皆さん、こんにちは。
前回はチリの事情についてお話しをさせていただきましたが今回はクリーニング事情についてお話しをしてみたいと思います。
国はとても広いが実質首都であるサンチャゴのみのマーケットと言えると思います。従ってマーケットはとても小さいと言わざるを得ません。前号でもお知らせしたとおり人口1700万人の国なので人口密度があまり高くありません。唯一の救いは「南米で最も豊かな国」ということです。
さて、それではどんなクリーニング店があったのでしょうか?区分で言うとフランス系クリーニング店です。フランス系クリーニング店とは基本的にアイロン台のみで仕上げるクリーニング店の事を指します。ドライ機についてはパークが圧倒的でほぼすべてのお店でパークが使われています。あまりこの国では溶剤規制の問題はなさそうです。一方、お水は基本的に硬水です。故に軟水器の活用は不可欠です。ちなみに洗いの温度は30℃程度で決して高い温度で洗っていません。このようにみてみるとこの国の技術レベルは世界の最先端よりはかなり遅れていると言えるでしょう。
さてお店についてですが、フランスで最も大きなクリーニングチェーンと言えば5a Sec(サンカセック)というブランドです。ここサンチャゴでも市内で40店舗、郊外で30店舗という規模で成り立っていると言うから驚きです。後はProntoMaticというブランドもなかなかの展開をみせています。5a Secほどではありませんが30店舗ほどの展開をしているようです。今回ホストになってもらったLart Parisienというクリーニング店ですが1923年創業の老舗、現在は7店舗を展開中、地域の高級クリーニングとして活動しております。
(5a Secの店舗。ご覧の通り、店舗の後ろにアイロン台、ドライ機がある。これが典型的なフランススタイル)
(こちらはProntoMatic。店舗のルックスこそ違えどやっている事は一緒!)
(Lart Parisienの店舗。ここはちょっと違うでしょ!高級感あります)
しかし基本的にドライクリーニングや水洗の洋服を乾燥して手アイロンというモデルです。どのように展開しても基本的に人手を必要とするモデルで工業的な展開が出来ないモデルです。しかしフランス式を基本としているからか・・・、それ以上の情報が入ってこないのでしょうね。言葉の問題や文化の違いからこういう傾向が生まれてしまうのだと思いますが、全く違う工場スタイル、生産性、機械仕上げと手アイロンの違いなど何も知らないで時が過ぎていくのは何とももったいない話しです。ここはスペイン語ですが、お膝元のスペインもフランス式が一般的なのでそういう流れになってしまうのでしょう。
(Lart Parisienの集中工場。これが現実です。)
(ワイシャツ仕上げ。これ、日本だったらNGです・・・)
価格面の話しになりますが、労務費はおおよそ8万円/月(年金、社会保障付き)なので決して高くありません。しかし年率4〜6%の勢いで労賃が上昇しているとのことで決して楽観視出来る状況ではありません。そこでワイシャツの価格ですが5a Secで2890ペソ、ProntoMaticで3290ペソです。大体為替は1ペソ=0.17円なので5a Secで491円、ProntoMaticで559円となります。どうでしょう?高いと思いませんか?これでは多くの人々に使ってもらう事など出来るわけがない、と言うわけです。その割にノリなし、完全乾燥してから手アイロンですからワイシャツがパリッとしないのです。我々からみると完全にくたびれた感じの仕上げになってしまっていますがそれを彼らは高級仕上げと言うわけです。全く話しにならない!(笑
こうやってみてみると三幸社のワイシャツ仕上げ機はやはりすごい機械だ!と自画自賛してしまいます。しかし現地の人々にこの話をしても全く想像も付かないわけですから・・・、展示会などで貪欲に情報収集する事は大切ですね。
結論から申し上げるとチリのクリーニング事情はフランスのしかも旧式と言えるでしょう。すべてを人の手で処理しようとしている非常に非工業的なモデルです。ただもしかするとこのままで良いのかもしれません。成長が見えなければ投資もありません。やはり人口はとても大切と改めて認識しながら2泊の旅を終えてサンチャゴを後にしました。もしかしたら三幸社のビジネスもここで生まれる可能性はあるかもしれませんが、大きな市場にはならないでしょう。
私自身は初めての南米だったのでとても楽しかったですがクリーニングの限界をここでも感じてしまった旅でした。クリーニングの工業化、品質の伴う価格力はとても実現するのが難しいのでしょうね。しかしリスクを取らない商売で上手くいくものなど一つもありません。誰が生産性を高める品質を伴ったクリーニング工場を考えていくでしょうか?考えた人の勝ちでしょうね!