3年ぶりのClean Show

7月30日、いよいよ展示会が始まる。3年ぶりの展示会で本当に久しぶりである。場所はジョージア州アトランタ。アトランタといえばコカ・コーラの本社、CNNというアメリカのニュースチャンネルの本部、アフリカ系アメリカ人公民権運動で有名になったマーティン・ルーサー・キングの地元でもある。7月28日の夕方にアトランタに到着したが29日はちょっと家族で町を歩いてみた。やはり黒人の数はとても多い。それよりもホームレスであろうか…、そういう感じの人々がかなり多いと感じる。ちょっと夜を出歩くのは危険と感じる場所だった。

展示会場は相変わらず大きい。会場を端から端まで歩くと直線で500m以上はあっただろうか。これでもコロナ前の会場からすると少し小さくなったと人々は言うが相変わらずの規模に私は「さすがClean Show!」と感じた。

Clean Showのエントランス。やっぱり立派!!
Sankoshaのブース。今年は趣向をちょっと変えてやぐらを組みませんでした。

 

大きなメーカーもすべて参加しているのでやはり会場には華があったように思う。最近のClean Showではランドリー系のメーカーが3分の2、ドライクリーニング系が3分の1という構図になっていたが今回も大きな変化はなかったように思う。しかしドライクリーニング系のメーカーの元気の無さには残念であった。世界は徐々にドライクリーニング業から離れていく中でアメリカは世界で唯一、相応の需要があるだけに各メーカーは今までの製品を出すことで売上をあげようと一生懸命になっていた。しかし来場者はこれからの時代を戦っていくために何を考えれば良いのか?を学びにきているのだから何らかのメッセージが各メーカーに欲しかっただろう。残念ながら今回の展示会で大半のメーカーは新製品を出していない。多少のマイナーチェンジはあったかもしれないが来場者が注目するような製品やサービスは全く出ていなかった。同じメーカーとしてこれが残念でならない。ドライクリーニングの需要減退を最初に阻止すべきはメーカーだと思うが彼らもまたクリーニング店次第と考えているのだろう。

Forentaの社長Rusty Smith、奥さんと一緒に。久しぶりの再会を喜んだ!

 

さて、アメリカで一番大きな問題になっているのは「人件費」である。コロナ禍で売上が減少する中、やはり利益率を維持したいと思うのは経営者として当たり前と思う。しかしこの物価上昇である。利益を確保したくても確保できない。人件費も当然上がる。こんな中で値上げを実施しないお店は間違いなく倒産する。しかしクリーニングを利用する顧客は値上げを嫌う。この状況下でどんな経営をすることができるのか?これがクリーニング店の一番気になるところだと私は兼ねてから考えていた。クリーニング店が一番注目すべきは「どうやって価格上昇を抑えながら利益を得ることができるか?」である。一番人件費がかかるところは仕上げ部門である。そこで一つの分野でもコストが下がるのであればそれは投資に値するとアメリカ人は考える。今回の我々のブースで注目を浴びたのは新型シングルワイシャツ仕上げ機だ。日本では2年前に発表したシングルであるが、海外で正式に発表したのはこれが初めてである。これが人々にどのくらい受け入れられるのか、これが私の一番注目しているところであった。そのためにはどれだけの来場者が来るのか?それがとても気になった。

会場がオープンしてまもなく、私の不安はすぐに消えた。10時に開場したのだがあっという間に人々が会場を埋め尽くす。日本の展示会とは違い、Clean Showは入場券を買わないと入れない。今回は一人165ドルもするのだからびっくりする。そしてこの円安である。140円で換算すると23,100円もするわけだがそれでも多くの人々が来場してきたのだ。これがアメリカ人のすごいところだ。日本人はこれだけの値段だといくことをやめる人が多い。しかしこの展示会に新しい何かがあるかもしれないと思うならば、高いとか安いとか言っている場合ではない。投資すべきなのだ。アメリカ人はここら辺をしっかり割り切って来場しているのが偉いと思う。そのためにはやはり日頃のビジネスでしっかり利益を出さなければならない、と改めて感じる。

それにしても久しぶりに会う顔ばかりである。本当に懐かしい。一人ひとりと抱き合って再会を喜んだ。懐かしがっているのは私だけではない。彼らも同様で本当に色々な人と会うことを楽しみにしていたようだ。挨拶を済ませるとすぐに「今回は何か新しいモデルはあるのかい?」と聞いてくる。ワイシャツのシングルを紹介した。

常に人でいっぱい。
息子もTシャツ着てカラーカフスのオペレーションを手伝いました。業界メディアにも取り上げられました!(笑
Arya CleanersのSassanとうちの営業Budと。

今回は人々の反応が今までとはちょっと違う。アメリカでは何故かダブルを選ぶ傾向にある。あまりダブルを買う必要のない人でもダブルを買う人が多い。どうやらダブルを持つということは大きいクリーンニング店である、という意味があるらしい。シングルは小さなクリーニング店が持つものだ、というイメージがあるのだ。しかし今回はその傾向が変わってきている。アメリカではなかなか人を雇えない問題がある。人件費が高いという問題とそもそも働く人が減ってなかなか人が見つからない問題の両方があるのだ。その問題点を前提に新型シングルの話をすると皆が大きな関心を持って機械を見始める。その機械の動き、仕上がるスピード、仕上がり品質を見て納得する。何人かのお客様は全くワイシャツを買うつもりはなかったのに我々の話を聞いてからそのワイシャツ機を見たら5分後には「買う!」と即決してしまうのだからさすがにこちらも驚いてしまう。それだけ人件費対策はアメリカにおいては喫緊の課題なのだ。我々はその市場に合ったモデルをタイムリーに出すことがやはり重要である。

 

結局、この4日間の展示会でおおよそ1万人の来場者があった。我々が期待していた人の全てが来たわけではなかったがとても忙しくすることができた。人々が会場で囁いていたことは「とても人で賑わっているブースはMetalprogettiとSankoshaだけ」ということだった。やはり今までの製品やサービスを出しているだけでは人々の関心を買うことができない。常に最新のモデルを用意することが必要なのだ。多くのお客様に大きな関心を持っていただけたのは本当によかったと思う。

初日の夜には我が社が主催したパーティーがあった。このパーティーにも200名以上のお客様が参加してくれた。場所はアトランタ植物公園内にあるホールでとても緑に囲まれた良い会場だった。

パーティー会場。とても心地よい場所でした。

ここでも多くのお客様と一緒に会話を楽しんだが、みなさんからはお褒めの言葉を数々いただいた。

「Sankoshaは新品でも中古でもしっかりサポートしてくれる」

「いつも時代にあった新製品が展示会で必ず発表されている」

「Sankoshaは我々を家族のように接してくれる。とても嬉しい」

「機械が本当に素晴らしい。全然壊れないし、壊れた時の対応がとても素晴らしい」

などなど。結果として250台以上の機械がこの4日間で売れた。日本では1年間で売れる台数がこのくらいだからどれだけの売上が上がったのか、は想像できるだろう。しかし、市場にはまだ大きな力が残っていること、そして人々は変わりゆく環境に対応しようとしていること、そこに付き合う会社の姿勢やタイムリーに出している新製品を見ながら最終的に誰と付き合っていくのか?を決めているのがこの展示会なのだ。他のメーカーはどんな結果だったのか?を私は知らない。あまり良くなかったらしい、という噂を多くの人から聞いたが真相はわからない。我々は大成功だったと思う。これからも更に時代に合わせた新モデルをどんどん発表していきたい。

テキサスの代理店MustangのDubinski家族と!

 

業界新聞National ClothelineのCarolとLeslie、そしてLAのPerfect Cleanersの社長Daveと!

 

余談ではあるが、私は帰国してから新型コロナにかかってしまった。後で聞いた話だが今回のClean Showに参加した多くの人々が感染したそうだ。考えてみれば誰もがマスクをせず、久しぶりの再会を抱き合って喜ぶわけだからかからない方がおかしいと思う。会場が大クラスターになったていたことは言うまでもない。出発前には会社で私の兄である社長が社員に向けて「くれぐれもコロナには気をつけて過ごすように!」と言ってたのにその社長と副社長が二人で感染したのはあまりにも滑稽だった。海外のビジネスにはやはりリスクは存在する。(笑