JCPCアメリカツアー その2

6月26日、今日は二つのクリーニング店を訪問しに行く予定だ。一つはSteamer Cleaners、もう一つはDoor to Door Valet Cleaners、両方ともロサンゼルスではとても有名な繁盛店である。ビジネススタイルは全く違うのだが、どうしてこれだけ繁盛店になるのだろうか?それを是非参加された皆さんには感じてもらいたいと思って選んでみた。まさしく今回のお題目である「ブランディングを学ぶ」にふさわしい二社のクリーニング店である。我々は9時にホテルを出発した。我々の泊まっているホテルはハリウッドだったので最初のSteamer CleanersがあるSherman Oaksという町まで30分以内。今回は長時間バスに乗る必要がないので移動においてはとても楽だ。

目的地が見えてきた。このクリーニング店はなんと言っても角地に立つ時計台のようなイメージでとても美しい。バスを降りたら社長のShawn Basseliさんが外で待っていてくれた。皆に握手しながら迎えてくれたのがありがたい。この建物についてShawnさんが早速話してくれた。「35年前にこのお店を建てるときにすでにイメージしていたものなんだ。我々はこの土地をまっさらな状態で買ってこの建物も自分でデザインしたものなんだよ」と。参加者全員がお店に入ってくると従業員の皆さん全てが「Welcome to Steamers Cleaners!!」と挨拶してくれる。この声かけはやろうと思ってもなかなか出来ないのではないだろうか?自分が仮に経営者だったらやれることかもしれないが従業員にまでしっかりしみこんでいるのはなかなか素晴らしい。

(全員の集合写真。この時計台みたいなお店がとてもユニーク!)

(外で出迎えてくれたShawn社長。素晴らしいもてなしでした)

このSteamer Cleanersは家族経営というイメージがとても強い。奥さんのNicoleさんと二人三脚でやってきたお店なのだが、最近は娘さんも少し手伝ってくれるようになっているとか・・・。JCPCの皆さんはまず2階に上がりそこで最初のスピーチを聞くことになった。上がったらコーヒー、ジュース、クッキーにお菓子などなどがズラーッと並んでいる。彼らが我々を最大限に歓待してくれている気持ちがこういうところにも現れている。ここまでやってもらえるのはとてもありがたい!

(全員が2階に上がって最初の挨拶。我々の後ろに並んでいます)

今回は40名も来ていたのでざっくり3つの班に分けて見学することとした。ここはユニット店なのでスペースはそこまで広くない。実際に10名連れて工場内を歩くのも一苦労なのだ。Steamer Cleanersの一番の売りはMetalprogettiによる自動ソーティング機から包装、そしてお渡しのコンベアに乗せるまでの一連の作業が全てオートメーション化されたことである。ロサンゼルスの人件費高騰はクリーニング業にとって最も悩ましい問題である。ここロサンゼルスでも最低賃金が13ドルまで到達しており、この2〜3年で15ドルまで上がると言われているのだ。クリーニング業ほどオートメーション化が進んでいないのも事実で、人件費を軽減させる機械やサービスがあまりにも少ないのも現実である。一方でここは三幸社の西海岸ショールームと言っても良い程ズラッと並んでいる。Shawnさんが見学中に何度も我々の機械の事を力説するのだが、こちらは恥ずかしくて訳せない。彼に「もう三幸社の宣伝はしなくて良いから!」と言うと彼は「いやいや、別に宣伝していないよ。だって本心なんだよ。ここまで綺麗に仕上がって、枚数も上がるし、機械が壊れない。これがウチの利益の源泉なのだ!と説明するのが悪いのかい?」と言われるとまた困る。私も内心とてもうれしいのだがどうも自分の機械の説明となると照れくさい。

(ドライ機の説明をしているところ。日本と全然違うので皆さん真剣!)

それにしてもSteamer Cleanersは顧客に恵まれている。有名なお客様としてマライア・キャリー、チャーリー・シーン、プリンスなども使っているらしい。ルート営業も2コースあるらしいがお店はこの1店舗だけ。そして売上がなんと3億もあると言うのだからびっくりである。どうしてここまで売り上がるのだろうか?我々はこの狭いクリーニング店から近くで用意してもらったレストランに移動して食事をしながらShawnさんの話しを聞くこととした。彼らには顧客を囲い込む方策がいくつかある。上顧客には毎月ティファニーのワイングラスをプレゼントするらしい。Steamer Cleanersのロゴが入ったテディベアのプレゼントもある。形にする感謝が一番の武器とみられる。一方で最近来なくなった顧客にも電話連絡して「どうして来なくなったのか?」などをヒアリングするシステムもある。それらの顧客に再度来てもらえるようにクーポンを発行することもあるとか。これらの話しを聞いているとSteamer Cleanersは如何に顧客との接点を持ち続けるか?というところに大きな力を使っているようである。

(見学の後にレストランにてスピーチ。私はワイン飲みながら通訳!)

さて、Steamer Cleanersを後にして次にDoor to Door Valet Cleanersに向かう。ここはSajidさんとHabibさんの二人が始めたクリーニング店でまだ若い!実際、彼らは私よりも年下にもかかわらず初代としてクリーニング事業に乗り出した異色のクリーニング店なのだ。それにも関わらずカリフォルニア州の最優良店として2018年に選ばれた程である。私は彼らと知り合ってすでに10年近くになるが、現在も常に進化し続けているクリーニング店として私はとても注目している。

(弟のHabibさんが皆さんをお迎え!)

本社工場に到着したらお兄さんのSajidさんがプレゼンをしてくれるお部屋に案内してくれた。しかしクリーニング店なのだから40名もゆったり入れる部屋などあるわけない。それでもなんとか皆が入れるように部屋を用意してくれたのはとてもうれしい!更に彼らはパワーポイントまで用意してくれていた。兄のSajidさんは主に財務と店舗、弟のHabibさんは工場と技術ということで役割分担もバッチリ。まずはSajidさんがDoor to Doorの歴史について話しを始めてくれた。話しを聞くと驚くことばかりである。最初はたった7坪しかない敷地でクリーニング店をオープンした。兄弟共にまだ20歳にもなっていない時の事である。彼らがクリーニング業をやろうと決心したときに最初から決めていた事は「ロサンゼルスで一番の高級店をやること」だった。しかし7坪の敷地で工場を持つことは出来なかったので近くのクリーニング店に下請けをお願いしていた。普通だったらお願いするわけだからあまりその仕上がりなどに文句など言えないだろう。しかし彼らは自分たちのブランドとして洋服を預かっているわけだから自分たちが納得出来ない仕上がりで戻ってきたら納得出来る品質になるまで戻し続けたらしい。とても興味深い話しである。

(真ん中にいるのがSajidさん。その横にお母様が!)

その後、隣のお店が店を閉めることになったのでそこを買収して初めて自前の工場を作ることが出来るようになったのだ。それから少しずつ工場を拡張していったのだが、当時の場所も拡張に限界があったので思い切って現在の場所に工場を移転する事になった訳である。現在はビバリーヒルズの西側にも新店舗を作っている。マーケットを点で作るのではなくゾーンで作る、という考え方もなかなかのモノだ。そのためにどんな投資をすれば良いのか?などしっかり考えられている。この時代のアメリカで事業をどんどんと広げることは簡単な事ではない。それが出来ているのだから敬服に値する。

(最初のスピーチ後に工場見学。皆さん、日本と全く違う工場に興味津々!)

(工場見学後に更に右のHabibさんが技術などについてお話ししてくれた)

こうやって考えてみると事業の成長とは市場が縮小していようが基本的に関係ないのではないか?と考えさせられてしまうほどである。ドラッカーが言っているように「なんの為に経営しているのか?」というミッションがない限り、その事業は上手く行かないだろう。あともう一つ、投資意欲のない経営者は事業を成功させることは出来ない。借金をする事は誰も好まないだろう。しかし事業への投資に借金が必要ならばそれをやってでも進めて行く必要がある。これが出来ない会社は成長することはまずないだろう。私はこれらについては確信している。最後のキーワードは「家族」、午前のSteamer Cleanersが夫婦ならばこちらは兄弟。いずれにしても家族ビジネスとして大成功しているのは参加者の皆さんにはとても印象的に映ったのではないだろうか!

(最後は全員で集合写真。とても内容の濃い1日でした!)