4月24日、私は4年ぶりの韓国訪問のために羽田空港にいた。韓国といえばお隣の国でとても距離的には近いが、最近までのムン・ジェイン政権の影響でとても心理的に行きづらい国になってしまっていた。もちろんコロナも影響していたから物理的に行けなかったのだが…。アメリカに行くのとは気分的に随分違う。今回は28日までの5日間の旅である。
金浦空港に着いた。なんとなく昔のままのイメージのように感じたがところどころリノベーションしているような感じもあった。入国審査に向かって歩いていくとなにか書類を渡している。「何も聞いていないし知らない」ということで一気に緊張が走る。機内でも教えてくれなかったのだが結果として1枚の紙にワクチン接種の有無と滞在先などを書けば大丈夫、都の事で一安心。税関も無事に通過して出口手前の換金所に寄った。昔であれば韓国の空港で換金したほうが日本の空港よりも全然安い、という経験があったので今回も期待したのだが逆に韓国の換金所の方が高かった。既に空港だけで色々な変化にショックを受けながら外に出た。すぐに代理店のキムさんが出迎えてくれた。合流したのは夕方6時、ここから一気にテジョンという町に向かった。今回は4日間の旅であるがソウルから一気にテジョン、プサン、ジンジュ、テグを回ってソウルに帰ってくるという長い車の旅である。テジョンまでは2時間半、しかし現地でお客様らが我々の到着を待っていてくれる、というのである。我々の到着は夜の9時近くになってしまうのだが、それでも待っていてくれるのは嬉しい限りである。
ホテルにチェックインしてから急いで合流場所のレストランに行った。既に焼肉を焼きながら待っていてくれた。本当に懐かしい!かれこれ4年ぶりである。早速食事を取りながら昔話で盛り上がる。翌日からの現地訪問がとても楽しみになってきた。一体、どのくらい変わったのだろうか、と。美味しい食事をすっかり御馳走になってから歩いてホテルに帰った。そのときにちょっと気になったことがある。やはり韓国は幹線道路であっても結構端が土でいっぱいなのだ。日本の道路はここまで汚くない。韓国でスニーカーのクリーニングがここまで流行るのはやはりこういうところも影響しているのだろうか?しかし韓国人の方が諦めずに続ける力があるのか?と思ってしまう。日本でも一部のクリーニング店がスニーカークリーニングを諦めずに続けているが、もう少し全体でこういう取り組みはするべき、と強く思う。ドライクリーニング神話は既に崩壊しているのだから。
さて、翌日からなんと3連チャンのゴルフ外交が待っていた。今まで韓国でゴルフをやったことはあったがこんなにゴルフをやることはなかった。韓国のゴルフは日本とは全く違う。まず午前の部と午後の部というのがあって日本のようにハーフで1時間も待たされることはない。ハーフを終えてちょっと飲んだり食べたりすることはできる。ただ、とても効率的な運営ができていて日本はちょっと見習ってもいいのではないか、と思った。日本のダメなコースは詰め込むだけ詰め込んでハーフで3時間もかかる。そして食事に1時間以上もかけてまたハーフで3時間。誰も「次はもうやりたくない!」と思ってしまう環境である。もっと顧客の気持ちに寄り添った運営をすべきだと思う。
余談はこのくらいにしておこう。今回訪問したのはワールドクリーニング、クリーンエース、ネットクリーニングの工場と3件だった。クリーントピアの本社は訪問したのだが、工場を訪問することはなかった。あまりある会社のことばかりを書くと色々問題があるので今回も韓国全体で起こっていることを中心に書いてみたいと思う。
まずびっくりしたことはダウンのクリーニングだった。びっくりするほど出ている。特にワールドクリーニングのダウンの量は尋常じゃない。なぜここまで集まるのか?これは価格とファッションの傾向のような気がした。まず価格から考えてみる。日本のダウンのクリーニングは2000円から3000円で提供しているところが多い。結果として高級ダウンはクリーニングに出てくるが安いやつはなかなか出てこない。一方で韓国の価格は800円から900円、とてもリーズナブルである。これは人々が出す理由になる。もう一つの条件は気候である。韓国は日本よりも寒い。冬になるとジャケットではなくダウンで出勤する人がとても多いと聞く。国民の1人あたり3枚から5枚のダウンを持っていると言われているそうだ。こうなるとダウンはジャケットのような扱いになる。価格とドレスコードの二つが重なってここまでの需要になるのだろうか…。とても羨ましい市場に見えた。
後、布団のクリーニングも需要を後押ししている。結局、韓国の繁忙期はスニーカー、ダウン、布団の3つで成り立っているようだ。しかしスニーカーを除いては冬に成り立つ商材である。夏には成り立たない。夏の売上はどうするのか?これに関しては彼らにもなかなか答えは見つかっていないようだ。しかし日本は冬の商材といえば布団しかない。ダウンは多少売上の要素にはなっているようだがそこまでではなさそう。韓国の方が一生懸命集めようとしている姿が至るところで見える。日本はもっと見習うべきである。
もう一つ大きな事を見つけた。それは韓国のワイシャツについてであるが、日本のワイシャツに比べて袖の剣ポロがとても短くなってきている。これはクリーンエースが弊社の新型ワイシャツ仕上げ機をお買い上げいただき、試運転をしに行った時の話である。最新モデルのカラーカフス仕上げ機LP-6000Jにカフスが入らないというのである。
「そんなはずはない!」と最初は疑って見たのだが、たしかに実際に入らないワイシャツがある。よくよく確認してみると剣ポロが短くなっていたのだ。女性のブラウスにはこの傾向はよく見受けられる。しかし男性のワイシャツがここまでブラウス化しているとは驚きであった。
およそ10年前だろうか、イギリスを始めとした欧州がスリムカットシャツが市場を席巻した。スリムカットシャツを見たときに私は「ワイシャツのブラウス化」をイメージした。当時、ブラウスをもっときれいに仕上げるためにどうしたら良いか、を考えていた時期だった。大きなポイントは
1. 剣ポロがとても短く通常のカラーカフスプレス機では対処できない
2. スリーブの角度がとても深いのでその角度に対処できる機能が必要
大きくこの2つであった。どうしてスリーブの角度が深いのか?というと脇から下への線を綺麗に見せるためである。男性のワイシャツはスリーブの角度がほぼない。要はTの形をしているのだ。なぜTの形をしているか、というとワイシャツを着たまま肉体労働をすることもあるからだ。腕を上下させる行動には脇から下への生地に余裕がなければすぐにズボンからはだけてしまう。その代わり見た目はあまりかっこよくない。一方で女性はブラウスを着て肉体労働をすることは基本的にない。それ以上に女性は見た目の美しさを気にする。これがワイシャツとブラウスの基本的な構造の差である。しかし最近はワイシャツにおいてもこのブラウス化が進んできたという傾向が顕著になってきたのだ。スリムカットワイシャツの登場、そして剣ポロの長さが短くなったシャツの登場、これらを見る限り男性のワイシャツももっとスタイリッシュを目指している一つの傾向なのだろうか。確固たる答えは分からないがこれは一つの傾向として捉えておく必要があると認識した。
余談だがこの出張の後に日本国内を出張したときに日本のワイシャツを同じように検証してみた。日本では韓国ほどの傾向はみられなかったものの、剣ポロの長さが短くなっているワイシャツが多数あることを確認した。日本でも今後、韓国と同じ傾向が見られる可能性は大いにあると思った。
結果としてクリーニング店では現在保有しているカラーカフスプレス機が活躍できなくなる可能性が出てきていることに関して警鐘を鳴らしておきたい。是非ご自身の受け付けているワイシャツの剣ポロの長さを再度確認しておき、その備えをしておくことをおすすめする。
今回も多くの人々に出会い、とても楽しい時間を過ごすことができた。ただ今までとは違うことがやはり韓国でも起こっていた。面倒くさがらずにあるき続けることはとても大切だな、と改めて感じた韓国訪問だった。