久しぶりのロンドンである。最後に訪問したのは2024年9月だったと記憶する。3月8日にドイツ・フランクフルトに向けて旅立ち、その日の夕方の到着だったのでフランクフルトに一泊。翌朝はすぐに飛行機でイタリア・ボローニャまで飛んだ。私がイギリスを訪問したのはその翌日である3月10日である。イタリアはミラノ・リナーテ空港から飛び立ち、ロンドン・ヒースロー空港に降り立った。私のイギリスのパートナーといえばJimmy Holt氏、20年以上の付き合いである。イギリスの市場は我々二人で作ったと言っても過言ではない。ヨーロッパにおいて最も売上を叩き出す市場であり、アメリカや日本と極めて似た市場であるのがイギリスである。
今回はそのイギリスが劇的に変わっていることを皆さんに伝えたい。まずは業界の話の前に一般的な話しをしてみよう。現在、イギリスは国家プロジェクトとして電気自動車を推している。JimmyもLexusを持っているが100%電気自動車のLexusである。このモデルは日本にはない。イギリス自動車業界では電気自動車をラインナップに入れていなければ死を意味する。そのくらい、電気自動車においては「販売しなければならない」環境にあるのだ。国が変われば企業の取り組みも変わる、というわけだ。我々も最近、世界中の各販売エリアに合わせた機械づくりをするようになっているがまさに同じ考えだと感じた。実際にイギリスには中国ブランドの車がかなり目立っていた。


それ以上にびっくりしたことがあった。それは「電気自動車専用のチャージングスタンド」が存在していることだ。アメリカではガソリンスタンドの片隅に電気自動車用チャージステーションがあるのを見たことはある。しかし、電気自動車専用を見たのは初めてだ。たまたま目撃したのはガソリンスタンドブランドではお馴染みのシェルである。そのシェルがガソリンスタンドと同じようなレイアウトで電気自動車のためだけに提供しているチャージンススタンドがあるのだ。
同じように価格も表示されていたが一つは59ペンス、もう一つは73ペンスとあった。ちなみにその価格は1kW(キロワット)ということのようだが、その違いを聞いてみると59ペンスはメンバー価格、73ペンスは一般価格というわけだ。ちなみにJimmyが自宅でチャージするとその費用は13ペンス/kWということなので外でバッテリーチャージすることはとても高いということになる。それでもガソリン価格と比べてみると断然安いそうだ。最近はアメリカおイラン攻撃による世界情勢の緊迫によりガソリン価格は高騰する傾向にあるが、電気は基本的にそのような影響を受けない。しかも、Jimmyの乗っているレクサスの1kmあたりの燃費は4ペンスというので圧倒的に安い。昔、彼はレクサスのハイブリッドに乗っていたことがある。車種はGSだったがその時の燃費は1kmあたり25ペンスだったそうだ。このように考えると経済的観点からも人々がますます電気自動車に傾注していくことは必然のように見える。そのスタンドをよく見てみると併設の店舗内にコーヒーショップなどが設営されている。電気自動車はガソリンと違ってチャージに時間がかかる。その間にコーヒーショップなどで時間を潰すことが出来るような工夫もされている。たまたま通りかかったシェルにはCostaコーヒーが入っていた。このように物理的に電気チャージが出来る場所があることとその時間を紛らすための併設店などが存在する総合的なサービスがあるからこそ人々は安心して電気自動車に移行することが出来るのだろう。
残念ながら日本にこのような環境はないと言っても過言ではない。電気自動車の種類がとても少ないことやチャージングステーションが公の場にとても少ないことが理由となる。それまで日本では電気自動車の可能走行距離数がとても短いことなどが取り沙汰されてあまり人気が出なかったと記憶している。しかし、毎日500kmも走行することのない人々からすれば、現在の仕様でも十分に条件を満たしているといえる。

さて、クリーニング業に話しを戻してみる。イギリスではコロナを通じて個人店を中心に多くのクリーニング店の廃業を目の当たりにした。「さぞかし業界は衰退してしまっているのだろう」と思ったが、その感情を否定するのに長い時間はかからなかった。一番の存在は「I hate ironing」というアプリである。イギリスでは最近とても人気の出ているアプリである。これは最近流行りのアプリで引取とデリバリーの予約をしたら、ドライバーが取りに来てくれるというものである。サービス内容は二つあり、一つは通常のドライクリーニングである。料金も通常のクリーニングと一緒でワイシャツ一枚GBP2.90から、ズボン一枚GBP7.20から、という具合である。もう一つは洗濯代行業である。その中には下着を含めた日常の洋服やシーツ、枕カバーなどが入っている。5kgまではGBP19.60という料金で受け付けており、それ以上は1kgあたりGBP3.90の追加金額になっている。寝具類はまた別でベッドシーツセットや掛け布団などそれぞれの価格が存在している。アプリを開発している会社は純粋にアプリの運営だけを行っている。実際のクリーニング業は行っていない。そして、現存するクリーニング店がこのアプリの下請けクリーニング店ということになっている。そのクリーニング店が自前でドライバーを雇い、顧客のところまで洋服を受け取り、出来た洋服を届けるというシステムになっているのだ。顧客はそのアプリに従って洗濯してもらいたい洋服の種類と数量を登録する。引き取りに来たドライバーが専用ランドリーバッグを顧客に渡し、登録した洋服をその袋に入れて持っていってもらう、という仕組みになっている。基本的にドライバーの費用はクリーニング代に含まれているが、最低でもGBP20.00以上の料金にする必要がある。


ロンドン滞在中に私は2件のクリーニング店を訪問した。いずれもI hate Ironingアプリの下請けをやっているクリーニング店である。一つ目のお店はもはや自分自身でのショップは閉鎖しており、100%このアプリの下請けをやっている。二つ目のお店については元々の店舗は残っているが、その店舗の売上は全体のたった5%しかなく残りは全てアプリからの売上となっているのだ。結果として、このアプリは大成功を収めていると言える。ロンドンはコロナ後もしばらくはリモートワークが続いていた。企業は人々を出社させずに自宅で仕事をさせていた。その方が経費がかからないからだ。しかし、交通などのインフラがその傾向により経費過多となり疲弊してくる。たまらず政府はリモートワークを批判し、企業に出社させるように促しはじめている。人々が出社し始めると当然ながら外に出かけるための洋服が必要になってくる。もちろん、それに伴いクリーニングサービスも必要になってくるのだ。しかし、コロナを通じて多くの個人店や地元クリーニング店が廃業してしまっている。そこにこのI Hate Ironingアプリが大当たりしたのだ。コロナを乗り越え、このアプリの下請けとなっているクリーニング店は基本的に大喜びである。今まででは考えられない量の洋服を処理せざるを得なくなり、急遽工場スペースを拡張するなどして対応に追われている。






またワイシャツの量が徐々に復活し始めていると感じるそうだ。Sankoshaのワイシャツプレス機も元気に動いていたところを確認できてとても安心した。ちなみにイギリスは確実に人々の体型が変わってきている。昔はアメリカサイズのワイシャツプレス機が売れていたのに対して最近はヨーロッパサイズ(アメリカサイズよりも一回り横幅がスリムなタイプ)か日本サイズのプレス機が売れるようになってきている。同じ国でも体型やシャツの形などは変わっていくものだ、と改めて認識させられる。
久しぶりにイギリスにやってきたが、今回はかなり新鮮な訪問をすることが出来た。4月26日から2日間で2年に一度の展示会がAscotで開催される。これらの情報を基に当日の展示会でしっかりアピール出来るようにしていきたい。
