中国展示会、そしてFornet

8月2日から3日間のスケジュールで上海の新国際展示場を利用してTexcare Asiaが開催された。私はその展示会に参加するために7月31日に羽田空港から上海に飛んだ。東京は未曾有の暑さと湿度の高さでもはや人間の住むところではないくらいの状況だったが、上海に到着してびっくりした。なんと上海の方がもっと暑いではないか!湿気も東京より更に高い。一体、地球はどうなっているのだ?と問いたくなってしまう。地球温暖化というのはこういうところにも影響を及ぼしている。気温40℃、湿度もおおよそ100%というもはや人間の住むところではない環境になってしまっている。私は設置作業をしなかったが、社員たちは冷房もかかっていない展示会場でフラフラになりながら設置作業を行っていた。今後は展示会開催業者にはこの状況をもう少し考えてもらわなければならない。これでは人が死んでしまう。上海はそのくらい危険な天候であった。

今回は展示会に参加することが主たる目的ではあったが、もう一つ目的があった。それは日本のある会社を中国の最大クリーニング店であるFornetと引き合わせることであった。8月1日にその会社のメンバーをFornetにお連れしたのだが、改めてFornetの凄さを彼らを通じて感じることとなった。4月の中国訪問時にFornetを訪問した話をブログに載せたのは記憶に新しいだろう。(詳しくは3回前のブログをご参照いただきたい)その時に品質を最重要視しているコメントを紹介したことがあったが、訪問した日本のクリーニング店は一様に彼らの清潔感に脱帽していた。とにかくホコリが天井も含めて全くないのだ。そして洗濯機の横にある洗剤や仕上げ剤を保管している棚がまたとてもきれいなのだ。工場管理の人々は「あり得ない!なんでこんなキレイなのか?」と舌を巻く。

ある商業施設の中にあるFornet。外からでも清潔感がとてもイメージできる。


会社の文化はある意味こわい。人々が当たり前としてやっている事が別の人々はそれをすごいと思う。一体、どうやってこの文化の差がやってくるのだろうか?私は世界中のクリーニング店を訪問するが、ここまで工場や作業場の清潔感を保っている会社はほとんど見たことがない。そんなキレイな状態を続けている工場の経営状態の悪い会社を私は見たことはない。キレイにすればいい、というわけではないが、汚れた洋服をキレイにする工場が汚くて本当にキレイになるのだろうか?と疑問を抱くことはよくある。結局は会社の経営者もしくは経営チームが工場をどのように考えているのか?なのだと思う。


その日は合同の夕食会となった。中国と言えば白酒(バイチュ)である。これがとても危険だ。知らない方々のために説明しておくと白酒は中国の伝統的な蒸留酒で52度から58度が一般的なアルコール度数のあるお酒である。これを小さな盃に入れて目の合った人と一気に飲む、というなんとも伝統的な飲み方なのだが…。私はどういうわけかいつも一番のターゲットになってしまう。今回はFornetと日本のクリーニング店の間を取ったこともあって両方から攻められる。私はお酒が嫌いではないので調子に乗ってホイホイとやってしまう。途中からワインの一気飲みまで始まってしまい、気づいたら何杯やったのだろうか…、いろいろな人と軽く30回はやったように思う。まだ展示会が始まっていないというのにとんでもない飲み方をしてしまった。結末を申し上げると帰りはどうやって帰ったのか覚えていないし、翌日以降はこのお酒がずっと残ってしまい、展示会中に何本もポカリスエットを飲み続けることになったのだ。お酒はほどほどに飲むのが一番良い、と改めて反省することになってしまった。

これだけの人数を1つのテーブルで囲んで夕食会。とても盛大に催してくれた。
左の男性は白酒、右の女性は赤ワインを持って一気飲み。中国の習慣?これは本当にヤバい!(笑
食事会を終え、帰りがけに歩けずに近くの芝生で倒れて締まった。(右)ちなみに私はぶっ倒れたのも覚えていなかった…。恐るべし中国!

 

さて、話を展示会に移す。その翌日から展示会が始まった。3日間の展示会であるがなんという暑さだろうか。会場は多少エアコンが効いているが、それでも暑い。ちょっと外に出ると1分もしないうちに汗が自然と出てくる。ひどい環境だ。中国の展示会の特徴は初日が最も忙しい。人がどっと押し寄せてきて大変な騒ぎになる。我々は10年以上展示会場の入口に最も近いところにブースを置く。これは主催者が我々にその場所にいてもらいたい、という意志があるからだ。ハイテク機械を一番手前に置くことで展示会のイメージを保ちたい、という考えがあるようだ。今回は中国に初めてノンプレス(Press Free Finisher)を紹介した。中国のドライクリーニング業界はこれからの業界であるが、日本やアメリカと同じ道を歩むとは限らない。中国においても現在世界中に押し寄せている素材の変化の流れは同じように起こっている。ホームクリーニング業界がこれからどんな道を歩んでいくのか、はわからないが、すでにユニフォームなどのランドリー業界は見事にこのノンプレス(PFF)に反応していた。仕上がりの良さを驚きを持って見ていたようだ。これは大当たりと思った。

上海の新国際展示場。この日も40℃を超えた。
ホール1のレイアウト。図の右下がメインエントランス。そのすぐ上に我々のブースがある。
三幸社ブース。いつもであるが展示会場で最も忙しいブースになった。

一方、既存ビジネスについてはワイシャツ仕上げ機で新モデルを発表した。それは日本のボディよりも更に小さいボディにした中国用モデルである。中国では女性のシャツが男性のように作られている傾向がある。普通女性であればブラウスであるが、中国の女性用シャツはワイシャツと同じ作り方になっている。しかし女性は男性よりもスリムなので日本のボディではかからないワイシャツがたくさんあることから敢えて開発したモデルである。これも大いに注目を浴びる結果となった。

新型ワイシャツ仕上げ機に人々が群がる。スタッフも機械を動かし続ける。

 

その他は何故か人体(Form Finisher)の人気が高い。この機械は動かしている限りずっと人が群がる。人体に新モデルはなかったのだがずば抜けた人気があることを改めて証明した。

根強い人気の人体仕上げ機。動かしていると必ず人が寄ってくる。質問も多い!

 

それからもう一つ開発したのはボイラー内蔵型モデルである。中国では各都市にガスのインフラが用意されていない。日本ではガスや灯油のボイラーを設置することが当たり前になっているが中国ではそのどちらも難しい条件がある。結局、唯一使えるのは電気ボイラーである。しかし、電気も各建物でその供給量が限られている。なかなか工業的にできない現状があるのだ。故に彼らが欲しがるのは各機械に蒸気発生器が内蔵されているモデルなのだ。これがあるのとないのとでは大きな差になる。我々はそんなモデルも開発してきた。後で理解した話であるが、これらのモデルはヨーロッパでもかなり重用されるとのことだ。日本でとても売れるからと言って同じモデルを世界に持っていって売れるとは限らないのだ。それぞれの地域にはそれぞれの事情があって、その事情を理解した開発をしなければ機械が売れることなどありえないのだ。それを旅して、顧客にあって話を聞いて、現状の工場を視察して状況を確認する、これがあるから開発に進める事ができる。改めて「売る」ということはとても難しいことだと感じた。

中国がこれからどうなっていくのか、はとても興味深い。現在の中国は決して経済的に余裕があるわけではない。インフレが止まりデフレがスタートしている。人々は決してお金を使おうとはしないだろう。そんな中でクリーニング業界はどうなっていくのか?私はこれからも頻繁に中国には行くことになるだろう。引き続き、関心を持って見つめ続けていきたいと思う。

それにしてもあの飲み方は本当にまずかった…。