クリーニング店の洗浄を売りにしてみては?

1月はかなり悪かったが、2月はもっと悪くなっている。緊急事態宣言がようやく関西圏などで解除される事になったが、1都3県は3月7日まで続く事が決まっているようだ。大手のクリーニング店も中小のクリーニング店も軒並み30〜40%の売上減との情報が私のもとに届いている。実際に私も何人かの経営者と電話で話をしているが、ほとんどの人々が「もはや売上が戻ることはないだろう」と悲観的な見方をしている。実際に私も同じように考えている。
戻らない、戻らないと悲観するのはいいが、何も手を打たずに悲観していたら本当に潰れてしまう。ほとんどのクリーニング店はワイシャツ、ズボン、ジャケットの3点を基本とした工場レイアウトができている。これらが集まらないから他を集めよう、と思ってもそう簡単にできないのが現状と言えるだろう。そうなるといくら新しい事をやろうとしてもまずは3点を集める努力をしなければならない。しかしそれを一体どのように集めていくのだろうか?ちなみに大手量販店ではワイシャツやブラウスなどはある程度売れているらしい。しかし売れている素材は形態安定シャツ等である。価格の安さも手伝ってそのようなシャツを買い、家で洗濯をしてしまう、という傾向が強まっているのだろうか・・・。

私は兼ねてからクリーニング業界に対する大きな疑問があった。それは「洗いの素晴らしさ」を表現していないことである。一般消費者にクリーニング店の水洗いと家庭洗濯の差はなんだろうか?と聞いてみても「わからない」と答える人がほぼ100%というのが現状である。そして家庭洗濯でお湯を使って洗っている人は極めて少ないのも現状で、多くの流通している家庭洗濯機はお湯対応していないモデルで、家庭洗濯用洗剤もお水に対応したものがほとんどなのだ。それなりの科学の力はあるのだろうが、お湯の力に勝るものはない。日本のクリーニング店でワイシャツを洗うのに通常の水道水の温度で洗う工場はないだろう。お湯の温度設定については各社それぞれ違いはあるが50〜55℃を適用するところが一番多いのではないかと思う。
では何故クリーニング店はお湯を使うのか?それは単純にお湯の方が汚れが落ちると誰もが理解しているからである。そしてそのお湯にワイシャツは耐えられると理解しているからだ。では何故家庭洗濯ではお湯を使わないのか?家庭洗濯ではワイシャツだけで洗う事はないだろうしいろんな素材をまとめて洗うので、一番リスクが少ないのは真水で洗うことなのだろう。確かにこれはリスクを冒さない最良の方法ではあるが、私はそもそも人々がお湯で洗う効果を知らないのではないか、と推察する。故にクリーニング店はここに大きな洗浄の差があることを改めて認識し、それを強みとして消費者に主張することではないだろうか。最近こそお湯で洗える家庭洗濯機が出始めてきているが、まだまだそれを利用する人は少ない。実際に洗濯機にお湯を接続している家庭はとても少ないし、お水を洗濯機でお湯にするにはかなりの電力を消費しなければならない。それらを経済的に考えるとお湯で洗おうとする人は少ないと考える。クリーニング店は高温のお湯で洗っているから皮脂の汚れも含めて綺麗に洗浄することが出来る、という論理を展開すれば家庭洗濯との大きな差をつけることができる。しかし、何故クリーニング店はこの強みをもっと消費者にアピールしないのだろうか?私はこれを昔から考えていた。コロナを通じてクリーニングの需要がここまで落ちている時にこそ基本の強みをもっとアピールすべきではないだろうか?

一方で、私はクリーニング店に「衛生」「消毒」という言葉をもっと利用した宣伝をしてもらいたいと思っている。世の中の人々は依然とコロナにおびえる毎日を送っている。クリーニング業界が洗浄からもっとコロナにも対応できる洗い方をしてもらえれば需要は計り知れないのではないか、と思う。残念ながら消毒という観点ではできる方法がほぼない。次亜塩素酸を使えば十分に消毒にはなるが、洋服の色を全部飛ばしてしまうのでNGである。一方で80℃以上のお湯で10分以上つけ込むというのも消毒の一つの方法となるが素材が80℃のお湯に対応できないのでこれもNGとなってしまう。結局のところ、消毒できる方法がクリーニングにはないのが問題なのだろう。大手薬品メーカーからの情報によると過酢酸を使う事が唯一の方法ではないか?と言う。しかしこれは劇薬指定になっているので一般家庭で使うことはまずできないだろう。そしてこの過酢酸はまだ認可されていない薬剤なのでこれを使うから大丈夫、という論理にもならないのが現状だそうだ。

ただ、最近はウィルスブロック(以下VBと省略する)剤なども出てきているのでこういう薬剤を利用しながらクリーニング店の洗浄価値をもっとアピールする事ができたら新たな顧客を創造する事が出来るのではないだろうか?

何もやらずにこのまま指をくわえてみているとこの業界の縮小が加速し、半分以下のサイズになってしまうのも時間の問題になるだろう。業界に携わっている者としてはとても悲しい話しである。各社が何らかの対応をして消費者にアピールしてくれる事を心から願う。