あけましておめでとうございます。今年も多くの人々に有益な情報を提供できるように活動、そして執筆できればと思います。今年もお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
2024年は元旦から能登半島地震、そして2日には羽田空港で日本航空と海上保安庁の飛行機が衝突炎上するという痛ましい事故でスタートした。被災された方々やこの事故で亡くなった方々には心からお悔やみを申し上げたいと思う。何とも言えない2024年スタートだった。
私の会社は5日から開始した。しかし、私には新年早々から来客があった。シカゴのCD One Price CleanersのRafiq社長が元旦に来日したのだ。先月、私はシカゴを訪問した時に彼と会食をしたのだが、そのときに彼が1月上旬に韓国と中国を訪問する話をしてきた。「韓国と中国に行くのになんで日本には寄らないのか?」と詰め寄ったら「行ってもいいなら喜んで寄りたい」と言い返してきて、急遽日本に立ち寄ることとなったのだ。しかし私が聞いていたのは4日の到着予定だった。故に3日に「明日は何時に到着する予定なのか?」とショートメッセージで質問したら「もう日本にいる」というのだ。この返答に私は慌てた。彼は4日に到着、しかも成田空港の到着と聞いていたので4日の会食は用意していなかったのだった。急遽家族会議になった。4日夜も会食してあげたら喜ぶだろう、ということで家族全員での対応となった。
ということで新年早々からなんともバタバタした仕事始めとなったのだが、彼を5日と6日にいくつかのクリーニング店に見学に連れて行くミッションが発生した。彼の訪問を快く受け入れてくださった見学先には心から御礼を申し上げたいと思う。敢えて今回訪問した客先名はここでは伏せておきたいと思う。どのクリーニング店においても彼にとってはとても有意義な訪問だったようだ。どうしても訪問先を知りたい方は私のFacebookでチェックして欲しい。
さて、CD Oneの話はこのくらいにしておいて本題に入りたい。私はその翌週も精力的に7件の顧客訪問を新年の挨拶として行った。実に様々なクリーニング店の現状を見させてもらった。そこで現在のクリーニング業の実情を私はこのようにまとめた。
- 入荷点数はコロナ前に対して20%の減少
- 価格はコロナ前に対しておおよそ30%の値上げ(していないところもあるが)
- 点数の増加は望めない。だから単価上昇と利益率上昇を目指すところがほとんど
この方程式に合っているところは過去最高益に恵まれている。素晴らしい結果を出しているところは営業利益率で10%以上を達成している。しかしこの方程式に合っていない(特に値上げが成功していない)と利益率にとても苦しんでいる。どっちつかずの経営判断が原因なのだろう、と言わざるを得ない。
一方で、その減った入荷点数を増やそうと努力している会社もあった。ある施設のレンタル衣類、ユニフォーム、老人ホームの私物洗濯など色々あった。クリーニング工場は洋服を洗い、仕上げることで成り立っている工場なので洋服から脱却することは難しいと思うが、ドライクリーニングばかりがビジネスではない、という発想はすばらしいと思う。私は予てから「ドライクリーニングは富裕層に対するビジネス」と言い続けてきた。しかし、日本はその方程式に逆らうように中流層による需要がとても大きく、10億円以上の年商を上げたクリーニング店が日本全国で80社近くもあった時期もあった。中流層を顧客に迎えようとするならば、最も気にしなければならない条件は「価格」であった。故に多くの会社はワイシャツ100円、ズボン350円、ジャケット450円と低価格を打ち出し、非効率的な洋服は受け入れず、この3つのアイテムで勝負をしたのだ。私はコロナ前までの日本の時代を「売上至上主義時代」と定義していた。この時代に利益率を語る人はとても少なかった。むしろ売上が上がっていればなんとかなる、と考えている人々ばかりだった。それだけクリーニングを利用する中流層が彼らを潤わせていたのだ。この方程式は世界の流れを知る私からするととても非現実的に見えたし、我々メーカーはこの厳しい環境により更に精度の高い機械を生み出すことができたのだ。ちょっと宣伝をさせてもらえるならばSankoshaの品質基準は世界で群を抜いてトップだと言えるだろう。
しかし、この完全なる方程式がコロナによって完全に打ち壊された。中流層がクリーニングを利用しなくなったのだ。いや、利用し続けているが利用する頻度が大きく減ったのだ。クリーニング店は利益率を気にしなくても入荷点数が多いから「利益率は低くても利益額は大きい」という概念で事業を経営してきた。しかしその入荷点数が減った事によりその方程式は壊れてしまった。要はこの状況に柔軟に対応することができた会社が最高益を上げており、それに対応できない会社が赤字を計上することになってしまっているのだ。
さて、はたして10%の営業利益率を達成できている会社は日本全国でどのくらいあるだろうか?ここで一つ条件を入れておきたい。多くの個人店は「ウチのお店は上がっている」というのだ。しかし多くの個人店は自身の給与を収支に対して設定していないことが多い。要は売上から原価を引いて仮に人を雇っているとしたらその人の給与はその勘定に入れている。しかし自身の給与を設定してないことがとても多いのだ。「残ったら全て自分の給与」と考えているのだろうか?これでは商売にならない。あらかじめ、自分の設定所得を決めて儲かろうと儲からなかろうとその給与は取りながらそれでも利益を残す体質にしていく、というのが基本的な企業努力と言えるだろう。それで10%取れるのかどうか、を是非考えていただきたい。
一方でCD OneのRafiqはシカゴという大都市に居ながらとても価格を重視したクリーニング店経営を行っている。多少価格を上げても人々はついてくると思うのだが、彼は価格を最重要視している。ちなみにシカゴではワイシャツの価格がおおよそ$4.00が平均と思うが、彼のお店では$2.29で提供している。「どうしてそこまで低価格にこだわるのか?」と聞いてみると「価格を上げるのは簡単だ。しかし価格を上げるということは利用可能性のある人口を減らしてしまうということになる。利用可能性のある人口を減らすとそれこそ業界の衰退につながる。僕は絶対に利用人口を減らしたくないのだよ。だから価格にはこだわる。」と言っていた。彼はこれこそ業界に貢献することだと感じている。実際に日本にはこのようなスピリッツを持ち合わせている会社がまだまだ多く残っているように感じる。日本は超中流社会なのでお金持ちを相手にしてもその市場はとても小さく、中流層を相手にしたほうがビジネスを大きく展開することができると思っている。実際に年商10億円以上の会社はまだまだたくさん残っているのも事実だ。昔はその売上額で会社の優劣を判断しているようにも感じたくらいだ。「大きな売上のある会社=とても優良な会社」と判断していた人はとても多かったのではないだろうか。ただ、日本においては価格安で売上が10億円以上あったとしても10%以上の営業利益を出せているところは多くない。この考えではこれからの時代においてはジリ貧になっていくのは間違いない。やはりしっかり利益を出す事を考えて行くべきではないか、と思う。
2024年はなにか大きな変化が起こりそうな予感がする。建築基準法の問題、ドライクリーニングの衰退、TOSEIがエレクトロラックスに買収されたこと、水洗いの可能性などなど。何か新しい活動をするにもお金がいる。そこで利益がそれまでの事業でどれだけ出ているか?がポイントとなろう。私はどんな状況になっても柔軟に対応できるように利益だけはしっかり出せる体制づくりをしておくことをおすすめしたい。そのために価格の再検討、価格に対する原価率のチェックなども是非行っていただきたい。更に先の見えない世の中ではあるが皆さんの健闘を祈りたい。