クリーニング業は変わるのか?

久しぶりにブログを書いている。いつもであればどこか海外に出かけるとその地域のことを書いている。前回のブログが4月に訪問したサウジアラビアのことだったのでざっと3ヶ月は更新していなかった。実は全く旅をしていないわけではない。3月にはアメリカから合計17社、70名近くのクリーニング店グループが来日したので対応にとても腐心した一週間があった。その後も海外のお客様が日本に観光しに来たついでに三幸社を訪問するケースはざっと5回はあっただろうか。その度に会食などもご一緒させていただいていた。サウジアラビアの出張後に私はアメリカに4月、5月、6月と3回も訪問している。タイとインドネシアにも訪問した。相変わらず海外旅行は続けている。

しかし、なかなかブログにしたためるまでにはいかない。最近はアメリカでも具体的な顧客名を出したりすると「何故あちらには行って我々のお店には来ないのか?」と言われたり「そのお店の状況をもっと詳しく教えてくれ」と言われたりするのであまり具体的な訪問内容は書きづらくなってきている。業界全体の流れであればそれをネタにすることはできるのだが、あまり個人的な内容になると情報漏洩になってしまうのであまり書くことができない。アメリカのネタは年間に1〜2回は書いているのであまり同じ内容では面白くないので敢えて書かない。

さて、週末に群馬・三洋商事という販売代理店が企画した展示会があった。いつも7月第一週の週末に行うのが恒例なのだが、今年でこれも最後になるとのことであった。私は今回は参加しなかったが営業が数名出展者として出席してきた。参加して営業マンによると2日間の開催で来場した人々の数は200名弱だったのではないか?と言っていた。この展示会は灼熱の中で汗をどっさりかきながら参加する展示会でなんとも昭和の時代ならば成り立っていた、というタイプの展示会である。最近は熱中症やら色々なリスクを考えなければならない時代なのでどうしてもこの運営方法については前向きになれないところはある。当然ながら多くの来場者はそんな長くいることはできない。しかし、出展者の皆さんは終わりまでずっといなければならないのでご苦労な事と思う。

ただ、本当の理由はそんなことではない。やはりクリーニング業が衰退しているからだろう、と思う。今回の展示会でウール製品対応の機械は売れないどころか問い合わせもあまり入ってこなかった。当然と言えば当然だろう。最近の夏は一昔と違って本当に暑い。信じられないくらい暑い。こんな状況でウール製のジャケットやズボンを履く人がいるだろうか?全くいない、とは言わないがほとんどいないだろう。通気性の良いもので汗をかいてもあまりベトベトにならない洋服が人気になってきている。会社勤めをしているサラリーマンの洋服も本当に変わった。会社のドレスコードが変わり、もはやスーツ姿で出勤する必要がなくなったのも一つ大きな要因だろう。この流れはコロナ前からも少しずつ進んでいると感じたものだが、コロナ禍でこれほどドレスコードが変わるとは誰が想像しただろうか?コロナ禍で人々は仕事を失い、自宅待機を命じられ、多くの人々は会社に行かなくて良くなった。あの2〜3年間で人々は生活習慣をすっかり変えることになった。大手クリーニング店はまだまだ忙しさを保っているところもあると聞いているが日本の業界全体としては縮小傾向を認めざるを得ないのではないか、と推測する。

先日、韓国の総代理店であるSK商事のキム社長が来社した。彼もまた業界縮小に悩まされている一人である。韓国も日本と同じように古来のドライクリーニング業が縮小しており、特に韓国では個人店の廃業が著しいと言う。我々は機械を販売して生計を立てているので販売先がどんどんなくなってくると我々も当然厳しくなってくる。キム社長は大いにその影響を受けていて、現在は客先に行きたくても行くネタが無くて困っているという。やはり新しいビジネスモデルを作るとか新しい業界にチャレンジするとかなにか新しいネタがないと活動さえできないわけだ。これまでのドライクリーニング業は徐々に崩壊しつつあるので次はどうするのか?を考えておかなければ会社の倒産を覚悟しなければならない、というのは色々なところから見て取れる。

さて、このブログを読んでいる皆さんはこれからどうしようと思っているのだろうか?私は随分前から「水」を武器にしてみてはどうか?と主張しているが、やはり世界はそんな傾向になっていると改めて感じる。しかし、ドライクリーニングのように一度クリーニングをしてもらったら何回か着られる洋服を対象としていない。ほぼ1回着たらすぐにクリーニングに出すようなものばかりが対象になる。その割に洗濯、乾燥、仕上げの手順はドライと同じく必要なわけで決して価格を安価にすることはできない。消費者もそれがわかっているのだろうか…、もはや我々を必要とせずに家庭の洗濯機などですべてを完結しようとしている。汚れた洋服をクリーニング店に持ってきてもらえるありとあらゆる活動をしなければ消費者はますますクリーニング店を必要としない生活スタイルに慣れてきてしまい、最終的に業界は潰れるだろう。現在は「儲かる」とか「儲からない」ということを話す前に「仕事を頂く」という活動を考えていかなければならないのではないか?アメリカでは洗濯代行(Wash & Fold)が注目されるようになっている。多くのクリーニング店がすでに活動を始めている。ただ、今のところ売上ベースで全体売上の10%に届いているところはとても少ない。まだまだ育てなければならない分野なのだろう。しかし、すでにこうやって対策していることは純粋に素晴らしいと思う。

新しい取り組みを企画することはとてもハードルが高いと思う。果たしてこれで上手くいくだろうか?と自問自答してもこればかりはやってみなければわからない。しかしやるには当然リスクがつきものだ。そのリスクを恐れて結局何もやらないと会社は間違いなく衰退していく。皆、頭ではわかっているはず。しかし、なかなか怖くてできない。そこで、三幸社は本社のショールームを次世代型工場に作り変える予定だ。9月には皆さんにお見せできる状態にする計画をたてている。水を大いに活用する工場といえばこうなるのでは?という工場レイアウトにするつもりだ。もはや、単品の機械が良いとか悪いとか言っている場合ではない。それまでのクリーニング工場を一新する時期に来ているのだ。その基本形態をショールームでお見せすることにより、皆さんの今後の考えをもっと具体的なものにしていくことができると考えている。悩んでいる皆さんにおいては是非楽しみにお待ちいただきたい。また出来上がったら報告するつもりである。