今後のクリーニング事業をどう見るか? その1

みなさん、こんにちは。

今回はどこかの地域のクリーニング事情ではなく今後の日本のクリーニング業について話しをしてみたいと思います。

それにしてもクリーニング離れが進んでいる世の中になっています。皆さんのビジネスは大丈夫ですか?多分、このコラムを読まれている大半の方々が「まずい!確実に対前年度で売上が落ちてる」という感じではないでしょうか?実は三幸社も然り!クリーニング店の売上が落ちると機械の入れ替えなどもだんだんとなくなってくるので弊社の国内販売の落込みは結構なモノです。

まさに日本はアメリカの50年前である1960年代に起こった現象と同じ状況を迎えております。当時アメリカでは日本と同じように大きなクリーニングチェーンが山ほどありました。しかし景気の落ち込み、形態安定シャツなど家庭洗濯可能な洋服の出現、家庭洗濯機の機能向上などが原因でクリーニング店の売上がどんどんと落ちていった時でした。同時にそれまで安価な労働力として使っていた黒人の社会台頭が著しく、彼らの労働賃もぐんぐん高くなっていったことから今までの工場モデルが成り立たなくなったのです。結果として多くのクリーニング店が廃業、売却、M&Aなどがすすみました。そしてそれまでのビジネスモデルではもはや成り立たない事を当時の経営者達は理解し、自社の事業転換を図っていったのでした。

こうやって見直して見ると日本の現在とかなり似ております。アメリカの60年代を考察しながら我々が同じ道を進まないようにして行くにはどうしたら良いでしょうか?ここが今回のお題目となります。

最近、私はいろいろなクリーニング店経営者の皆さんとお話しをするにあたって同じ質問をしております。それは「クリーニング店では本当にお客様に対してプロの価値を提供しているだろうか?」と言うことです。さて、プロの価値ってなんでしょうか?もちろん家庭では出来ないクリーニング店ならでは、の価値と言うことになると思います。それでは具体的にその価値とはなんでしょうか?これを皆さんには是非考えていただきたいと思います。

私はここでワイシャツを例に挙げております。ワイシャツはウール系の洋服と違い水洗いの洋服です。だから家庭でも洗えるしクリーニング店に持ってくることも出来る洋服です。このワイシャツが減っているとするならば「顧客がクリーニング店を利用する価値を感じなくなってきているのではないか?」と推察します。考えてみればクリーニング店が価値を訴えるべき点は沢山あります。50℃近くの温度を使って洗っていること、これは最大の価値です。家庭洗濯では使えない業務用洗剤や化学薬品はいろいろありますがそれを使いながら白さへの追求を図っているのも価値です。一方で洗剤などをワンショット剤などにしているお店は本当に考え直した方がいいと思います。一番の価値である洗いの品質にもはやこだわりもないお店は間違いなく衰退するでしょう。顧客というのはそのような品質を出した洋服から瞬時に理解してしまうのですから・・・。

一方で仕上げを考えてみると最近の形態安定シャツは温度を嫌います。140℃以上の熱でプレスされ、そのプレス時間が長すぎると必ず縮みます。もはや昔のワイシャツと違うわけですから当然工場のコンセプトもそれに従って変えていくべきです。しかし、この部分では取り組んでいるクリーニング店はほぼゼロです。形を崩している部分で考えると現在のクリーニング店の品質は家庭洗濯よりも劣っていると言わざるを得ないのが現実なのです。昔のワイシャツであれば綿100%のワイシャツは完全乾燥しなければ波立ってしまうので押さえすぎがちょうど良かった訳ですが現在ではこの状態を「過乾燥」と呼びます。無論、型崩れの原因となるのです。

ほんの一部の価値を例として挙げてみましたが皆さんはどのくらい自社のワイシャツにこだわりを持っていらっしゃるでしょうか?こだわりを語れないとするならばその会社は大いに問題があると思いますし、売上が減るのもうなずけます。

今回はクリーニング店の価値という主題でワイシャツを例に出しながらお知らせいたしましたが、ウール製品などはどうすれば良いと考えるでしょうか?ありとあらゆる洋服に対してどのように考えて行くべきか?を是非考えて見てください。ヒントはこだわりと思います。

次回のコラムではそのこだわりをどのように表現するか?などを一緒に考えてみたいと思います。