大晦日もあと数時間で終わる。毎年のことであるが年末年始はいつも自宅で過ごしている。毎年、多くの海外出張をこなしているので休みの時くらいは家でゆっくり過ごしたい。東京は比較的温かいところなのでこの時期でもゴルフはできる。私は昨日、今年最後のゴルフを楽しんだ。新年は3日に初打ちを行う予定である。
それにしても今年もある意味激動の年であった。まず我が社のことを振り返りたい。今年一番大きかった出来事はアメリカ・トランプ大統領による関税の引き上げである。それまで機械の輸出については0%、部品については3.5%の関税率だったのに対して8月から15%が適用されることとなったのだ。三幸社のアメリカにおける売上は会社全体の60%にのぼる。このままにしておくとアメリカ現地法人であるSankosha USAは現在の価格に15%分の関税を払わなければならないのだ。結果としてアメリカの機械価格が15%値上がりすることとなってしまう。我々にとってアメリカはどうしても守らなければならない市場である。そこで兄である裕介社長は「9月からのアメリカ向け販売においては一律10%価格を下げる」と宣言したのである。まだ工場も含めて10%も価格を下げる準備などできていない。会社に動揺が走った。
結論から申し上げるとこの状況下においても三幸社は黒字を計上することができた。すごいと思った。社長は「当然!」という顔をしていた。我々はコロナ後から始まったインフレに乗じて様々な価格改定(値上げ)を行ってきた。価格を上げれば収支は取れる。そうすると社内では努力を怠るようになってくる。ウチの社長はそれをすでに工場の当時の状況から確信していた。彼は毎日会社内を巡回する。そこから社内に存在している「無駄」があることを確認していた。その無駄がどれだけ会社のお金を使っているのか?を指摘し始めた。例えばパレット。あちこちに不必要なパレットが置かれていた。そこには仕掛部品が置かれている。それはいつ使うのだろうか?もちろん、生産スケジュールがあるから作ったはずなのに…。社員にとって「都合の良いレイアウト=余分なものが滞留する場所」という論理はどの時代でも同じなのだろうか…。これらの無駄を徹底的に削ぎ始めた。1ヶ月も経った頃に工場を改めて見直してみるとどれだけのスペースが空いただろうか?会社の業績には「利益率」という言葉と「キャッシュフロー」という言葉がある。多くの人々は「利益率」について意識がある。しかし「キャッシュフロー」については意識が薄い。キャッシュフローとは会社のお金をモノやサービスに変えてお客様からお金を支払ってもらってそのお金が戻ってくるまでの期間を言う。しかし、多くの人々は「安く買うこと=利益を出している」と勘違いしている。安く買うために不必要な量を買っている。その残りはいつ使うのだろうか?それは会社のお金を使ってモノに変わっているのだ。それがたとえ安くても1年後に使うものを誰が買うだろうか?このような考え方がおおよそ会社勤めをしている人にはないのだ。兄はこれを見事に見抜き、社員に大いなる改善を求めた。結果としてそれまで攻められるはずもないとても価格重視をする地域である東南アジアや東ヨーロッパのような地域に機械を販売できる素地ができた。日本はすでに高コスト国になっているが、考え方を変えることによってまだまだ発展途上国に向けた機械販売はできるのだ、という概念を作った。そのうち日本向けやアメリカ向けの機械も値段が下がるのでは?と考える。お楽しみに!
次に業界を振り返りたい。日本の業界は本当に落ちぶれたと思う。ほとんどのクリーニング店がそれまでのドライクリーニング業に相変わらずしがみついている。新しい業態への変化を全く模索しようとしていない。むしろ、暑い夏はとても長くなっているときに何もやることがないのにも関わらず、冬になれば集まってくるドライークリーニング衣類の量にあの時の夏を忘れたが如くに安心しまくっている。これでは業界が駄目になるのは当たり前だ。今までは春の繁忙期に大量の洋服を集めて売上に変えた。その売上があったから夏の閑散期は何も手を打たなくてもなんとか凌ぐことができた。しかし時代は変わった。気候変動、政府によるドレスコードの変化、そして縫製業界による素材の変化(ポリエステル混紡材)などの要因で業界は一変している。もはやドライクリーニングにしがみつく時代は終わっている。世の中は水洗い可能衣類にあふれている。しかし我々ときたら相変わらずドライクリーニング頼みである。世の中の人々は我々の店に期待しているはずがない。我々は新しくならなければならない。
どうやって新しくなるか?これは色々な考え方があるが私の考え方は水洗いを通じてもっと多くの洋服をお店に出してもらえる政策を作ることだ。この論理は日本市場においてであるが、日本人は決してお金持ちが多くない。そして日本人はお金持ちが大嫌いである。そのくせ、日本人は誰よりもお金持ちになりたいという願望がある。この考え方が人々をお金持ちにさせない。結果として誰もが勝者にならない社会構造を作っている。故にクリーニング業界はドライクリーニング業界にしがみつき、上がっていく原材料や人件費に従って値段を上げていく、という考え方では業界を衰退させる以外のなにものでもない。故に価格はこれ以上上げることはできない、とするならばボリュームを集める以外にはないのだ。それを求めるのは現代は「水洗い可能衣類」なのだ。それは具体的に言うとシャツ類やポリエステル混紡材で縫製された洋服ということになる。ここらへんをもう少し業界人は考えてもらいたい。
2026年は更に暑い夏が長くやってくると予想する。それに伴って人々はもっとカジュアルになる。その洋服をどうやって集めるのか?この状況で「集めてみたい!」と考える人と「無理に決まっている」と最初から諦める人がいる。私は諦めている人を助ける気はない。「集める!」と決意した人々に大いなる応援を提供したいと思う。このコラムを読んだ方々においては是非真剣に考えてもらいたい。もし、直接話しを聞いてみたい、という方がいらっしゃるようであれば私は喜んでお邪魔してこの論理を丁寧にお伝えしたいと思う。いずれにしても夏は閑散期ではなく繁忙期に変えなければ我々の未来はない。そこで必要なのは「水洗い」なのだ。是非、正月という時間を使ってお酒を飲みながらゆっくり考えてもらいたい。
皆さん、良いお年をお迎えください。業界が好転することを願いながら今年最後のコラムを終えようと思う。来年も多くの情報をお届けしたい。お楽しみに!私もワイン飲んでます。
