皆さん、こんにちは。
今回はベルギーのクリーニング店がどのように生き残り続けているのか?をお話ししたいと思います。日本は間違いなくヨーロッパと同じ道を進んでいるのでこの話はとても参考になると思います。
ベルギーは人口おおよそ1100万人、東京よりも小さな人口で構成されている国です。しかしクリーニングの需要は衰退しきってしまい、この国が再びクリーニング需要を増やす事はまずあり得ないでしょう。故にクリーニング店も200店ほどしかなく、新規オープンするお店などまずないわけです。こんな市場ですが、だからといって特別な事をしているわけではありません。彼らが取ろうとしているのは「毎日仕事を持ってきてくれる下請け業」です。私はゲントでクリーニング業を営んでいるClean Expressというお店を訪問してきました。
(Clean Expressのお店とデリバリーのトラック。見た目はごく普通のお店)
(工場の中は自動包装機を使うほどの量!ジャケットの仕上がりを見てもとても綺麗に出来ていました)
彼らが取り込んでいるのは特急電車に使われているシートカバーなどです。これはドライクリーニングで洗われるアイテムで、毎日トラックでブリュッセルから運び込まれて来ます。そしてできあがったカバーがまたそのトラックによって納品されていきます。
(これが電車で使われているシートカバー。毎日大量のカバーがお店に入ってきます)
このような契約を手に入れた社長のJean Paulさんに話を伺うと「クリーニングを出してくれるお客様の数は少なく、とてもじゃないけどそれだけの売上では会社は成り立たない。だからこのようなB to Bビジネスを取り込んでいかなければならないのだ」とおっしゃっておりました。このビジネスを進めるためには条件が二つあると言います。
- 他のお店と比べても洗いや仕上げの品質が高いこと
- 事業主との強い人間関係が出来ていること
この二つが重要だと力説されておりました。クリーニング店なのだからどんなものであっても綺麗に洗い、綺麗に仕上げる事は当たり前の事です。しかし、実際に綺麗に洗って仕上げている会社はかなり少ないのではないでしょうか?きちんと溶剤管理をしない、機器の入れ替えやカバー類の交換もせずにやってしまっている、などなど工場が汚い状況にあるお店を数多く見てきています。実際にJean Paul氏は自分がどうやって洋服を綺麗にしているのか?をいつも力説しています。一方でお客様の噂もあります。「出すんだったらあそこが良い!」と言われるお店作りは大切ですよね。
もう一つは人間関係です。これは経営者の外交能力が問われます。ただそれほど難しい事ではないと思います。相手に対して誠実に対応し、自分たちが相手のために全力で対応する事をお客様側が確信する事でこのような契約を取ることが出来ると思いました。
今回は電車で使うシートカバーなどの需要でお話ししましたが、他にも対象は地域のホテルやレストラン、老人ホームなども考えて良い取引先と思います。こんなところをそれぞれのクリーニング店が取り組んでいるというのがベルギーの実情でしょう。
さて、日本はどうでしょうか?まだワイシャツという洋服がたくさん集まるわけですから今のところ上記ようなB to B契約を結ばなくてもやっていけるところが多いでしょう。しかし、日本の人口確実に減っていきます。確実にカジュアル化も進んでいます。現在の条件から市場規模が小さくなっていくのは明白です。そんな将来が見える中で我々は何を考え、何をやっていけば良いのでしょうか?私は自身の地域に特化したお店作り、そしてその地域の取引先を作っていくことがとても大切なことではないか?と思います。
誰も将来を予知する事は出来ませんし、私もわかりません。しかしヨーロッパとかなり似た道を歩いているのは事実です。アメリカのように年間で何百万円も支払ってくれるお客様がいないのがヨーロッパであり、日本でもあります。会社の規模を小さくしていくのか?それとも上記のようなモデル作りを自分でやってみるのか?是非考えてみることをお勧めしたいと思います。