4年ぶりのミラノ展示会

10月18日、私はまたまた羽田空港に来ていた。先週の10月10日から4泊6日でアメリカを訪問していたばかりだったのだ。目的はアメリカのお客さまに頼まれてプライベートの勉強会グループに対して1時間ほどの講演をすることだった。私は地球温暖化とそれに伴うドレスコードの変化から世界的にドライクリーニングをメインでやっていくことに難しさを感じていた。それでは何をやっていけばいいのか?ということについて講演してきた。聞いていただいた皆様からはお褒めの言葉をいただけたので目的は達成され、心地よい帰国をしたのが15日だった。日本の滞在はたったの3日間、私はすぐにイタリアに出かけなければならなかった。目的は4年ぶりに開催されるExpo Detergoミラノ展示会に出展者として参加するためだった。今回はパリ経由でミラノに入るのだが、とにかくヨーロッパに行くのは遠い。ロシアとウクライナの戦争により日本の飛行機は基本的にロシア上空を飛ぶことができない。結果としてヨーロッパ行きはアメリカ・アラスカ州の上空を通過し、北極圏、グリーンランドを経由してパリに到着する。このフライトでざっと15時間はかかる。そこから経由便を利用してミラノに入るのだ。コロナ禍では海外旅行など夢のまた夢だったがすっかり海外に出るのが当たり前になった。この旅が今年8回目の海外出張だ。リナーテ空港にはイタリアの代理店のMarcoが迎えにきてくれた。我々はさらにANAで来た社員二人を待って指定のホテルに移動した。

いつもながらJALで移動!

 

翌日から早速設置を開始。と言っても前日から作業を開始してくれた先発隊の3人がなかなかの仕事をしてくれていたので思った以上に進んでいた。今回は初めてブースにワイシャツプレス機を置かなかった。我ながら思い切ったことをしたと思った。Sankoshaといえばワイシャツプレス機と世界中で連想される。ここイタリアでもSankoshaブランドは有名である。イタリアには競合の仕上げ機メーカーが10社以上はあるだろう。その中でもトップメーカーは常にSankoshaの最新モデルを意識しながら機械開発を行っているのだ。今回の展示である意味びっくりしたことだろう。

既に良いところまで設置が進んでいた。
設計の野澤くん。今回のレイアウトは彼が書いてくれた。

 

さて、それでは何を展示したのか?といえば「ノンプレスフィニッシャー(英語名はPress Free Finisher)」と「オートフォルダー(英語名はUniversal Folder)」の二つである。あと半自動包装機は出したが実際にこれだけである。最初にアメリカでの講演内容を軽く記載したが、これからどんどん減りゆくドライクリーニング衣類にいつまでもしがみついていたらどんどん厳しくなっていくだろう、という予想で今回はランドリー衣類をターゲットにできるモデルで勝負したのだ。
ただ残念なことに今回持ってきたモデルは全部日本仕様でまだCEマーク(ヨーロッパの工業規格。これを取っていないとこちらでの販売はとても危なく、事故を起こした場合は多額の賠償請求を求められる)を取得していないのですぐに販売できるわけではない。しかしこのような機械がどれだけの人々に受け入れられるのか?を調べるためには持ってこなければわからない。今までの展示会と違って今回はリサーチを含めた展示、という意味合いがとても強い出展なのである。

2日間の設置作業を終えてなんとか設営が完了し、展示会初日を迎えることができた。洗濯機もドイツの代理店のおかげで設置完了。そして現地の薬品メーカーの協力をいただき、仕上げ剤をいくつか使わせてもらうことができた。これらを使ってどれだけうまくオペレーションができるか?これが今回のノンプレスフィニッシャーの問題であった。通常であれば設置が完了すれば絶対に大丈夫!という自信があったのだが今回は全てが初めての試みなので不安だらけであった。

 

ブースが完成!皆の力でなんとかなった。

 

仕上がり風合いでとても大切なのが仕上げ剤の活用である。日本ではいくつかやってみたのだが実際にこの展示会できちんとできるかわからなかった。提供してもらったものの中から最初にBuefaの仕上げ剤を使ってみた。しかしなかなか伸びが良くない。後で聞いてみたら柔軟剤であることが判明、そして次にKreusllerの仕上げ剤を使ってみた。これは既に本社のショールームでも使用経験があったので気楽ではあったがちょっと以前からちょっと硬めなのが気になった。最終的にはこの二つを50:50で使用してみたらどうだろうか?ということで試したら見事に伸びた。ということで展示会の運営はこれでいこうということとなった。

さて、会場はオープンしたのだが最初の2時間はなかなか人が集まらない。不安が募る。「もしかしたらワイシャツプレス機を持ってきた方がよかったのだろうか…」と思い始めた。そうすると少しずつ人々がノンプレスフィニッシャーの周りに集まり始めてきた。一部のお客様がまだ仕上げ工程に入っていない洋服を触って「濡れてるぞ!」と騒ぎ始める。そして出てきた洋服を見て見事に乾いているだけでなく、シワが完全に伸びている仕上がりに全ての人がびっくりしているのだ。そして人々が仕上がった洋服を手に取って笑顔で驚きながら話をしている。この光景を見てこの展示会の成功を確信した。あとは人々が勝手に騒いでくれるわけだから我々がやることはこの機械をどんどん動かすことだけだった。しかし一つ問題があった。それはボイラー。今回お世話になったボイラーは最大で5kgしか上がらない。この機械は最低6kgが必要なのだ。結果として少しスピードを落として実演するしか手がなかったのだがなんとか実演に値する仕上がり風合いを出すことができた。

おかげさまで大盛況。みなさん興味津々でした。

 

これを見た人々は他社ブースのトンネル仕上げ機へ赴く。そこで同じことをやってみてくれ!と依頼するわけだ。他社メーカーの仕上げ機では我々のような仕様にはなっていないので同じく仕上がるはずがない。ここで私の賭けは吉となった。現在のドライクリーニング業を取り巻く環境においてこれからはもっとランドリー系の洋服を仕上げ工程の少ない状態で仕上がることに腐心しなくてはいけないのだ、ということを確信しての展示だったのだがヨーロッパでは当たったのだ。実際にこの展示会に来場されたお客様はEUをはじめ、東ヨーロッパや中東、そして東南アジアが主だった。これらの商圏ではこのノンプレスフィニッシャーは間違いなくヒットしたと言えよう。結果として3日目の23日日曜日までいろいろなお客様がブースに来場し、このノンプレスフィニッシャーを見て行ったのだった。

驚くべきは各メーカーの反応だ。Kannegiesser、Jensen、Milnor、Girbauなど主要メーカーは皆見に来たし、トンネルを売りにしている各メーカーも戦々恐々の面持ちで見に来ていた。それだけこのノンプレスフィニッシャーを他社ブースで噂しているのがわかる。私は個人的にMilnorとGirbauはとても仲が良い。彼らの本社にも何回か訪問したことがあるくらいだ。Milnorでは早速シカゴの販売代理店を紹介してくれることとなったし、Girbauは会長自らこの仕上がりにびっくりして副会長を直々に連れてきてみてもらったり、社員にもっと調べるように、と指示していたという。これからもっとこのようなメーカー達とのコラボレーションができるようになるのだろう。

ノンプレスフィニッシャーの話ばかりをしてしまったがもう一つのオートフォルダーも大きな関心をいただいた。シャツ類やズボン類、タオル類までなんでも畳めてしまうことが大きな関心となった。まだまだ機械としては発展途上ではあるが大きなポテンシャルを持つこととなった。これについてはまだまだ顧客からのリクエストが絶えない。「どうせだったらこうしてほしい」とか「こんなことは出来ないのか?」など。しかし既にたたみで困っているお客様達は「すぐに欲しい!」と言ってきた。あるお客様は「Sankoshaで作ってくれ!と昔からお願いした。10年以上経ったけどやっと作ってくれたんだね」と私に言ってきた。本当に嬉しかった。「Sankoshaはこれで最低10年はやっていける」と確信した。あとは一つひとつの案件を確実にこなしていくことだ。

オートフォルダーの前でABCのChris Whiteさん。彼も有力なコメンテーターである。

 

今回は参加した社員達に市内観光などは何一つさせてあげられなかった。やってあげられたことはおいしい食事を提供したことくらい。しかし泊まったホテルは本当に僻地だったのでなかなかおいしいレストランは見つからなかった。しかし最後の最後で探し当てたレストラン、ここでは本当に世話になった。最後3日間は連続で通ったし、最終日はお店のお休みにも関わらず我々のために開けてくれた。おいしい食事、そして人々とのふれあい、これだけでもひとときの休息にはなったと思う。とにかくよく頑張ってくれた社員達!そして協力してくれたブースのデザイン会社、現地の販売代理店がいなかったらここまでやり切ることは出来なかっただろう。最後の片付けも本当に「疲れた」の一言だったが全員が気持ちよく帰ってくることができた。素晴らしい展示会だった。

本当に世話になったレストラン。
ロブスターを使ったパスタ。最高でした!
最後はお店のオーナーさんと一緒に。お休みの日だったのにわざわざ開けてくれました!

 

次回は短編になると思うが展示会で起こっていたことを紹介したいと思う。