ドイツは日本の将来像?

6月29日、我々はオランダのTiel(ティル)という町から一日がスタートした。朝方、いつものように5kmのウォーキングをした。知らない町を歩くのはなかなか面白い。車だと見えない景色が歩きだとあるのだ。人々がどんな生活をしているのか、どんなお店があるのか、どんな人々が住んでいるのか?などなど興味深いことが見えてくる。しかし住民からすると私のような人間が歩いているのを見るのは不気味だろう。明らかにアジア人のルックス、おおよその人々が私を中国人と間違う。いっそのこと「僕は日本人!」と書いたシャツでも着て歩けば良いのか?考えればきりがない。朝6時前の気温はなんと16℃、半袖短パンではちょっと肌寒いくらいだった。しかし歩くとオランダらしい風景がすぐに見えてきた。オランダは水の国と言っても良い。海抜1m未満の土地が国の半分を占めているのだから如何に平なのかがよく分かる。2kmも歩いたらワール川というなんとも大きな川に直面した。東京だと隅田川や荒川は十分に大きな川と認識しているがこのワール川は倍の大きさがある。船も大きいのが随分と航行している。オランダの輸送に川の活用は欠かせない。こうやって違う土地を歩くといろんな違いを体感できる。

朝5時半頃の気温。もう7月というのにこんな寒い!
ワール川のほとりを歩く。日本の川とは比較にならない大きさ。交通手段になるのも無理はない。

 

ウォーキングを終えてシャワーを浴び、朝食を済ませ、ドイツの販売代理店の社長Frank Ziermannと私は一路目標をドイツのKreferd(クレフェルト)に向けた。昔から付き合いのあるVaianoというクリーニング店を訪問するためだ。オランダの国境からドイツに入った途端に車のスピードが一気に上る。ドイツではアウトバーンという高速道路があり、そこでは事実上速度制限がない。彼の話によるとほとんどの車は250km以上になるとリミッターがかかるようになっているとのことだが…、いずれにしても恐ろしいほどのスピードが出せる。しかし200km以上出す車はあまりない。仮に200km以上出すと普通に100kmのスピードで走行している車が止まっている状態で我々が100km以上の時速で通過していくことになるのだからとても怖い。仮に遅い車が不意に車線変更することがあると大事故につながる恐れがある。そんなことを考えると平均で150kmくらいで走っているのが一番安全で心地よさそうだ。私はスピード出すのが大好きだから200km以上の運転を見せてもらってとても楽しかった。

Frankのメーターが225kmを指しているところ。速かった〜!!

 

久しぶりのVaiano、外観は全く変わっていなかった。社長のMarcoが出てきてお互いの再会を喜んだ。早速工場を見せてもらった。びっくりした。記憶にあったクリーニング工場が一変していた。それまで地域の代表的なクリーニング店だったのが一気にランドリー工場に変わってしまっていたのだ。もちろん、ドライクリーニングをやめたわけではないのだが4台あったドライ機が1台になってしまっていた。その代わりに工場の中央に洗濯機が5台ほど設置されていたのだ。それまでのことを考えるとなんとも悲しい光景だった。いわゆるドライクリーニングだけでは食っていけないと言わんがばかりの光景だったのだ。

Vaianoのお店兼工場。昔と全く変わっていなかった!
中を見てびっくり。ドライ機がたった1台しかない!!
工場の中央に洗濯機がずらり。昔はウール仕上げ機がたくさんあったのに…。


ここにはシングルのワイシャツ機が2セットとブラウス仕上げ機が1セット設置されていたはず。まだあるのだろうか?と見たらしっかり残っていた。もう10年は経っているだろう。しかし状態は悪くない。ここだけ昔の面影が残っているようだった。

昔の隊列でここだけは変わらずに残っていた。


ドイツでもドライクリーニングの売上が激減している。先代のお父様にもお会いすることができた。彼らと一緒に近くのレストランで昼食を取ることとした。そこでお父様は「昔はよかった。ドライクリーニングでとても良い商売ができた。しかし現在はひどいものだ。人々が昔のような服を着なくなってしまった」と。社長である息子さんも「僕だってやりたくてやった訳じゃない。しかしこうでもしなければ事業を継続していくことさえできなくなってしまうのだ」と。これが次世代のクリーニング業界のあるべき姿なのか!私はいろいろなところを訪問して脱ドライクリーニングでのビジネスモデル構築をイメージするようになってきたが、ここで改めて目の当たりにしてしまうと本当に日本もこうなっていくのだろう、と感じざるを得ない。
ここVaianoでは地域で需要のあるランドリーを何でも受けるようにしているそうだ。洋服ばかりではなくレストランやホテルで需要のあるテーブルクロスやシーツなどもできるだけ受けるようにしているとのこと。ユニフォームなどは言うまでもない。ここには先代のお父様と現社長の息子さんとの間で相当なやり取りがあったそうだ。しかし最後は息子さんの言うことをお父様が聞いてその方向性になったとのこと。悲しい姿になったのは間違いないが、そのときに息子さんが決断しなかったらこのお店はなくなっていたかもしれない。そう考えると息子さんは大英断をしたと言えるだろう。そしてお父様もよく容認したと思う。この気持はご本人達でなければわからないと思うがとても良いバランスで現在も推移していると思う。

右から代理店のFrank、Vaianoのお父様と社長の息子さん。昔話も含めて盛り上がった。

 

さて、昼食後に我々は次の目的地へ移動した。今度はKreferdから南に一直線、フランクフルトを越えてKarlsruhe(カールスルーエ)という町へ移動した。私がもう一つ気になっていたクリーニング店を訪問するためだ。距離にしてざっと350km以上だがFrankの運転ならば大したことはない。彼は運転し、私は時差ボケからその間ウトウト昼寝をしていた。

軽く3時間半の運転。ドイツ人はこのくらいみんな当たり前で運転する。

 

Karlsruheに到着。早速お店を訪問した。お店の名前はLausenhammer、文字通り社長の名前のクリーニング店だ。彼は私にとっての有名人である。なぜならば主要な展示会には必ず来場し、我々の新しい機械をチェックしに来るからだ。その割にはあまりSankoshaを買わないのが気になるが…(笑

Lausenhammerの外観。あまり高級感は出ていないが…
中はなかなか広くとても開放的。
お店の価格表。興味のある方は調べてください。(笑


それはさておき、このLausenhammerさんは地域の高級クリーニング店として有名だと聞いていた。私は彼のお店を今まで一度も訪問したことがなかったので気になって仕方なかった。Frankも「それじゃ行ってみよう!」ということで訪問した。ご本人との久しぶりの再会、とても元気そうで良かった。ここに価格表だけ出しておこう。これを120円で換算すると決して高いとは思わない。しかし現在はEUR=140円なのでどうしても日本人には多少高く感じるだろう。金額の話はちょっとおいといて、ここで言いたいことは町の高級店は相変わらず良い状況を保っている、ということだ。Lausenhammerはいろんなことにこだわりがあり、確かに洗いにしても仕上げにしても綺麗にやるのは事実だ。ちょっと良い服だったらここに持ってこよう、という意識がこの町の人々にあるのは間違いない。このようなお店は相変わらず今まで通りの経営ができていることも改めてはっきりしたことである。

ドライ機。相変わらずパークを使用。「パークが一番綺麗になる」と。環境問題にうるさいドイツでもパークを堅持!
仕上げ機も年季の入ったモデルばかり。人間の手で仕上げている証拠。
Lausenhammer氏と共に。とても元気そうで良かった!

 

こちらのお店を離れ、Frankの会社があるAhernという小さな町に戻り一緒に食事を取りながらいろんなことを話した。変わっていかなければいけないこと、変えてはいけないことがそれぞれあったような気がする。それを決めるのはそれぞれのクリーニング店である。そんなことを考えながらドイツ料理を堪能した一日であった。