ニック西川社長と対談して感じた事

前回のブログにて8月の投稿をスキップする事をお知らせしていた。8月は夏休みもあり、そんなに顧客訪問など出来るはずもないからネタもないだろう、という推測の元で申し上げた事だったのだが、今回は是非皆さんにもこの考えを知ってもらいたいと思い、急遽ブログを上げることとした。

ニックというクリーニング店をご存じだろうか?玉川学園に本店があり、現在は13店舗で運営している全てユニットのクリーニング店である。社長である西川さんは現在JCPC(日本クリーニング生産性協議会)の理事長を務めている事からとても近いお付き合いをさせていただいている。ちなみに私はJCPCの常務理事でIDC国際クリーニング会議の責任者をやっている。そんな事からいろいろな事をオープンに話しをする間柄になっていて、1年に最低3回くらいは彼の事務所を訪問し、およそ1〜2時間の対談をするのが習慣となっている。私が訪問するときは必ず何らかのスイーツをお土産に持っていく。「圭介が訪問してくる=スイーツをお土産に持ってくる」ということでたまたま本部に来ている各店舗の社員さん達はささやかなご馳走を頂くことが出来ると言うわけで私のお土産には喜んでもらっているらしい。

前置きはこのくらいにしておいて、私が今回訪問した理由は「ニックが今後のクリーニング業をどのように考えているか?」を知りたかったからだ。ニックのビジネスモデルはファッションケアセレクトショップである。ファッションケアというのはお客様のファッションのお手伝いをするお店である。しかしこの夏の暑さに加えてリモートワークがクリーニング店に大きな影響を及ぼしている。人々がドライクリーニングを必要とする洋服を着ていないこの時期にどんな事を考えて商売に結びつけているのだろうか?私はそんな思いでほうもんしたのだが、まずお店に到着したらすぐに目についたのが立て看板で「シャツ類190円」という宣伝だった。正直びっくりした。ニックでさえもこういうシャツ類を集めないとやっていけない、と思っているのだろうか・・・。私は事務所を通って社長室を訪問した。そしていつものようにスイーツを頂きながら対談がスタートした。

話しをしていくうちにやはり現在の状況に寄りそった経営になっていることがわかった。私が予想していたようにドライクリーニング主体で集めようと思っても集まらない傾向を社長は既に結論づけており、衛生業としてのクリーニングに様変わりしようとしていた。とても面白い発想だと思った。現在はコロナで売上が落ちているのだ。コロナさえなければ昔の通りの売上を上げることはできていただろう。それができなくなった原因に直結するソリューションを作った、と言うわけだ。ニックは自社が取引をしているウィルスブロック剤メーカーで生産しているウィルスブロック剤を利用した洗浄でお客様に安全で安心なファッションライフを送ってもらいたい、という方向性になっているようだ。ランドリーばかりでなくドライ衣類においてもウェットクリーニングにこのウィルスブロック剤を添付しているところが面白い。ポイントはコロナ禍においてこの「ウィルスブロック剤」をネタにしている事がとても斬新だった。流石としか言いようがない。具体的なメニューについては申し訳ないが彼らも考えながらやっているのでこちらで公表することはできない。ただできるだけ全てのお客様にウィルスブロック剤付きの洗濯方法を提供しようとしている事は他社との大きな差別化になる事は間違いなさそうだ。

一方でシャツ類を190円で提供している事についてはこれまた時代の流れに沿って積極的に集めようと強く決心している社長の姿があった。社長によると190円でも利益は出せる、とのことでこれはある意味驚きである。何故ならばニックにはシャツ類を手早く仕上げる設備はないからだ。しかし190円で提供する理由は「一つの宣伝ネタ」として使っているように見える。事情を聞いてみると「やはりこんな暑い夏でジャケットを着ている人などいない。我々も新しい売上を作りにいかないと売上は落ちるばかり。」とおっしゃる。私も兼ねてからシャツ類の取り込みについてはかなり積極的にやるべきだ、と述べていたが、ニックではそれを実行していたのだ。やはり考える事は似ているな、と思った。

話題は商材から売り出し方法に変わっていった。皆さんはマズローの5段階欲求説をご存じだろうか?一番下から「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」で構成されており、自己実現欲求についてはかなり志の高い人々が求める欲求となる。先ほどニックではウイルスブロック剤を利用したクリーニングを行っている、と記述したが、このウイルスブロック剤を使ったクリーニングはこの5段階欲求説でみると下から2番目の「安全欲求」にあたる。価格はこの欲求説の上の方に行けば行くほど消費者が喜んで支払ってくれる事になると考えて良い。そう考えると安心、安全のクリーニングという枠組みだけでは会社を満足いく利益体質にしていく事は難しいと考えているようだ。上から2番目の承認欲求にまでたどり着くためにはお店の風格やそのフロントに立つ店員さんの人間力などが必要となってくるわけだ。

例えば最近のレストランで「むさしの森珈琲」というブランドがある。私も先日初めて朝食で利用したのだが、そこで新しい経験をした。同じファミレスなのだがジョナサンやデニーズのようなレストランで朝食を摂るとおおよそ単価は700円くらいだろうか、ドリンクは飲み放題だがセルフサービスである。一方、むさしの森珈琲では店員さんがおかわりのコーヒーを入れたてで新しいカップに入れて持ってきてくれる。店内のデザイン、テーブルと椅子、使っている食器、メニュー表の写真に至るまでとても顧客の志向が取り入れられているのがよくわかる。結果としていろいろ頼むと1000円以上の金額になってしまい、割高なのだがどういうわけか満足度が高い。ここからわかる解釈は、人々は「雰囲気の良い空間でリッチな朝食を摂りたい」と思っているようだ。人々によってはそこで新聞を読んだり、家族やカップルで談笑したり、ケータイをいじりながら朝食を摂るなど様々なスタイルがあるが、美味しい朝食を雰囲気の良い場所で摂ることを求めているのだ。人々はもはや昔ながらのファミレスには行かない。そこで仮に美味しい食事が摂れたとしても満足度はもはや高くならないのだ。

これをクリーニングに当てはめていると時代に合わせた店舗デザインはどうしても必要になってくるのだ。西川社長は「クリーニングを利用している人をカッコ良くしたい。クリーニングのバッグを持って歩いていると、それを見た人が「あの人カッコイイね!」とつぶやいてくれるようなそんなクリーニング利用者にしていきたい!」というのだ。そのためにはお店がカッコ良くなければならないし、利用客の満足度は最終的に店員さんがつくるものだから彼らの接客品質を高めたい、という訳だ。ここら辺が全て合わさって総合的な満足度を獲得する事ができる。結果としてその単価が多少高くても人々は喜んで払ってくれる。そのように西川社長は考えている。本当に深い話しだと思った。

今回の話しでお店の外観を変えれば良い、という訳ではない。まずは自社の今後進むべき方向性を確立する事が大切なのではないだろうか?「自分は〜で生きていく!」と宣言するか、のように。そのために具体的に工場や店舗をどのように改善していくのか?を考えるべきと思う。

これからの時代は容易に生き残る事ができないと感じる。ただ単にやっていれば食っていける世の中ではないのだ。ならば何をやっていくのか?という明確な方向性をここで出し、そしてその方向性に沿った投資をするべきではないか?それを怠るならばこれから生き残る事は難しいだろう。

読者の今後の熟慮と行動に心から期待をしたい。ニックは間違いなく残る企業と私は察した。だから彼らを心から応援していきたいと思った訪問だった。

中国地方を訪問して

7月も昨日で終わってしまった。なんと時が過ぎるのは早いのだろうか?今年の梅雨は前半はあまり降らないと思っていたら後半は脅威的な豪雨に見舞われ、多くの場所で土砂災害などの被災にあった。心からお見舞い申し上げたい。

7月中旬にはおおよそ梅雨が明け、本格的な夏を迎えている。そしてなんといってもオリンピックがスタートし、本日は既に10日目がスタートしている。開催されるまではオリンピックの開催是非が毎日のように報道されていたが、いざスタートしてみたらどうだろうか?やはり多くの皆さんがテレビに釘付けになっているのではないだろうか?私は開催にそもそも否定的ではなかったのだが外国人の来日によって更に感染が拡大する懸念は持っていた。しかしそんな事を言っていたらなにもできない、と思っていた。実際に6月から出張を積極的に行っているし、7月も中国地方を訪問してきたのだ。感染防止に最大限協力しなければならないのは当たり前としながらも行動を自粛していたら自分の事業までが潰されてしまうのだからそこはなんとかしないといけない、と思っていた。話しはオリンピックに戻るが、日本は柔道を中心に多くの金メダルをもたらしており、確実に日本の皆さんには大きな活力になっているのではないだろうか?海崖の選手もリスクを恐れずに日本まで来て精一杯試合に臨んでいる姿を見ると「開催できて本当に良かった!」と思える。一方で毎日PCR検査を実施している結果、試合前に陽性反応が出たことで出場辞退となってしまった選手においては本当にかわいそうでならない。全ての選手がこのオリンピックに照準を合わせてきたのにコロナウィルスによって出られないという結果はとても辛いだろう。

さて、オリンピックの話しはこのくらいにしておいて本題に入ろう。前述のとおり、私は中国地方を4日間で訪問してきた。岡山、広島、山口の3県だ。旅を計画したときには受入OKだった先が直前で東京の感染率拡大と緊急事態宣言の再発出により訪問受入の拒否もいくつかあったので予定通りの旅にはならなかったのだが、おおよその訪問ができたのは本当に良かった。訪問を受け入れてくれた各社には心から感謝申し上げたい。

今回の訪問先の一つであるクリーニング店では既に私物洗濯の仕事を20年近くやっていて現在はその分野でとても助かっている、という話しを聞いた。このモデルは現在のヨーロッパモデルといえる。ホームクリーニングだけではやっていけないので産業クリーニングを取り込む事で収支を合わす、という方法だ。その会社の社長に話しを聞いたところ「私の父が始めた事だったのだが当時は何でこんな事をやらなければならないの?と本当に思っていた。それが現在となるとこれがなければ我が社はどうなっていただろうか?と本当に感謝している」とおっしゃっていた。これはまさに一つの生き残りのビジネスモデルと言える。ホームクリーニングともう一つの軸を作っておいた方が良いのでは?という仮説はまさに現実的と言えるのではないだろうか。

さて、本業においても今回の出張で感じた事は前月までに感じていたことを再確認したことだ。訪問したある会社の社長に話しを聞いたところ「我が社の売上はコロナ前の20%以上の下落でこの流れは来年2月まで続くだろう。それまではもう我慢するしかない!」とのことだった。今回、私は岡山まで飛行機で行き、帰りも飛行機で北九州から羽田まで帰ってきた。私は一応ジャケット着用していったのだが、私以外にジャケットを着用して飛行機に乗ってきた人はほぼ一人もいなかった。確実にドライクリーニング衣類が減っている。これをどうしなければならないか?というお題目を訪問先にも同じように問いかけた。前回までのコラムをお読みの皆さんは既に私の方向性をご存じと思うが、私はランドリー衣類の奪取を積極的に行うべきと説いている。訪問先の反応はそれぞれだが概ねその方向性については納得していた。

ただ多くのクリーニング店がそれまでシャツ類を集めようとしなかったわけではない。今までトライしていたのだ。しかし思ったほど顧客から賛同を得て集めることができなかった。私はこの理由についていくつか理由を感じている。いろいろ事情はあると思うが大きな理由は下記の2つだ。

1.顧客がポロシャツやTシャツをクリーニングに出す衣類ではない、と思い込んでいる

2.クリーニング店がこれらの衣類を本気で集めようとは思っていない

1についてはもはや日本人の習慣とも言える。世の中の人々がこれらをクリーニング店に出しても自宅で洗濯しても変わらないと思い込んでいることだ。2については1の事実に従ってクリーニング店はどんなに努力しても集めることは不可能だ、と諦めていることだ。ただ時代は変わっている。昔よりも現在の方がはるかに暑くなっている。故に新しい顧客獲得を考えると今まで集められなかったシャツ類を集めようと努力することは大きな可能性と確信している。

集合包装においても概ね賛同を得た。訪問先では皆さん「なるほど!」と思ってもらえたようだ。ただ運用面をどうするのか?と問われると各社やり方がそれぞれ変わるわけで、各社が本当に取り組んでみよう、という気持ちにならなければこれも結局は上手く行かないだろう。

ほぼすべてのクリーニング店で下がりゆく売上に対して明確な対策はとれていない。もちろん、不採算店の閉鎖や工場の統合など基本的な対策はしている。しかし、下がった売上に対するV字回復プランを持っているところはないのが現状と言える。まだそこまで考える必要がないのか?もしくは何をやれば良いのかわからないのか?それぞれの会社にそれぞれの事情を抱えているのは事実と思うが、できるだけ早く対策を策定し、実行してもらう事を願う。

8月末のコラムについてはスキップしたい。お盆休みもあるので出張を含めた行動がとれないと予想している。また9月末にそれまでの活動で思った事を書いてみたいと思う。

そろそろ考えなければならない将来設計

皆さん、こんにちは。

6月も終わり、2021年も既に半年が過ぎてしまった。最終週から本格的に梅雨のシーズンらしくなってきて毎日が雨模様。特に今年は関東が当たり年なのだろうか。今年はそれまであまり降っていないイメージだったのだが先週から一気に降っている。雨がまとまって降るとコインランドリーはさすがに売り上がる。

6月は九州(福岡、佐賀、大分)と名古屋地区を訪問した。事前に公言せずに訪問しているので訪問できていないところも多々あるのだが行けなかった先についてはご容赦いただきたい。多くのクリーニング店は本業では大きく落としている状況のようだ。コロナ前の30%以上となるとその会社の緊急事態となるがそこまでひどい訳ではない。しかし20%以上、25%前後という下落率を多くのクリーニング店は「仕方ない」と考え、これからどうしようか?と考えあぐねているのではないだろうか?

私が訪問した全てのクリーニング店で売上と利益を伸ばしていたところは1社だけだった。その会社は本業のクリーニング業では20%の売上を落としていたものの地域のユニフォームクリーニングの仕事が入ってきた事で大きな売上と利益になったとのことだった。現在はこのユニフォームクリーニングの売上が会社全体の1/3までになっているわけだからこのクリーニング店は単に幸運だったと言えるかもしれないが、ご本人の常日頃からのネットワーク作りから勉強会や業界の会合に顔を出していたことから得たビジネスなのでご本人の人徳といえる。

今回の私が投げかけたいお題目は以上のように「クリーニング業を続けながらどんな事業、もしくはアイテムをプラス事業とするのか?もしくはどんな事でコストダウンを図るのか?」である。ドライクリーニングは本当に儲かる。有機的な汚れは簡単に落ちるし、洗い皺が簡単に付くわけではない。だから仕上げ工程は基本的にとても簡単である。しかし前回のコラムでも紹介したようにワイシャツ、ズボン、ジャケットで売上の70%を構成していたのにジャケットはもはや見込めないアイテムとなってしまい、シャツ類もどんどん家庭洗濯に奪われてしまっているのが現状なのである。もはや戻ることのないボリュームに対して今までの工場形態を維持しても非効率的なのは明白である。

それではいくつか考えを紹介したい。まずは「新しい事は何もやらない!今まで通りの活動を続けていく。しかしながらどこまでダウンサイジングしていこうか?」という考え。これも基本的には有りと思う。新しいサービスを始めたとしても顧客に認知してもらい、それを魅力と感じて利用してもらうまでには相当な時間と労力がかかるし、なによりも投資が必要なのだ。それらに対してリスクしか感じない会社は変化ができない訳だからダウンサイジングを図る事で収支を合わせることしか生き残る方法がない。それでもある工場を何も改善せずに放っておくと赤字の垂れ流しになるわけだからダウンサイジングに合わせた工場レイアウトと設備の再設計は必要である。お金を全く使わずに何も変えない会社は間違いなく終わってしまうことをここで明言しておく。

と言うことで私が最初に紹介したいのは「集合包装」である。これはダウンサイジングの一つの方法として紹介したものであるが、先月の全ての訪問先で一番反応が強かったのはこの集合包装だと思う。比較的投資が少なく、しかも地域の人々にCO2削減をアピールできるプロジェクトである。これは簡単な事で現在行っている単品包装を集合包装にする事だけである。最近はフィルムの厚さを更に薄くする傾向があるようだが、基本的に単品包装から脱却できていないのだからクリーニングを使っているお客様にはなかなか理解されづらい。しかし、複数の洋服を1枚のビニールで包装するならば顧客は明らかに減らしている事を理解してもらうことができる。最近のSDG’sの流れから多くの業界が廃プラスチック削減を行っている。これは大きなチャンスだ。今までは資材を減らすと言うことは「安っぽくなる」ということでなかなか出来なかった事だったが、この流れは「世の中に貢献しながら会社の費用を削減できる」という考えになるので是非やるべき、と提案した内容だ。しかし、使っているフィルムでは集合包装ができないので700mmレベルにしなければならない。フィルムメーカーに話しを聞いてみたら物理的には作れるようなので是非検討してもらいたいプロジェクトである。

もう一つ訪問先で大いに納得してもらったのは「水洗い衣類への対応」である。これは前回のコラムにも書いた通りだが、この環境下ではドライクリーニング衣類を集めるのは非常に困難なのだ。だから水洗い衣類に対してどのように全社で対応していくのか?と言うのがお題目だ。
水洗いは本当に面倒くさい。ドライクリーニングは仕上げが基本的に楽だが水洗いにおいては非常に手がかかる。実際にクリーニング工場においては水洗い衣類に対して生産性の高いレイアウトは全く考えられていないのだ。しかし、このような状況になってくるといい加減に無視する事はできなくなってきていると考える。そこでどんな水洗い衣類を集めることを目指すのか?そしてそれをどのようにしたら生産性を高めることができるのか?を考えて行く事が肝要と思う。
ポイントは何を集めるか?である。先ほどのクリーニング店のようにユニフォームに特化するならば徹底的に特化すべきと思う。他にもWash & Foldもあるし、私物洗濯ビジネスもある。私はポロシャツ、Tシャツ、ブラウスのようなワイシャツに近いアイテムを積極的に集めることを提案しているが、最終的にどんな集め方でも良いと思う。集めるモノが決まったらそれをどのように処理していけば良いのか?を考えて工場のレイアウトを再設定していく事が大切と思う。

他にもできる事はいろいろあると思うが、私は基本的に水洗い衣類を集めることで減り行くクリーニング業の補填にすべき、と考えている。同時に集合包装などを進める事で世の中の流れに貢献しながらもコスト削減にも寄与している状態を作る事を提案している。実際に何をやれば良いのか、を見いだせずに苦しんでいる会社がとても多いと見受けられたのでこちらの提案を真摯に受け入れて頂いたと感じた。いずれにしても利益率を高めなければ生き残っていくことは難しいので是非利益率の向上に精を出してもらいたい。

アピールしないとクリーニング店は残っていけない!

先月はブログ更新をサボってしまった事をお詫びしたい。別に書きたくない訳ではないのだが、どうしても書くネタがない。つまらないネタで更新したところで面白みに欠けてしまうわけだからどうしよう、と困っているうちに時はどんどん過ぎてしまう。

昨日でもう5月が終わってしまった。3月、4月とクリーニング店は軒並み忙しさを実感していたようだが5月に入ってすっかり動きが止まってしまったようだ。もう夏のような閑散期が始まってしまっているのか?何ともクリーニング店にとっては恐ろしい状況になってしまっている。

5月からずっと続いている緊急事態宣言が6月20日まで延長される事となったが、世の中の人々は既に織り込み済みなのだろうか、街に人があふれている。誰もが「もうわかってるよ!」と言わんばかりの状態だ。無理もない、ワクチン接種が遅れ、人々に更なる自制を求めたところで経済が止まる。誰もコロナにかかりたいとは思っていないが、経済活動が止まるのはこれまた死へのロードマップになってしまう。注意しながらも動かなければならない、と誰もが思っている。

かわいそうなのは飲食業である。お酒の提供ができないが故に客が来ない。ニュースで見ている限り一日の感染者数は確実に減っている。お酒の提供禁止、時短営業と感染者数の減少の因果関係はある程度認めなければならないのだろう。しかしこれでは多くの飲食業が閉鎖に追い込まれてしまう。政府はいち早く全ての国民にワクチン接種ができるように仕組みを作る必要がある。

そんな私も出張の自粛などやっている場合ではない!と言うことで先日、関西を出張してきた。行きは飛行機、帰りは新幹線を利用したのだが、思った以上に人は乗っていると感じた。やはり会いに行かないと成り立たないビジネスもあるのだ、と再確認した。私の出張は主にリサーチ。訪問したクリーニング店の状況を確認したり今後の方向性を聞いたりして、我々がどんなサポートを提供するとその方向性がより現実的に結果を出していくのか?を考える機会にしている。

クリーニングの現状でまず一番みなさんにお知らせしたいのは仕事に行く人々の服装である。新大阪駅を歩いていた時にすれ違う人々の服装に驚きを隠せなかった。男性会社員のおよそ70%がジャケットを着ていない。まだ5月である。既にクールビズなのか?ワイシャツのみで出勤している人がとても多かった。次にネクタイをしていない人は95%くらいだろうか・・・。あ、自分もネクタイしていない!!業界に頑張ってもらいたい、と思っている自分でさえネクタイをしない訳だ。面目ないが、これも時代の流れか・・・。

しかしほぼすべての人々がワイシャツを着ていた。ここまでは良い。しかしその8割以上が明らかにクリーニングに出していないであろうと思われた。ポイントはスリーブのタックが全然綺麗にプレスされていないのだ。ほとんどの人々が家で洗い、そのまま自然乾燥している、という状況なのだろう。素材の変化に従って人々がクリーニング店を利用しない傾向ができてしまっているのだ。形態安定シャツはある意味恐ろしい存在と言える。

しかしそれだけが理由なのだろうか?私は今回訪問したクリーニング店全てにこの質問をしてみた。「どうして家庭洗濯との洗いの差をアピールしないのですか?」と。一部の方は「昔やったよ。しかしそれでは効果がなかった。」と答えてくれた。うーん、一度だけでは浸透しないんだけどな、とすぐに感じてしまった。

私は常々家庭洗濯がプロの洗濯と比較して勝てることなどまずあり得ないと思っている。洗濯で大きな役割を果たすのは洗剤であるが、この洗剤も家庭洗濯用とプロの洗濯用では大きな差がある。まず家庭洗濯で第一に考えるべき事は「安全」である。洗剤の利用で体に障害を負わす事は絶対にあってはならぬ事、と洗剤メーカーはどんな使われ方をしても問題がないように開発している。また衣類の損傷を起こさないようにする事も最優先されているので基本的に水で洗う。有機性の汚れについては水であってもその洗剤の力である程度綺麗にする事は出来る。しかし、汗のような水溶性の汚れはそう簡単には落ちない。それは真水で洗っているのだから。それではどんな時に汗をかくのだろうか?それは人の体温が40℃近くまで上がったときで、それはスポーツをした時や風邪を引いて熱を出しているとき等がある。体の温度が上がった結果出る汗はその温度以下では出ないのだから洗う水も最低40℃以上のお湯で洗わなければ落ちない。家庭洗濯ではそれができないから芳香剤が含まれており、臭いをマスキングしているのだ。更に言えば白さを出すためにプロは時に過酸化水素水を使って白さを更に引き立てる技術を持っているが、家庭で過酸化水素水など使えるはずもない。このようにみてもプロの洗いは家庭洗濯と比較にならない技術力があるのだ。

しかし世の中に全く知られていない。何故アピールしないのだろうか?使う人々がこのことを知ればクリーニングを利用しない全体の半分くらいの人々はすぐに試してみようと思うのではないか?もちろん、ここでアピールはし続ける必要がある。街中で机をだしてクリーニングの相談会をやったって良いだろう。1日に何万人も通る場所でたった5人しか相談に来なかったとしても5人にアピールできるのは素晴らしい事ではないだろうか?一方的に宣伝するだけでは効果は薄いと感じる。やはり対面でお洗濯にいろいろ不安を感じている人々のお悩みを聞いたり、自社の強みをアピールする事で確実に相談をしてきた人々は一度使ってみよう、と思うようになると確信する。

私が何故出張して人々に会いに行くか?というと対面だから聞ける話が沢山あるからだ。電話やリモートでは最低限の話ししか出来ないのに対して会いに行くといろんな話しをする事ができるのだ。会ってくれた方々には感謝しかないが、彼らも私からいろいろな情報を得ることができたはずだ。最低、今まで気にしなかった事を考えるきっかけにはなっている。これが会いに行く大きな恩恵と言える。

一時期、一部のクリーニング店が店頭で公開しみ抜きイベントをやっていたのを思い出す。アレは最高のプレゼンだと思った。興味ある人は必ず寄ってくるから。それによってそのお店の技術力を見せつけることもできるし、お客様の質問や疑問を聞いてあげることもできる。

人間にどうしても必要なのは「相対」と思う。私は今月も必ずどこかに出張に行こうと思っている。クリーニング店で一番必要なのはアピール力なのではないだろうか?

アメリカのワクチン接種から見える将来

今年の桜の開花は本当に早かった。このコラムを書いている頃は既に桜が散り始めている。今年は思った以上に暖かさが訪れるのが早かった。私はほぼ毎朝ウォーキングをやっているのだが、既に手袋や耳当ては外しているし、半袖で歩ける朝も経験している。
それにしても今年の桜はとても綺麗だった。幸いにもあまり雨が降ることもなく、とても美しい景色を楽しむことができた。こちらにいくつかの写真を載せておきたいと思う。

3月はクリーニング店が少しずつ忙しさを感じる月になったようだ。週末のクリーニング店に列ができている光景を見るとホッとする。しかし我々メーカーや販売店はそこまでの忙しさがなく、相変わらずの苦しさが続いている。無理もない。多くの会社が全体の半分の規模で工場を回している訳で、例年期待しているボリュームに戻っているわけではないのだから仕方がない。クリーニング業界はこのコロナで最も悪い影響を受けた業界の一つと言えるだろう。

前回と前々回のコラムでアピールの仕方だとか人件費の削減だとか主張をさせていただいた。3月もいくつかのクリーニング店を訪問させていただいたが、大きいところほど苦しい雰囲気が出ている。一方で小さいところで技術に自信のあるところはあまり大きな影響を受けていない、と見える。一つだけ言えることは「クリーニング業は人々が外出する事で成り立つ業種である」ということだ。飲食業と同じ条件であるが、やはり人々にはもう少し注意しながらでも外に出ていただき、感染に注意しながらもいろいろな会合に参加してもらう事が大切なのだと思う。

そこで一つ面白い状況を紹介したいと思う。それはアメリカの状況だ。アメリカでは少しずつ市場が回復してきている。人々の外出、会合、会食などが増えてきており、それがクリーニング業への売上につながり始めてきているようだ。大きなポイントはやはりワクチンと言える。
弊社のアメリカ社員達もおおよそ1回目のワクチンを接種し終えているらしい。一部の社員においては既に2回目の接種も終了しており、それが外出の意欲を後押ししている。実際に一部の州政府もワクチン接種を終了している人同士の会合はマスクなしでも大丈夫、という見解を示している。昨年のコロナ前にすでに受注をもらっていた案件でこのコロナにより延期していたものにおいても少しずつ動き始めてきている。今まで溜まりまくっていたアメリカ事務所の在庫も明らかに減り始めてきていることからアメリカはこれから徐々に元に戻り始めるだろう。
やはりアメリカは富裕層によって支えられているな、と感じる。クリーニング店の数は50年前からのリセッションを経て現在は適正数になっていると考えるといくつかの店舗が廃業に追い込まれたとしても新たなプレーヤーが出現する事で少なくなりすぎず、また多くなりすぎず、というバランスを維持しながら着実に元に戻っていくと予想出来る。

このように見てみると日本政府はできるだけ早くワクチンの接種を国民に推し進めてくれる事を心から願う。いくら人々に不要不急の外出のお願いをしても限度がある。実際に東京においても1日あたり200人を切る感染者数にすることなどできなかった。現在、大阪などに蔓延防止条例が発出されているが、間違いなく東京にも発出される事になるだろう。そうなるとまた時短要請、不要不急の外出の禁止となり、人々に新たなストレスを強要することとなってしまうのだ。
日本人は世界の民族と比較してもかなり忍耐強い人種と思う。しかしもう限界だろう。コロナに感染はしたくないが、このままでは商売も潰れてしまう。故にワクチン接種は世の中の経済活動を安全に円滑に行うために不可欠な条件と言える。早く全員が接種できる状況を作って欲しいと思う。

ただワクチン接種でクリーニング業が助かる訳ではない。クリーニング業はこれからが正念場である。どんなやり方をすれば生き残れるのか?はそれぞれが考えるべき問題と思うが、それは前回、前々回のコラムを参考にしていただければ幸いである。

来月はもう少し明るい話題を提供したいものである。皆さん、頑張ってこの難局を乗り切ってもらいたい。

クリーニング店の洗浄を売りにしてみては?

1月はかなり悪かったが、2月はもっと悪くなっている。緊急事態宣言がようやく関西圏などで解除される事になったが、1都3県は3月7日まで続く事が決まっているようだ。大手のクリーニング店も中小のクリーニング店も軒並み30〜40%の売上減との情報が私のもとに届いている。実際に私も何人かの経営者と電話で話をしているが、ほとんどの人々が「もはや売上が戻ることはないだろう」と悲観的な見方をしている。実際に私も同じように考えている。
戻らない、戻らないと悲観するのはいいが、何も手を打たずに悲観していたら本当に潰れてしまう。ほとんどのクリーニング店はワイシャツ、ズボン、ジャケットの3点を基本とした工場レイアウトができている。これらが集まらないから他を集めよう、と思ってもそう簡単にできないのが現状と言えるだろう。そうなるといくら新しい事をやろうとしてもまずは3点を集める努力をしなければならない。しかしそれを一体どのように集めていくのだろうか?ちなみに大手量販店ではワイシャツやブラウスなどはある程度売れているらしい。しかし売れている素材は形態安定シャツ等である。価格の安さも手伝ってそのようなシャツを買い、家で洗濯をしてしまう、という傾向が強まっているのだろうか・・・。

私は兼ねてからクリーニング業界に対する大きな疑問があった。それは「洗いの素晴らしさ」を表現していないことである。一般消費者にクリーニング店の水洗いと家庭洗濯の差はなんだろうか?と聞いてみても「わからない」と答える人がほぼ100%というのが現状である。そして家庭洗濯でお湯を使って洗っている人は極めて少ないのも現状で、多くの流通している家庭洗濯機はお湯対応していないモデルで、家庭洗濯用洗剤もお水に対応したものがほとんどなのだ。それなりの科学の力はあるのだろうが、お湯の力に勝るものはない。日本のクリーニング店でワイシャツを洗うのに通常の水道水の温度で洗う工場はないだろう。お湯の温度設定については各社それぞれ違いはあるが50〜55℃を適用するところが一番多いのではないかと思う。
では何故クリーニング店はお湯を使うのか?それは単純にお湯の方が汚れが落ちると誰もが理解しているからである。そしてそのお湯にワイシャツは耐えられると理解しているからだ。では何故家庭洗濯ではお湯を使わないのか?家庭洗濯ではワイシャツだけで洗う事はないだろうしいろんな素材をまとめて洗うので、一番リスクが少ないのは真水で洗うことなのだろう。確かにこれはリスクを冒さない最良の方法ではあるが、私はそもそも人々がお湯で洗う効果を知らないのではないか、と推察する。故にクリーニング店はここに大きな洗浄の差があることを改めて認識し、それを強みとして消費者に主張することではないだろうか。最近こそお湯で洗える家庭洗濯機が出始めてきているが、まだまだそれを利用する人は少ない。実際に洗濯機にお湯を接続している家庭はとても少ないし、お水を洗濯機でお湯にするにはかなりの電力を消費しなければならない。それらを経済的に考えるとお湯で洗おうとする人は少ないと考える。クリーニング店は高温のお湯で洗っているから皮脂の汚れも含めて綺麗に洗浄することが出来る、という論理を展開すれば家庭洗濯との大きな差をつけることができる。しかし、何故クリーニング店はこの強みをもっと消費者にアピールしないのだろうか?私はこれを昔から考えていた。コロナを通じてクリーニングの需要がここまで落ちている時にこそ基本の強みをもっとアピールすべきではないだろうか?

一方で、私はクリーニング店に「衛生」「消毒」という言葉をもっと利用した宣伝をしてもらいたいと思っている。世の中の人々は依然とコロナにおびえる毎日を送っている。クリーニング業界が洗浄からもっとコロナにも対応できる洗い方をしてもらえれば需要は計り知れないのではないか、と思う。残念ながら消毒という観点ではできる方法がほぼない。次亜塩素酸を使えば十分に消毒にはなるが、洋服の色を全部飛ばしてしまうのでNGである。一方で80℃以上のお湯で10分以上つけ込むというのも消毒の一つの方法となるが素材が80℃のお湯に対応できないのでこれもNGとなってしまう。結局のところ、消毒できる方法がクリーニングにはないのが問題なのだろう。大手薬品メーカーからの情報によると過酢酸を使う事が唯一の方法ではないか?と言う。しかしこれは劇薬指定になっているので一般家庭で使うことはまずできないだろう。そしてこの過酢酸はまだ認可されていない薬剤なのでこれを使うから大丈夫、という論理にもならないのが現状だそうだ。

ただ、最近はウィルスブロック(以下VBと省略する)剤なども出てきているのでこういう薬剤を利用しながらクリーニング店の洗浄価値をもっとアピールする事ができたら新たな顧客を創造する事が出来るのではないだろうか?

何もやらずにこのまま指をくわえてみているとこの業界の縮小が加速し、半分以下のサイズになってしまうのも時間の問題になるだろう。業界に携わっている者としてはとても悲しい話しである。各社が何らかの対応をして消費者にアピールしてくれる事を心から願う。

この時代だから考えるのが営業利益率

今年初めてのブログである。今年から1ヶ月に1回はブログを更新しようと思っていたのだが何ともネタがない。書くことと言えばクリーニング店の売上が1月8日からスタートした緊急事態宣言を機に急落してしまっていることである。昨年12月の売上が全体的に少し落ちてしまい、業界関係者は不安に思っていたのだが、1月に入ってからの落込みは目を覆いたくなるような状況になってしまっている。多くのクリーニング店が工場の50%近くを休業させている状態で、弊社のフィルムの売上を見てみてもその状況は手に取るようにわかる。年末のブログでも申し上げた通り、もはや以前のビジネスモデルでは成り立たなくなってしまっているのが現状といえよう。

いくつかのクリーニング店は更にセールをかけてボリューム集めに奔走している話を聞く。ただでさえ低価格でやっているのに更にセールをかけるのか・・・、明らかに人々の外出は減ってきていると思う。特に夜の人々の外出は無くなっている。実際に私も夜の外食においては1月に入って一度も出かけたことがない。この状況でセールをかけて本当に集まるのだろうか?セールをかけなくても集まると想定される洋服に対しても利益を圧迫させてしまう政策になっていないのかな?と老婆心ながら心配してしまう。何もやらないよりは良いしその決断は尊重するが、くれぐれも会社の利益率が更に低下しないように頑張ってもらいたいと心から願う。

私は1997年に三幸社に入り、海外を中心にクリーニング業界を見続けてきたが、その間にJCPC日本クリーニング生産性協議会と関わり、IDC国際クリーニング会議の企画をやるようになり、世界中のクリーニング業者と関わるようになった。その関わりを経てクリーニング業の歴史や現在のビジネスモデルなど様々な知識を持てるようになった。三幸社の海外進出は1988年で、イギリス・バーミンガムの展示会にワイシャツ仕上げ機を初出品した。当時「アジアからすごいワイシャツ機がやってきた!」とその展示会で一番の注目になった。私はその時参加していなかったが、私の父が帰国時に大興奮でその話をしていたのを思い出す。その流れから海外展開を視野に入れ、1993年にSankosha USAがシカゴに設立されたのだ。アメリカでも当時のモデルCN-561(国内はCN-551)が飛ぶように売れていったのをよく覚えている。しかし、私の父はアメリカでここまで売れるとは予想していなかった。私もどうしてあの機械がそんなにもてはやされたのか?がわからなかったのだが、それが現在よくわかるようになった。

時は1960年代後半から1970年代前半、アメリカやヨーロッパではそれまでのクリーニング業が破綻を迎えようとしていた。黒人の社会進出(人類平等における社会の認識)、それまで安価で雇えた人件費の上昇、形態安定シャツの登場、カジュアルウェアに対する理解などが挙げられるが、クリーニング業に於いてはどれもこれもが逆風だった。その当時どのくらいのクリーニング会社があったのか、はわからないが、相当数が廃業または売却を行った事を確認している。アメリカは1970年代からずっと業界の縮小が進んでいる。現在は大きな縮小には至っていない。白人系で家族代々続いている老舗クリーニング店は現在も堅調な動きをしている。一方で中堅クリーニング店がその当時から移民に事業売却を徐々に始めており、韓国系クリーニング店が爆発的に増加したのもこの1970年代後半から1980年代にかけての話しである。

こんな時代背景だったのだが、ボリュームはどんどん減るが、人件費はどんどん上がっていく、と言うことで韓国系クリーニング店は人を雇わず、夫婦だけで朝から晩まで二人きりで身を粉にして働き続けてなんとか生計を立てていた、と言うのが実情であった。はっきり言えば人を雇う力がなかったが、二人で出来る事は残念ながら限られている、だから便利な機械は導入したい、というニーズがあったのだ。その結果、韓国系のクリーニング店を中心に爆発的に売れたのだ。私の父は発売したシングルを当時の日本の小規模クリーニング店の為に開発したのだが、アメリカでは業界のダウンサイジングの時期に丁度合致したのである。

このようなアメリカの歴史を日本はまさにたどろうとしているのである。私が申し上げたいのは利益率だ。特に営業利益率、これをどうやって改善していくのか、をまず第一に考えるべき事であろう。アメリカ、特に白人系のクリーニング店では営業利益率15%以上を常に意識しているそうだが、日本のビジネスモデルからするとかなり難しい設定になるだろう。ただ、今まで2〜3%の営業利益ならば5%以上を設定するのも良い。6〜7%を出しているのであれば10%以上を目指す、という感じで良いと思う。いずれにしても今までの利益率以上を目指す政策をまとめることが生き残りの一番のベースになると思う。その利益率を出すために価格の再設定が必要なのか?もしくは工場の原価を落とす努力が必要なのか?店舗などの営業経費の削減が必要か?様々な分野での改善が必要になると思われる。

しかし基本的に変わらないことは集める洋服である。どんなに靴やワッシュ&フォールドをやったとしてもそれらが会社の売上の根幹になる事はあり得ない。やはりワイシャツ、ズボン、ジャケットを如何に集めて利益を出すか?を考えなくてはならないのだ。売上が減っていく中で売上を増やすセールをかけても本当に大丈夫か?と前述したとおりなので、この時期に一番力を入れるべきは「工場経費の削減」ではないか?と考える。もはや戻らないだろうボリュームを夢見ていてもその夢から覚めることはまずないだろう。

ならばこの時代にあった工場作りを再定義してみるのが良いと思う。ただ、一気に全てをやることはできないので順番にやっていけば良いと思う。私は一番やりやすいのはワイシャツと思う。何故ならばアメリカの縮小時代で彼らが取った対策が参考にできるからだ。特にフジ型を使用している工場はすぐに経費計算を始めた方が良い。そこで多少の投資金額が必要としても最終的に近い将来でプラスに転じる事は簡単に理解出来るだろう。ただ、そこで将来のボリュームが想定通り集まり続けるかどうか?を営業サイドとしっかり確認し、確固たる営業戦略を作って行けば良いのだと考える。

日本がアメリカのたどった道と全く同じ道になるとは思えない。しかし、クリーニング業がアメリカのようになっていく傾向は間違いないと思う。そんな事を考えて営業利益率をどのくらいに設定するのか?そしてどうやって目標数字を目指すのか?をしっかり組み立ててもらえると明るい未来が徐々に見えてくるのではないかと思う。ただどんな世の中になっていくのか、は誰もがわからない中で決断をしなければならないわけだから経営者の皆さんのご苦労は本当に計り知れない。しかし決断できない会社は衰退していくので何らかの決断をして会社を前に動かしてもらいたいと心から願う。

今年1年を振り返って 〜とても厳しいクリーニング業〜

なんと、今年も本日で終わってしまう。

飛沫防止板のお話しをのぞいてこのブログに載せるのは何ヶ月ぶりだろうか?2月に新型コロナウィルスが日本を席巻してからすっかり生活スタイル、世の中の経済がガラッと変わってしまった。私が最後に海外を旅したのは3月9日、本日は12月31日だ。最近はいろんな人に会う機会を頂いているが、会うと必ず言われるのが「圭介さんも海外には全然行っていないですよね?こんなことって今までになかったでしょう?」というフレーズ。あるわけがない。コロナ前の時代でこれだけ海外に行っていなかったら仕事を放棄しているようなものだ。それだけ三幸社という会社と私という人間は海外に依存しているのだな、と改めて実感する。

日本では感染の減少、Go Toトラベルの活用などでやっと経済にも動きが出てきたように感じる。最近は政府のGo To事業が影響して感染拡大を引き起こしてしまっているのではないかという話しも実際に起こっているが、日本人の自発的な感染予防活動は世界でも類をみないモラルだと思う。普通だったらこの時期は爆発的な感染が見込まれるというのに国全体の一日の感染率がアメリカに対して二桁違う。それでも日本では連日メディアを通じて大騒ぎしている。行政のトップもこの問題にしっかり向き合っている(他国の政府と比べての話し)のだから感染防止につながることは間違いない。先日のアメリカ大統領選挙でバイデンが勝利したと報じられているが、トランプが負けるのも無理はない。アメリカのように国のトップが新型コロナウィルスの問題に真っ向から取り組まず、感染予防を国民に呼びかけず、結果として自分自身がかかってしまう人に大統領を任すことなど出来るはずもない。早くアメリカもヨーロッパも感染防止に腐心してもらい、外国人を含めた人々の往来が出来る世の中を取り戻してもらいたいと思う。

さて、クリーニング業界は本当に厳しい時代を迎えてしまった。私は兼ねてからクリーニング業がどんどん縮小していく、という話しはしていたが、こんなに急にやってくるとは思わなかった。準備が出来ないくらい急だったことは不運としか言いようがないが、この業界縮小はコロナがあろうとなかろうといずれは避けて通れない道筋だったのだ。男性のユニフォームとも言えるスーツ上下、ワイシャツ、ネクタイが山のように集まる時代は終わりを告げようとしている。地球温暖化、ドレスコードの消滅、そしてコロナが生んでしまったテレワークなど今までのビジネスモデルを否定するかのような条件が次々と生まれてきている。この状況で20%以内の売上減でとどまっているクリーニング店は基本的に必ず生き残っていけるのだろうと予想している。しかし、一般的には25%から30%近くの売上減で推移しているクリーニング店も多いと聞く。

残念ながら私の予想では25%以上の売上を落としている会社は残っていく事は非常に難しいと考える。何故ならばそもそもクリーニング業でとても高い利益率(営業利益7〜8%以上)を保つお店がとても少ないからだ。一部のクリーニング店ではとても高い利益率を確保しているのを知っているが、基本的には一般消費者が顧客である。故に価格競争からくる利益率の低い状態で活動しているのがほとんどのクリーニング店であろう。しかし海外と比べて一つ良い条件がある。それは「料金前払い」という制度である。日本はこれがあるから低利益率であってもなんとか食いつなぐ事が出来たのだ。そこで必要なのが売上高なのだ。しかしこのコロナ禍で30%ダウンしている会社は相当厳しいと言わざるを得ない。売上向上における何らかの対策を考える必要があるだろう。

私は実際に20%以内で推移しているクリーニング店を数社訪問しているが、そういう会社は何らかのアクションプランをとっている。不採算店の閉鎖は当然であるが、一方でこんな時代での新規出店もしている。クリーニング需要がどんどんさがっているのにもかかわらず新規出店するのはしっかりとしたマーケティング、そして経営者による決断と投資が出来るからであってこれはなかなか出来ることではない。

同じ事が工場でも言えるだろう。工場は売上に対するプロフィットセンターになり得るし、コストセンターにもなり得る。コロナ前の売上規模を維持している会社はほぼないと思われる状況から工場のプロフィットセンター化に向けて経営者は腐心しなければならない状況であると思われる。要は今まで以上に利益を出すためにどんな工場改革をするのか?を考えなければならないのだ。ここに力を注げない会社は残念ながら残っていく事はとても難しいと私は考える。

これは我々のようなメーカーでも同じ事が言える。私のようにクリーニング店が売上をどんどん減らしていたら潰れるぞ!と。しかし「どうやったらこの状況を回避出来るのか?」と質問されて何も対応していないメーカーも間違いなく潰れるだろう。我々はそうならないことを願いながら新しい機械を次々と開発しているが、これからの時代は「人件費削減」が大命題になるだろう。

要は時代が変わったのだ。変わった時代に対応出来る企業のみがこの時代に生き残っていける。クリーニング店で言えば長時間営業に如何に少人数で対応出来るか、なのだろう。しかし時代の変化に投資はつきものである。それを嫌がっていたら何も変えられない。こんな時代に新しい事に対して投資すると言うことはとても大きな勇気が要る。それが出来る企業が次世代に対して対応出来る、と言うことで名を挙げる会社となるのだ。

今後のクリーニング業会はとても厳しい状況にあるのは間違いない。しかし、多くの企業がこの状況を乗り切ることを切に願いたい。我々も皆さんのリクエストに応えられるだけの会社であり続けたい。そして2021年がもっと躍動的な年になってもらいたい。私のブログももっと更新出来るようにしたい。来年から最低1ヶ月に1回はアップしていきたいと思うが、これは自分がどれだけ旅出来るか?次第だ。

早くアメリカ、ヨーロッパにオセアニア、海外に行きたいな〜・・・。

三幸社の飛沫防止板 最終回

5月22日、我が社の事務所の一部にオフィスdeマスクを設置した。GCSC(グローバルカスタマーサービスセンター)という部署があり、ここが外部からの部品注文、メンテ依頼など様々な対応を行っている部署である。彼らが対面で電話越しに話し続けている状況を見て「彼らにまずは飛沫対策してみるか?」と言うことから設置してみた。それと同時に社員食堂にもレストランdeマスクを全テーブルに入れてみた。なかなか壮観だし、安全度が一気に上がった。これを見て「うん、事務所全部に入れよう!」と言うことになった。考えてみれば、我々は飛沫防止板メーカーでもあるのに自分たちが使っていないのはおかしいよね!と言うことで設置する事を決定した。

(事務所の全デスクに配置された。なかなか見栄えの良い事務所になった)

6月26日、全てのデスクに設置された。私は社長である兄の目の前に座っているのだが、我々の間にも飛沫防止板が入った。彼はにこやかに「いや〜、これで安心だ〜!」って・・・。俺はコロナ持ち?(笑

(我々の間にも設置。社長ともしっかり会話ができる)

執行役員で工場長の渡辺役員が独断と偏見で赤色のフレームを作った。こうやってみると赤のフレームも悪くない。残念ながら未発表なのだが、黒と白のフレームの中に赤が少々入っているとアクセントになって雰囲気が良い。色を塗る前は多くの社員が「赤なんてやめましょうよ!」と言っていたのだが思った以上の雰囲気で渡辺役員の鼻の穴が一気に広がっていた。

(未発売のレッド。全体のアクセントになっている)

皆で全デスクに入ったオフィスdeマスクを眺めていたら社長が「下のネジを緩めておいて!」と言い出した。我々は「なんでですか?」と聞いた。「少しよれているフィルムがシャフトの重みで少しずつピンと張ってくるはずだから」という。「本当にそうなるのかな?」と怪しげに思いながらも、せっかくだからやってみよう、と言うことでやってみた。翌日会社に来てみるとあらびっくり!少しシワの入っていたフィルムがきれいに張っているではないか!今度は社長の鼻の穴が大きく開いた!!(笑

この日、カタログができあがった。今までとは違い、見開き4ページのカタログ。それまでのカタログを比べても内容が相当濃くなったし、レストランdeマスクもこのカタログから正式に入った。さあ、これでラインナップもそろってきたし、カタログもしっかりしたものができたからこれで行けるだろう、と思ったらまた問題が発生。今度は「このフィルムは燃えやすい素材なのか?」という問い合わせだった。実は前の週あたりからテレビ報道でビニールを応急的に飛沫対策しているお店で火がついて一瞬で燃え広がってしまった、というニュースが流れていたのだ。実際、我々も現在使っているフィルムが燃えやすい素材かどうか、は確認していなかった。そこで実際に燃やしてみることとした。結果は写真の通り。燃えない訳ではないのだが、火種がなければ燃え広がることはないことを確認した。いわゆる「難燃性素材」という事だった。これにより素材を変更する事がなくなり一安心、皆で胸をなで下ろした。

(実際に燃やしてみた。日がそばにあると一応焦げ目はつくのだがすぐに消えてしまう)

5月29日、私はゼンドラの中澤編集長のアドバイスからPRタイムスというメディアに連絡した。商品はどんどん良くなっている。しかしどうしてもこれ以上広がらない。

「どうして?」

一つ言えることは自分の交友関係はそれほど広くない、と言うことだ。クリーニング業界であればいろいろな人を知っているが、この飛沫防止板となるともっと幅広い業界に使ってもらうことができる。しかし私はそれぞれの業界を知らない。どうやって接点を作る事ができるのか?その質問をゼンドラの中澤編集長にしたら「PRタイムスでも使ってみたらどうですか?」とアドバイスしてくれたのだ。早速、彼らのホームページから登録をして質問を投げてみた。すぐに返事が帰ってきて5月31日にオンラインミーティングをしてくれる事となった。私はそれまでに「お店deマスク」の紹介文を作ってみた。

そしてミーティングの日を迎えた。私は用意しておいた紹介文を写真付きで事前に送っておいた。それを見ながらミーティングをする事となったのだ。結論から申し上げると全く読むに値しないと言われてしまった。そこでどんな事に注意すれば良いのか?をゆっくり教えてもらう事とした。今までは自分の頭に浮かんだことをスラスラ書いただけだったが、やはりそれでは人には伝わらない、と言うことを思い知らされた。

そしてできあがったのがこの文章。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000059134.html

ポイントだけ説明しておくと

  • 会社情報:知らない人ばかりなので最低限の情報は載せること。
  • 製品情報:ここが一番最初に来るべき。何故ならばこれを一番伝えたいのだから。
  • セクション見出し:それぞれに見出しを付けて何を伝えたいのか、を題にする事。
  • 実用例:これはあれば尚結構、と言うこと。

こんなところを上手くまとめるとメディアなどが読んでくれるらしい。
これをとても丁寧に説明してくれたのはPRタイムスの舛田さん。私はこの後1ヶ月間に3つのプレスリリースと1つのストーリーを作ったのだが、彼にはとてもお世話になった。そしてプレスリリースの作り方がわかってきたので文章も作りやすくなった。この文章は3つめのプレスリリース。是非、最初のプレスリリースとの違いを見て欲しい。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000059134.html

PRタイムスを通じてプレスリリースをした瞬間にいろいろな会社からコンタクトが入り始めた。最初は似たようなプレスリリース会社からの営業活動がおおかったのだが、徐々にいろんな会社から連絡が入り始めた。

これ以外には銀行の月刊誌に掲載してもらったり、商工会議所の定期刊行物の中にチラシを一緒に入れてもらったり、J-Waveに無料の宣伝を流してもらったり、と様々な活動をしたおかげで実に様々な会社やお店からお問い合わせを頂くこととなったのだ。

現在はパーティションdeマスクという製品もリリースし、4種類の飛沫防止板を作り、おおよそ1200台が世の中に出た。自社の社員全員の給与をまかなうには全然足りない額ではあるが、何もやらないよりはよっぽどマシである。しかも4月13日に社長が「やろう!!」と言い出してからたった2〜3ヶ月でよくぞここまでできるようになったものだ、と社員全員の協力なしでは全くできなかっただろう。改めて社員一同に感謝したいとおもう。この飛沫防止板の誕生秘話もPRタイムスのストーリーに載せたので是非これも読んでいただきたい。

https://prtimes.jp/story/detail/WBq7KATRVrY

これからも「お店deマスク」シリーズは進化を続け、更にラインナップを広げることになるかもしれない。もし、読者のビジネスでこのような飛沫防止板のニーズがあるならば是非声をかけていただきたい。

三幸社の飛沫防止板 その3

5月7日、ゴールデンウィークが終わって久しぶりに出社した。ゴールデンウィーク中にどれだけの見込みやオーダーがあったのか、とても興味があった。しかし、その期待は全く裏切られた形となった。

「どうして?」

全員から動揺が走る。原因はいくつかあった。まずは価格だった。15,000円が高すぎるのだ。我々の感度がマーケットの感度とかなり差があったことが問題なのだろう。それまで三幸社の機械価格は世界でも一番高い方に位置する。それまで付加価値を売ってきた会社なので今回も同じメンタリティでモノが作られていたのは事実だ。しかしこの飛沫防止板は話しが違う。本来であれば設置しなくてもいいものを設置しなければならないというネガティブな要素が入っているからだ。様々なターゲット層に対応する事を考えると見た目も大切ではあるが、やはり価格がとても大切だ、と言うことをここで痛感した。

5月8日、早速試作ができあがった。価格を大幅に落とす事ためには部品点数を落とさなければならない。今までの概念を捨てて向き合わないと難しい。昨日から社長が直接、改善点を言い始めた。「ネジの数を減らそう」「フレームはもう少し細くても良いのではないか?」などなど。やってみた結果が写真のようになった。

(反省を踏まえて新作モデル。イメージが相当スッキリした)

 

 

(フレームが3cmから2cmへ。これだけでも相当無骨さがとれた)

前のバージョンと比較するとかなりスッキリした。横のシャフトは丸い棒を採用し、フィルムは同じモノを使っているがシャフトが挿せるように縫うこととした。これによりネジの数が大幅に減っただけでなく、フィルムのシワを伸ばす事ができる。部品が減り、フレームが細くなるとここまでシャープに見える事に社員一同大きな驚きを持った。そして料金であるが2/3の料金まで落として大丈夫と言うことももう一つの驚き!と言うことは15,000円が10,000円でできると言うことになる。これも相当な追い風になる。社員全員が「もう一度声かけをしてみよう!」と言うことになった。

5月9日、私はこの日はメンバーコースの日高カントリークラブで午前中ゴルフをやりに行った。やはり客はほとんどいない。ゴルフ場もこれではなかなか運営するのが難しそうに感じた。4月23日に納品したコース売店の飛沫防止板がどうなっているのか、もとても気になっていた。早速、売店で見てみたら、なんとフィルムの下にラップをグルグル巻きにしているではないか!私はすぐに売店の係員に聞いてみた。そうすると「思った以上にフィルムが高すぎて背の小さなお客様だと開いている部分に顔が来てしまうんです。だからこれで塞いで見ました。」と言うことだった。これはまずい!と言うことですぐに対策のフィルムを作って差し上げることとした。

(フィルムの高さが結局合わずに無残な姿に・・・。すぐに対策フィルムを作った)

レストランを訪問したら部長の小石川さんが言ってきた。「これからレストランを安全に運営するために飛沫対策をしないとまずいと思うようになってきました。我々はレストラン営業を絶対に辞めたくない。しかし今のところ安全に運営できる方法がなくて困っています。」と言うので丁度トランクに一つ入っていたオフィスdeマスクの最新型を取り出して、試してもらった。早速気になったところは三つ。まず高さが高すぎて圧迫感が強い。そして下の開口部が低すぎて共用している調味料や紙ナプキンなどが双方で使えない。そしてフレームの脚がどうしても無骨なのだ。レストランの様なところではもうちょっと細くスタイリッシュにして欲しい、と注文がついた。持ち帰って検討する事とした。

(対策した脚。上が対策後、下が対策前。同じ長さでもここまでスッキリ感が違う)

5月12日、日高カントリークラブのレストラン用ができた。圧迫感と共用備品、そして脚をもう少し細くする対策して持って行った。レストランのテーブルクロスが白だったので今回は白塗装で対応してみた。第一印象は悪くない。高さはオフィスdeマスクよりも30cm低い。これでかなり圧迫感はなくなった。そして下の開口部は20cm開けてみた。こうすればおおよその共用品はぶつからずに使い回す事が出来る。そして脚の形もスリムになった。小石川部長のリクエストからレストランdeマスクの基本形ができあがり、この脚の形が今後の全てのシリーズに適用される事となる記念すべき日となった。また、この日は同時に狭山ゴルフクラブにも納品があったので、まずは狭山を訪問したのだ。こちらではフロントにオフィスdeマスクを置きたい、と言うことで2台を納品させてもらった。これによりフロントはとても見栄えの良いモノとなった。支配人をはじめ関係者もとても喜んでくれた。その次いでに日高に持って行く予定のレストランdeマスクを彼らにも見せるだけ見せたのだ。思った以上に反応が良い。「これ、良いね!ウチにも是非サンプルを持ってきてくださいよ!」と好反応だった。こういう反応があるととても嬉しい。

(狭山ゴルフクラブのフロント。このイメージにしっかり合う黒塗りで対応した)

狭山ゴルフクラブを後にし、日高カントリークラブへ。小石川部長が待っていた。早速新作を持って行ったら彼らもなかなかの反応を示してくれた。一応合格!このまま置いてもらう事となった。

(日高で試してもらったレストランdeマスク試作品。下は共用品が自由に手に取れる様になっている)

この辺りから少しずつ異業種への販売が目立つようになってきた。居酒屋、ある会社の事務所や会議室、そしてゴルフ場。更に異業種ながらこの飛沫防止板専門代理店になってくれる会社も徐々に増え始めてきた。なんかつながり始めてきた。新しい事をやることで新しいお客様ができ、その方々から新たなリクエストをいただき、それを形にする事で次の商売が生まれる。決して儲かる商売ではないが、この時代に贅沢はいえない。一種の社会貢献として進めていくならば十分ではないか!これは4月13日に社長が言い出した事だが、たった1ヶ月でここまでの事が出来るようになったのは本当にすごいとしか言いようがない。

(居酒屋に納品。拡張ユニット付でしっかり飲食スペースとの間をシャットダウン!)

 

(とある会社の会議スペース。来客が多い事から設置を決めたらしい)

(地方のドラッグストア。これなら使える!と採用してもらった)

(大手予備校の面接スペース。シンプルだが会話も問題なくできているとのこと)

まだまだ機械の仕事は全くもらえずとても苦しい状況ではあるが、この飛沫防止板を通じて少しでも工場を動かせるようにしていきたい、と全員が一丸となっていた。