Sankosha Europe開設へ

6月18日の朝、私は羽田空港ターミナル3に来ていた。今年ですでに9回目の海外出張である。しかし例年に比べると今年の出張回数は少ない。なぜならば海外から日本にやってくるお客様がとても多いからだ。これは円安ドル高という為替状況に起因する。日本人にとって海外旅行はとても割高に感じる。この日、空港の銀行でユーロに変えたらそのレートはなんと¥172.28だった。なんという高水準だ!我が社ではそれまでユーロの基本販売レートは¥120.00で行っている。それが現在は¥170を越えているわけだからどれだけ円安なのか、想像がつくだろう。一方で海外からの旅行客にとってはこれが大きな割安感につながる。例えば¥30,000のホテルを泊まるのに昔のレートだと€250.00だったのが現在だと€176.00になる。どれだけお得に泊まれるのか容易に想像がつくだろう。最近は毎週のように海外から来客があるのでその都度対応しているのだ。これも現状なのだ。

さて、今回も海外営業のロバートが同行している。彼は私と一緒に旅行するのが大好きだ。なぜならばJALのファーストクラスラウンジに入れるからだ。JALファーストクラスラウンジは朝から握り寿司のサービスがある。板前さんがきちんと握ってくれるのが嬉しい。しかも今週は本マグロの中トロとイカの寿司である。私も堪能したがロバートは一体何貫食べたのだろうか?これが旅の一つの楽しみであるならば結構なことだ。これからもっと一人で旅しなければならなくなるのだから。少しくらい旅の楽しみを見つけてくれるのはこちらとしてもありがたい限りだ。

ロバートはラウンジに入るとすぐに寿司を頼む。JALのこのサービスはすごい!

 

今回、我々はドイツ・フランクフルトに飛んだ。目的はドイツの代理店Ziermann(ツィアマン)がSankosha Europeを開くことになったからだ。我々は彼らにSankoshaの包括的な販売権とサポート活動を委ねることとしたのだ。今回は彼らが取引している顧客を相手に個展を開く事になっていて、そのタイミングでSannkosha Europeのお披露目会を企画している。本社の人間として我々は彼らの個展に参加することとなった。

ここでZiermannという会社を少々紹介したい。私がこの会社と知り合ったのは2004年のTexcareである。社長であるFrank Ziermann氏は私の一つ年上で歳もとても近いことから一気に仲良くなり、2004年からドイツの南部をテリトリーに代理店になってもらった。Ziermannという会社は彼のお父様の時代から中古機の販売業者としてとても有名で主にドイツのドライ機メーカーBoweの中古機を中心に世界中に販売していた。しかしそれだけでは難しいと感じていたのか、息子のFrankが我々に代理店活動を希望してきて関係がスタートした、というわけだ。その5〜6年後にはドイツ北部も含めてドイツ全体の代理活動を行うようになっていった。
そして2015年に彼らに大きな転機がやってきた。それはドライ機メーカーBoweを買収することとなったのだ。1970年代には世界のNo.1メーカーとして君臨していたBoweはその後中国のSailstarグループに買収されてその座を降りることとなった。そして2015年にSailstarグループからも売却されてその姿はもはや見る影もない。Frank Ziermannがその状況からブランドを買収し、自らメーカー的立場に大変身したのだ。ちなみに現在、Boweというブランドは見事に回復している。品質的な見地から考えるとBoweは世界一の水準ではないか、と推測する。
しかしドライクリーニングは世界的衰退を迎えることとなる。すでに欧米では衰退し続けていたがコロナを通じて一気に衰退度が激しくなった。世界中のドライクリーニング需要がなくなった。Frankはドライ機の製造販売だけではやっていけないと悟る。そこに我々のオファーがあったと言うわけだからなんというタイミングだろうか。

私の隣がFrank Ziermann。身長は207cm!そのとなりがSankosha USAのWes Nelson。そしてロバートと私の兄。

 

次にどうして我々が彼らに販売権利を委託したのか、をお話ししたい。現在のヨーロッパは実に多民族による多言語で形成されている。EUヨーロッパ連合(一部加盟していない国や地域はあるが)というエリアがヨーロッパであると一括りに言える。しかし、それぞれの国はとても小さい。また各国で使われている言語はそれぞれ全く違い、生活スタイルも全く違うのだ。アメリカのように東から西まで飛行機で5時間飛んでも基本的に同じ社会、というわけではない。そして何と言っても英語が通じない。フランスを例に挙げてみる。フランス人は全く英語を話すつもりがない。我々日本人がフランス人とどうやって通じ合うことができるのか、というと基本的に彼らが英語を話してくれない限り不可能だ。日本人の英語を話す率は決して高くないがフランス人の英語を話す率はもっと低い。そしてフランス人はフランス語にとても誇りを感じている。しかし、お隣のドイツだとフランス語がわかる人はいるのだ。だからZiermannだとどうにかフランスとの会話は成り立つ。ヨーロッパは多言語対応に対して柔らかさがある。私が海外営業を始めてすぐにヨーロッパ販売に意欲を燃やしたが、結局は大失敗だった。こんなことも知らずにやっていたのだから失敗することは明白だった。今だから「あの時はどうして失敗したのか?」は説明できる。今回はZiermannがやってくれることで土地柄も良いし、言語対応もできる。彼の子供たちも全員が会社に入って来ているのでこれから30年間は安定した活動ができるようになる。あとはヨーロッパで必要とされている機械やシステムを我々が開発することができるかどうか?にかかっているわけだ。

Ziermannという会社はドイツの南西部、温泉で有名なBaden-Badenの郊外、Sasbach(ザスバッハ)という町にある。人口4000人程度のとても小さな町である。いわゆる田舎なのだが、私はこの地を訪問するのが大好きだ。なぜならばこの地域はワインで有名だからだ。このBaden地方はピノ・ノワール種で有名なのだ。会社から10分も車で走るといくつものワイナリーにたどり着く。もちろん、今回も一つのワイナリーを訪問してワインを楽しんだ。ヨーロッパを旅する一つの醍醐味はワイナリー訪問だろう。ワイン大好きの私にはZiermannを訪問することは大きなモチベーションになっている。

Sasbachの郊外。たった5〜10分のドライブでこんなブドウ畑がすぐに見える。
今回はAlde Gottというワイナリーを訪問。色々試飲させてもらいました!

 

さて、久しぶりに彼らの事務所を訪問した。建物が一階増えて4階建てに変わっていた。彼らなりに自社に投資している姿がよく出ている。そして社屋の外壁にはZiermann、Bowe、そしてSankoshaのロゴが飾ってある。まるで「Sankoshaでやっていくぞ!」という意志がにじみ出ているように見える。頼もしい限りだ!そして社内を見て回るとすでに一階にはBoweのショールームがあり、二階にはSankoshaのショールームができている。実に17台もの機械が設置されている。もちろん、ノンプレスも設置されている。2000年から始まったヨーロッパ販売で初めてこんな立派なショールームができた。純粋に嬉しい。これならヨーロッパ各地から機械を見に来てもらうことができる。

4階にかさ上げされた新ビル。4階に研修センターなどを作った。外にはSankoshaのロゴも!
一階のショールーム。Boweブランドのドライ機がズラッと並ぶ。
二階のSankoshaショールーム。ノンプレスも含めてほぼすべてが展示してある。

 

そして6月21日、22日と2日間にわたって個展が開かれた。洗剤メーカーや同業他社も呼んでとても立派な個展になった。Sankoshaの代理店らも数多く来社した。彼らからすると今まで直接取り引きしていたのだが、これからはSankosha Europeを介しての取引となる。それにより価格が変わるのではないか?とか今後のサポートはどうなるのか?など気になることがあるようだが将来のことを考えて取った方向性なので彼らには従ってもらうしかない。今後Sankosha Europeが部品在庫をどれだけ持てるようになるか、が存在意義を大きくしていくカギになるだろう。我々も頑張ってサポートしていきたいと思う。

イギリスの代理店ParrisianneのJimmy夫妻と。
デンマークの代理店Madsen夫妻と!
オランダの代理店PolymarkのFrans Sijmonsと!

 

とても良いオープニングだったと思う。しかし、勝負はこれからだ。我々が作ったSankosha Europeが人々に愛される会社になっていくかどうか、は我々次第だろう。次の大きなイベントは11月に開催されるTexcare Frankfurtである。しっかり準備し、多くの人々に安心して購入してもらえるように努力していきたい。