3年ぶりのフランス

8月26日から私はフランスに旅することとなった。前日の25日は本社の新年度方針発表会があってアメリカからWesさんやBudさんが来日していた。彼らは27日の帰国予定だったので私も本来はその日までいるべきだったのだが、残念ながら出かけなければならなかった。理由は11月に行われるフランスの展示会について最終的な取りまとめをしなければならなかったからだ。元々はこれは海外営業の仕事なので杉島部長に行ってもらえればよかったのだが、彼は9月に行われる上海の展示会に合わせて中国のビザを申請していてパスポートが手元にないことからどうしてもこれは私が行かなければならない案件となってしまったのだ。考えて見れば私が最後にフランスを訪問したのは2020年2月、このときは西部のナントを訪問して現地の代理店と会ってこれからのフランス業界をどうしていくか?を話し合ったのを覚えている。ナントといえばロワール地方、ここはミュスカデというぶどうがとても有名で私も大好きな白ワインの一つである。訪問したついでにワイナリーもお邪魔したことをよく覚えている。このとき、すでに日本ではコロナが発症し、国内は騒然としていたが2月はまだまだ海外旅行が許されていた。コロナ前にヨーロッパ出張をした最後がこのナントだったのだ。なんとも懐かしい。

散歩の途中で通りかかったセーヌ川。人々の憩いの場になっている。遠くにエッフェル塔が見える。
エッフェル塔。やはり東京タワーとは一味違う。

 

それにしてもフランスという国は情緒豊かな国だといつも思わされる。歴史的建造物が多い。エッフェル塔などを見ると「本当にパリに来たんだ!」と実感させられる。人々の生活がとてもエレガントに見える。27日が日曜日だったので私は一人でパリ市内を1時間ほど歩いてみた。パリのレストランは必ず店の外にテラスがあってそこに人々が通りに向かって座る。そこでコーヒーやビール、ワインなどを昼間から楽しんでいる。日本人と違ってガブガブ飲まない。その一杯を会話しながらゆっくり楽しんでいるのがとても素敵に見える。観光客と地元の人とすぐに見分けがつく。きれいに着飾っている人は間違いなくフランス人だ。老夫婦が週末のドレスコードだろうか、きれいに着飾って手を組んで歩いているところなどはとても絵になる。そんな人々が入れるお店もいろんな所にある。それだけお店もおしゃれなところがたくさんあるのだ。

パリのレストラン。必ず外にテラス席があって人々がコーヒーやワインを楽しむ。
私も昼食を一人でとった。シャンパンにステーキ。
シーフードで絶対に外せないのがこのグレーエビ。頭をもいでそのまま食べます。白ワインとの相性バツグン!!
ムール貝の白ワイン蒸し。これも最高です!

 

ただ、パリは町が汚い。どうしてここまでゴミがそこら辺に散らかるのだろうか?人々に町をきれいにしようと思う気持ちがとても少ない。ちょうど訪問したときはすでに秋の雰囲気が漂っており、街路樹の葉もどんどん色づき始めており、多くの枯れ葉が通りに落ちていた。しかし誰一人としてお店の前のゴミや葉っぱを清掃してきれいにしようとする雰囲気がない。犬を連れて散歩していてもその犬の糞もそこら辺にさせたままで飼い主が責任を持つことがまずない。毎朝、市の清掃業者が出動し、道の端を水で流し掃除をしている姿を見る。一人ひとりがもっと清潔感を持っていればここまで清掃業者に市が費用を拠出することもないだろうに。日本のようなメンタリティがここにはないのがとても残念だ。しかしそれもそのはず。フランスにはフランス語圏のアフリカ移民がとても多い。そんな人々が集まっているようなところはちょっと不気味に感じる。もちろん、十分な教育を受けていない人が多い。夜中でも一目憚らず大きな声で怒鳴っていたり、大騒ぎをしていたり、と日本では考えられない光景が結構あるのだ。そういう人々は世の中の常識が通じないからゴミだって平気でそこら辺に捨てる。なかなか難しい国だと思う。

フランスのクリーニング業は基本的にアイロン台ですべてが完結する。我々は色々な仕上げ機を製造しているがフランスはあまりプレス機を使わない。かろうじて人体仕上げ機やパンツトッパーは使うことがあったとしてもズボンプレス機などのプレス機は使おうとしない。ラテン圏の特徴だろう。この傾向はフランスだけのことではない。北はベルギー、スペインやポルトガル、そしてイタリアから東へ向かってギリシャまで、これらの地域は基本的にアイロン台で仕上げを完結する。技術論としてはとてもおもしろい傾向だといえる。

とあるクリーニング店の工場。ズラッと並ぶアイロン台。フランスではこのアイロン台ですべてを完結するのが普通。


フランスのクリーニング業は日本と似ている。何が似ているか?というと「儲からない」という点で似ている。これは消費者のマインドによるものだろうか…。価格がなかなか上がらない。クリーニング店のメンタリティも問題であるが、とにかく儲かっているように見えない。儲からないから投資ができない。この負の連鎖は日本とよく似ている。結果として「お店が暗い」「お店が汚い」「お客様を迎えるような雰囲気がない」といわゆるプロフェッショナルさに欠けるという雰囲気を醸し出している。お店に投資ができないと利益はあげられない。「利益が上がったらお店の投資は考える」という考えの下では利益など絶対に上がらない。だからここは腹をくくって先に投資することが求められる。しかし日本でも同じだが、こちらフランスでもその勇気をもって実行する人はとても少ない。パリのクリーニング店の数が劇的に減少しているのも頷ける。ただ、現在生き残っているクリーニング店は競争が減った分だけ売上と利益が増加しているのだ。このタイミングでお店に対する投資もしてくれればいいのだが…。お店に対する投資の重要性を理解できなければ実行できるはずもない。どれだけの経営者が理解しているか?

最近パリで勢力を作っているコアラクリーニング店。ここも基本、アイロン台だけで活動している。
それでも今までのクリーニング店と違ってとてもきれいな店作りを目指している。今後の活動としてはとても重要な要素になる。

フランスのクリーニング工場を見ても水洗い可能衣類が増えていることがわかった。フランスはすでにかなりのユニフォーム大国ではあるが、一般衣類でも水洗い可能な素材がとても多くなってきたことがわかる。11月に展示会が開かれる予定になっている。2019年以来の開催なので4年ぶりであるが、今回はノンプレス(Press Free Finisher)を展示する予定にしている。どれだけの人々が興味持つか、は未知数であるが展示会場で最も注目を集める機械になることは間違いない。あとはしっかり準備して万全の状態で人々に見せることができるかどうか?にかかっている。しっかり準備していきたい。

とあるクリーニング店の工場。これだけの水洗い可能衣類が並んでいる。ユニフォームの請負もこれからは大いに選択肢に入る。

最後に。私がフランスを初めて開拓し始めた頃からずっとパートナーを組んでくれたJean Pierre Cardonさんと今回の旅で久しぶりに再会できた。彼と初めて出会ったのは1999年であろうか…。彼もすでに80歳ですっかり隠居生活を送っていたようだがとても元気そうで良かった。11月の展示会にもお手伝いに来てくれるとか。彼もSankosha大好き人間です。

Jean Pierre Cardonさんとパリ東駅近くで。1999年からの付き合い。とても元気そうで良かった!