中国の展示会から見えた日本の衰退の理由

9月24日、私は再び成田のJALラウンジにいた。昨日はオーストラリアのDanielと靴クリーニングの見学をした。今朝は彼を吉祥寺のホテルまで迎えて一緒に上海まで行くこととなった。行く理由は中国の展示会Texcare Shanghaiに参加するためである。中国市場は徐々に伸びていると言えるだろう。ただ2015年に一度大きなブームが訪れたがこのときは残念ながら変な噂から多くの投資家がクリーニング業にお金だけを投資して工場建設ラッシュとなった。我々もその恩恵にあずかって大きな売上を上げることが出来たが、その多くの投資が水の泡となったのだ。どうやら金だけ投資しておけばあとは誰がやってもクリーニング業は出来る、というデマが流れていたようなのだ。もちろんコインランドリーの様にはいかない。結局は知識者が工場運営をしなければ品質も出なければ生産性も出来るはずがない。多くの投資家が設備した機械を使いもせずに二束三文で業界にながしてしまうので2016年から2〜3年は全く業界が活性しない時期になってしまったのだ。今回はどうなるのか?そろそろと感じていた頃なのでとても楽しみに感じる。

上海浦東国際空港に到着してDanielと別れた。彼は別のホテルなので一人でそこから移動することとなっていた。一方、社長である兄と梅谷役員と到着ロビーで合流して一緒にホテルに向かった。昨年の展示会は最悪だった。ドイツの展示会開催業者であるMesse FrankfurtがTexcareを上海で開くと同じ時期に中国の洗染協会が主導するChina Laundry Expoという展示会を北京で開くという事態に陥ったのだ。我々は両方とも出展し、人数を分散させて両展示会に対応したのだが何ともお粗末な話しだった。我々は展示会費用を倍払うこととなってしまった。一方で両方の展示会に顔を出した顧客がどれだけいたか?と考えると本当に馬鹿馬鹿しい。その苦い経験から両業者がしっかり話し合いをして今回は共同開催となったのだ。当たり前と言えば当たり前だが、よくぞ両者が話し合いをして共同開催にしてくれた!とこれについては感謝しなければならない。

(Texcareの入り口。今回も大きな展示会だった!)

9月25日、展示会初日である。ブースが本当によく出来ている。今回は中国の業者に直接お願いしたのだが非常に我々の求めるブランディングが形になっているように思った。我々のブースが入口の一番近いところにある。この展示会ではホール1からホール3まであるのだが、全ての人はこのホール1を通過していかないとホール2,ホール3に行く事が出来ないレイアウトになっている。三幸社ブースはそのホール1の入口の一番近いブースとして存在するわけだからお客様が見ないはずがない。最近、この展示会では我々をいつもこのポジションに据えてくれる。それだけ展示会運営会社にとっても我々のブースが展示会場の顔として遜色ないと見ている証拠であろう。いずれにしても今回も大満足の出来映えだ!

(三幸社ブース。非常に良く出来ていました)

(ブース内の装飾。ここに上品さがありました)

(カタログも完全に中国語で出来ていました)

あとはどれだけ来てくれるか?結果をここで申し上げておきたい。3日間で合計25,000人を超える人が来場したのだ。その前の週にあった東京のビジネスフォーラムでは3日間で10,000人だったのだからどのくらいの人であふれかえっているのか、が想像出来るだろう。私の実感としては初日だけでこの合計の半分近く、いわゆる12,000人以上が来ていただろうと想像出来る。故にこの25日ははっきり言って商売にならない。そのくらい来場客でごった返してしまい、一人ひとりに丁寧な対応が出来ないほど人だったのだ。なんともうれしい悲鳴だ。

(初日の様子。大混雑で誰が誰だかわからない)

(全ての機械に人だかり。日本ではない光景)

ただ我々には鉄板の法則がある。それは全ての機械を動かせる状態にしておき、スタッフを用意していつも作業し続ける状態を保っている事だ。こんな大変な事をやるブースは三幸社だけなのだ。他のメーカーは動かし続ける事の重要性を知らない。もしくは動かし続ける事で我々との差を露呈させてしまうかもしれない。結果として、丁寧なおもてなしは出来ないにしても動いている機械を見て判断する事は出来るのだ。多くの人々がカタログを持って帰り、今後の投資の一つとして考えてもらえるのだろう。今回も我々の機械をコピーした中国メーカーが2社あったがある意味ありがたいことなのかもしれない。

(中国コピーメーカーのシングル。色までそっくり。しかし人はいない)

夕方は我々が主催したパーティーに参加した。日本からもお客様が来ていたので一緒にご招待したら結局70名くらいのパーティーとなった。そこには先日日本に来たオーストラリアの代理店であるDanielも参加していたし、UAE・ドバイの代理店も参加してくれた。台湾、香港、そして中国からも数多くの代理店、有力な顧客も参加してくれたのでとても華やかなパーティーとなった。日本ではなかなか作れないブランディングが中国では意外と簡単に作る事ができた。すでにアメリカでは周知のブランドとなっているし世界中がSankoshaブランドを同じように認識してくれている。私はいつも疑問に思うのだ。何故日本ではこのようなブランディングが成り立たないのだろうか?と・・・。実は講演依頼が数件入ってきたので最新の講演資料を作っていたところだったのだ。そこで日本のビジネス環境を改めて考えて見たのだが、ここには日本人のメンタリティがかなり入っているのではないか、と分析できるようになった。一番のポイントは「日本人はかなり嫉妬深い」という事だ。基本的に日本人はビジネスの成功者を称えようとしないし、むしろムカつく存在と見る傾向にある。例えばクリーニング店を利用する顧客を考えて見よう。ある顧客があるお店を満足して使っていてもそのお店だけを利用するのではなく近くの他店も試そうとする。アメリカではまずない考えだ。それだけ満足しているのに何故新たなところを探ってみようと思うのか?ここに日本人の「二社購買」という考え方が根底にある。「安く買いたい」という思いの方が売り手をパートナーと考える思いより強いからだろう。結局、売り手に利益を与えたくないのだ。アメリカも中国(全ての企業ではないが)もその点は違うし、売り手を自分の人生や生活のパートナーと考えて付き合う傾向が強いと感じる。このような考えを顧客の側が持ってくれると我々もとてもやりやすくなる。何故ならば商品やサービスをもっと顧客目線で考えれば良いし、もっと彼らの意見を真摯に聞いて実行すれば良いのだから。それが結果としてブランディングにつながるのだろう。前週のビジネスフォーラムと今週のTexcare Shanghaiを参加して改めてこのような境地に達した。

(パーティーで。なかなかの参加人数です)

(社長と中国人スタッフ達。彼らも中国ビジネスをサポートしてくれています)

3日間の結果として約300台の見込み案件をいただく事となった。日本では考えられない数字だし、6月に行われたClean Showに匹敵する。このように見てみると中国が日本の業界を追い抜く日は遠くないであろう。日本人として悲しい気持ちになるがこれが現実なのだ。