打合せに行くためだ。来年の5月22日から24日までの3日間、メルボルンにて開催する事を決定してはいたのだが、会議の内容をどうするか?いくら位の参加費用で出席する事が出来るのか?などなど細かい事をまとめなければ募集する事さえ出来ないのだ。その細かい部分にどうしても藤島さんの力が必要になる。毎回思う事だが彼女のツアー企画は本当に素晴らしい。こういう人がパートナーでいてくれるとだらしない私でもある程度しっかり企画を形にする事が出来るのだ。彼女なしでは出来ない。

JAL便でシドニーに到着、すでに翌日の朝9時になっていた。オーストラリアは夏、時差は通常1時間だが夏時間になると2時間になる。日本は日付変更線に近い国なのでほとんどの国に対して時間が進んでいるのだが、オーストラリアは数少ない日本よりも時間の進んでいる国である。9時に到着したと言うことは日本はまだ2時間遅れの朝7時と言うことになるのだ。すぐにカンタス航空の国内線にチェックインしてターミナルを移動する。どうやら遅れた理由はシドニー郊外で起こっている山火事のようだ。日によっては山火事の煙が町全体を覆ってしまい空港も視界不良のために飛行機の発着が出来ない、と言うことなのだ。後でワインの話しをするがこの山火事はワイン生産においても大きな影響を及ぼしている。国内線もこの山火事の影響で出発が30分近く遅れた。本来だったら11時にはメルボルンに着いているはずの予定だったのだが実際に到着したのは13時を過ぎていた。この日はDIA(Drycleaning Institute of Australia)いわゆるオーストラリアクリーニング協会なのだがこの代表Brian Tonkin氏と秘書をやっているCatherine Cluning氏の両名と13時からミーティングをする予定になっていた。事前に飛行機が遅れる話しをしていたのだがそれでも14時の予定にしていた。結局14:30にミーティングをする事が出来たのだが大変迷惑をかけてしまった。

ミーティングはとてもスムースに行えた。会場となるCrown Promenade Hotelの部屋やカンファレンスルームなどをチェック、当日のミーティングの雰囲気などがイメージ出来た。コスト面もおおよそ出たので価格を統一する事も出来た。ちなみにJCPCの皆さんは日本からの飛行機や滞在費用、食事などの費用もおおよそカバーされた状態で5月21日から25日までの5日間で30万円を切る費用でいけるのだからなかなかお得な設定をしてくれた。現地で会議だけ参加したい、という方々はIDC会員はUSD550.00、非会員はUSD600.00で参加出来る事も決まった。翌日12日はいくつかのクリーニング店を訪問し、来年の参加者の工場見学先としてふさわしいかどうか、を確かめる活動も出来た。この会議は元々オーストラリアのランドリー協会(LAA)とクリーニング協会(DIA)の共同で開く会議と展示会なのでTwin Cleanという名前がついている。このイベントにIDCも一緒に参加させてもらおうと言うことになったのだ。せっかくだから会議の中でオーストラリアの皆さんにももっと世界の業界動向や知らない知識なども知ってもらおうと私が企画した内容がおおよそ取り入れられることとなった。登壇者の顔ぶれもおおよそ決まり、私も藤島さんもほっと肩をなで下ろす。これが決まらないと人々に公表出来ないし、そうすると募集する事さえ出来ないのだ。そのために打合せに来たのだからなんとしても合意して終わりたかった。それがしっかり出来たので今回の旅の意義は本当に大きかった。

(ミーティングを終えた夕食。右からLAAのアンソニーさん、DIAのブライアンさん、そしてキャサリンさん。僕の隣が有名な藤島さん)

12月13日、無事にIDCの打合せもやり遂げたので普通ならそのまま帰国すれば良いのだが、私はワインが大好きである。今年からワインのスクールにも通っていて本格的にワインの勉強をしている。オーストラリアはワインの一大生産地である。このまま帰ったらもったいない!と言うことで私はシドニーまで戻り、レンタカーを借りて車で2時間、Hunter Valleyというワインの一大銘醸地を目指す事となった。Hunter Valleyはオーストラリアのワインの歴史で一番古い場所で兼ねてから行ってみたいと思っていた場所である。この地域ではSemillon(セミヨン)、Chardonnay(シャルドネ)、Shiraz(シラズ)の3つの葡萄がとても有名なのだ。日本の皆さんは流石にシャルドネは聞いたことあるだろう。しかしSemillonはあまり聞いたことがないのではないだろうか?フランスのボルドーではこのSemillonは有名なのだが、このHunter Valleyでもこの品種は有名なのだ。Shirazは北半球ではSyrah(シラー)と呼ばれる品種でただ単に呼び方が違うだけなのだが、オーストラリアではこのShirazがなんと言っても有名な葡萄だ。オーストラリアのワイナリーに行くのは人生で初めてなので、運転しているうちからワクワクする。しかし、今回は例の山火事が気になる。結局訪問する事は出来たし、この日はほぼ影響はなかったのだが、このHunter Valleyもかなり影響は出ているらしい。風向きが変わるとその煙の臭いが町全体に襲いかかる。葡萄はこの時期は丁度栽培しているときで収穫は大体1月から2月、その間に煙が葡萄にかかると皮にその臭いがこびりついてしまい、ワイン作りに大きく影響してしまう。何とも気の毒な話しである。これ以上の影響が及ばないことを願うばかりだ。

ワイン畑が見えてきた。一気にテンションが上がる。すでにネットやうちの代理店に話しを聞いて行く場所を決めていた。最初に行ったのがTyrrell’sというワイナリー。雑誌でも結構取り上げられているワイナリーなので手始めに行ってみた。やはり出てきた、Semillon、Chardonnay、そしてShiraz。ここではそれぞれ2本ずつ試飲してみたが見事に味が違う。ワインというのはとても面白くて同じ葡萄でも作っている畑の土壌、その年の気候、醸造するときの方法や樽の種類などで全部香りや味が変わってくるのだ。逆に言えば同じ味を作る事など不可能と言った方が良いだろう。面白かったのはShirazの2本だが一つはちょっと女性的な味わい。タンニンが少なくマイルドにできあがっている。これは隠し味としてViognier(ビオニエ)が10%くらい入っているらしい。このように違う葡萄をブレンドする事をアッサンブラージュという。一方のShirazはかなり男性的でアッサンブラージュなしの100%Shirazなのだ。Shirazには胡椒のようなスパイシーな香りと味がするのが特徴でこのワインはまさにパンチの効いた強い味わいだ。ただこれはどちらが良いとか悪いではなく自分の好き嫌いで決めれば良いことなのだ。ここでの学びはViognierの存在が味の柔らかさを作っていることだった。こうやって経験しないとなかなかわからない。そんな調子でこの日はLake’s Folly、Pepper Tree、Draytonsをまわった。夜はうちの代理店のアドバイスによりLeogateというワイナリーが経営しているレストランThe Gatesで食事をしてみた。ここで驚いたのは生牡蠣が思った以上に安い。そしておいしい!今回はSemillonとPinot Grisを1杯ずついただいて牡蠣を堪能、そして次のステーキをもちろんShirazで堪能した。本当に贅沢な一時だった。

 

(最初に訪問したTyrrell’s Winery。Shirazの違いをまざまざと見せつけられた)

(二番目に訪問したLake’s Folly。ここは多分Hunter Valleyで3本の指に入るおいしいさだろう)

(3番目に訪問したPepper Tree。ここも典型的なShirazを造るワイナリー)

(夕食に訪問したLeogateのレストラン。このワインをいただいちゃいました)

12月14日、午後にはシドニーに帰らなければならないのだが、せっかく来たのだからと言うことで3つのワイナリーを訪問した。McGuigan、Keith Tulloch、Peterson Houseの順番でまわった。この二日間でHunter Valleyという場所、この地で造っているワインなどが本当によくわかった。どのワイナリーも特徴があってとても印象深い。しかし最後のPeterson Houseは印象深かった。スパークリングの専門ワイナリーで面白かったのはShirazのスパークリングがあったことだ。この業界でも売れるためには様々な仕掛けを作らないとお客様に支持してもらう事は難しいのだな、と改めて感じた。

(Hunterでスパークリング専門のワイナリーPeterson House。ロゼが良かった〜)

今回のワイナリー巡りで感じた事は「本当においしいワインを造る事」「おいしく感じるプロモーションをする事」「何らかのコンテストで賞を取ること」、この3つを感じた。最初のおいしいワイン造りについては誰もがやっていると思われる。しかしそれは自分の主観であって他人の評価ではない。他人の評価が大切なのだ。だからその次のおいしいと感じるプロモーションが必要なのだ。賞を取ることについてはこれは結果だから最初とその次の二つを如何にお金と労力を使ってやるか、と言うことになる。ここに不退転の決意で行っているワイナリーこそ有名なワイナリーになるのだろう。なんかクリーニング店も同じような気がする。意外と大切なのはプロモーションなのだ。

こんな素晴らしい時間もあっという間に終わり、一路シドニーへ戻る。夕方に当社の代理店であるSpencer Systemsとの夕食ミーティングがあるからだ。やはり2時間くらいかかったが無事に戻り予定の時間通りに約束の場所にて合流した。現在のオーストラリアの状況、来年5月のIDCの準備などなど話しは尽きない。彼らには5月の会議に合わせて靴クリーニングのモニタリングも始めてもらう予定だ。今までやった事のない話しは必ず可能性がある。彼らがオーストラリアでどのように展開していくのか?それが楽しみで仕方ない。

(SpencerのJohn(左)と息子のDanielと。かなり建設的な話しで盛り上がりました)