2024年を終えて

もうすぐ日本は2024年を終えて、2025年を迎える。まずは1年間お疲れ様でした。

今年も色々なことがあった。今年は以前よりも私が出張ばかりするのではなく、国内外から多くの来客に恵まれた。思えば海外からの来客は本当に多かった。新聞やニュースでも多く報道されているが、日本を訪れる海外訪問客が過去最多になっている。日本を訪問したい、と考える人が世界中にいる。「日本はとてもキレイな国である」とか「日本人はとても親切だ」とか「和食がとても美味しい」などなど。日本には独特の秩序があるが、これを世界の人々が称賛することは多い。実際に災害が起こってもそれに乗じて略奪や破壊など行う人間はみかけない。日本人はある意味、世界中の人々から尊敬されている。同じ日本人として誇らしい限りである。

そんなことで今年は多くの海外訪問客が来社したこともあって例年ほど海外出張の回数は多くなかった。とは言え、15万マイル乗ったのだからやはり相当旅したのだろう。今年一番モチベーションの上った出張はサウジアラビアへの出張だった。今回が2回目だったが初の出張は確か20年前だったと思う。故に初めて出張するような気分だった。今回、訪問する理由になったのはThobeという中東の民族衣装(男性ものは白い装束で綿ポリ混紡材でできているものが多い)をオートマチックに仕上げられないだろうか?というリクエストで訪問したのだった。詳しくは昨年3月に訪問したサウジアラビアの訪問記を御覧いただきたいが、2022年にノンプレス(英語名:Press Free Finisher)を販売してから様々な問い合わせをいただくようになった。サウジアラビアからのリクエストもそのひとつなのだが、現在Thobe対策のノンプレスを開発している最中である。2025年1月には試作品が完成する予定なのでこれも楽しみのひとつである。

それにしてもノンプレスの勢いは凄まじかった。特にアメリカを中心に注目の強さをとても感じた一年だった。世界中が注目するモデルになってしまったが、これはある意味クリーニング業の中身が変わってきたとしか言いようがない。今年のコラムで何度か書いている内容だが、「人件費の高騰」「労働者不足」「繊維・生地の変化」「ファッションのカジュアル化」がクリーニング業の中身を変えてしまったと言えるだろう。しかし、クリーニング業に携わっている人々(特に経営者)はせっかく投資した工場と共にもっと稼ぎたいと考えているのだろうが消費者の洋服構成が変わってきてしまっているのだから仕方ない。2025年はこの傾向がもっと進んで行くのだろう、と予想している。これをお読みいただいている経営者の皆さんは「これからどうしていくのか?」を考えておくことを提案したい。

これからクリーニング業は大きく二つに別れていくと考えている。ひとつは従来型のドライクリーニング業である。しかし、私はこの業界をかねてから「富裕層向けの業界」と定義している通り、ユニフォームの延長でスーツを着ているサラリーマンをターゲットに出来る可能性はますます低くなっていくと予想する。従来のドライクリーニングでこれからもやっていけるところは「ドレスコードの残っている社交界」であろう。アメリカを見ているとまだまだ残っている社交界はある。しかし、そのアメリカであってもドレスコードは確実に減っている。
日本はどうだろうか?2015年に大阪で開かれたIDC国際クリーニング会議におよそ100名が参加した海外の皆さんは当時の通勤時に着ている日本人の洋服を見てどれだけ心を奪われたことであろう。どれだけのサラリーマンが9月のとても暑い時期にネクタイ・スーツを着て出勤しているのだろうか、と感心していたものだ。それが現在はすっかり10年前のドレスコードがなくなってしまった。これはコロナも大きく影響していると思うが、日本人のドレスコードはすっかり変わってしまった。これを元に戻すことなど出来るわけがない。これを我々は受け入れてこれからも生きていくしかないのだ。
この状況にうまく順応出来るクリーニング店がこれから生き残っていけるもう一つの業態と予想する。ただ日本にはこの業態に対する法律が整備されていない。これは業界全体で改善していく力が必要と考える。しかし、我々は一枚岩にはなっていない。これは旧全国クリーニング連合がドライクリーニングにしか注目をしなかったことから先読みをする力がなかったことから話は始まる。彼らの至らなさをここで話しても仕方がないのでここでは割愛するが時代は確実に変わるのだ。その時代に合わせて変わっていく力がなければ滅びるしかない。それを我々はもっと知るべきだと思う。

これからクリーニング業は確実に衰退していくと予想する。しかし、それを変える可能性はあるかもしれない。それは皆で業態を変えていくことである。現在の顧客のニーズに合わせた業態にしていくことである。昔の業態にしがみついていたら誰もが使わない業態になってしまう。それは我々の望むところではないだろう。故に変える力をできるだけ多くの人々に持ち合わせてもらいたいと心から願う。

 

今年もお読みいただきありがとうございました。来年も引き続きブログを更新していきたいと思います。皆様、良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。

 

Texcare Frankfurtから感じたこと

ブログもすっかりご無沙汰してしまった。新年度(9月)に入って方針発表をしたり、その時にすでにいただいていた講演依頼に対するスピーチ内容をどうすれば良いのか、など考えることが山ほどあってなかなかブログに向かう気にならなかった。少し時間が開いたことをお詫びしたい。

11月3日の日曜日、私は一人で成田空港に来ていた。ドイツの4年に一度の展示会、Texcare Internationalに参加するためである。いつもであれば次世代の海外営業のロバートといっしょに旅をするのであるが彼は展示会の準備がどこまでできているか?を確認するために一足先にドイツに飛んでいる。残りのメンバーはANAのフライトと言うことで私は一人でJALで出かける事となったのだ。ヨーロッパのフライトは本当に長い。今回もフランクフルトまで14時間はかかると言われている。ロシアのバカヤロー!お前らが戦争なんかしかけなければ最低2時間は短いフライトで目的地に着くのだ。なんで人間は戦争を起こすのだろうか…。
アップグレードは出発の2日前に確定した。本当に良かった。今回も数多く待っていらっしゃる方々をぶち抜きで席を手に入れることができた。これも長年乗り続けている結果なのだろう。おかげさまでドイツまで足を伸ばしてくつろぐことができた。

JL408便。今回もお世話になりました。

 

フランクフルトに到着したら私の兄貴である社長もANA便で到着していた。彼もアップグレードを希望していたらしいが残念ながら叶わずプレミアムエコノミーでの旅だったらしい。空港で合流したときは結構疲れている顔をしていた。残念でした!!(笑
本人にはねぎらいの言葉をかけて二人で電車に乗ってホテルに移動。みなさん、ご存知だろうか?なんとフランクフルトにも東横INNという日本を代表するスーパーエコノミーホテルがあるのだ。もちろんドイツ価格なので日本より高額ではあるが、フランクフルト中央駅に隣接しているホテルでEUR100.00は安い!としか言いようがない。

フランクフルト中央駅のすぐそばにある東横INN

 

ホテルの中を見てみるとまさに日本と同じ作りになっているではないか!スーツケースがベッドの下に収まるのが嬉しい。トイレはウォシュレットが付いている。

私の使った部屋。ベッドの下にスーツケースが入る。さすが!!
日本人お馴染みのユニットバス。トイレはウォシュレット機能付き。韓国製だけど!(笑

 

もちろん朝食は無料である。日本の東横INNよりはメニューも豊富だし、なんと言ってもご飯と味噌汁が用意されていたのが嬉しい。決して美味しいご飯&味噌汁ではなかったが「我々は日本人だな!」と感じるのはこういう食事があることでホッとすることだ。味噌汁の出汁が全然効いていないのだが、1週間も泊まっていると段々と慣れてくるのが面白い。

朝食会場。椅子も完全に日本と一緒。
豊富なメニュー。日本の東横INNよりも種類が多い。
なんとご飯と味噌汁まであった!!これはありがたい。

 

さて、TexcareのSankoshaブースはなかなか立派にできた。今回は兄である社長が働きまくった!彼は元々配管作業ができる人間である。私はあまり得意ではない。今回も少ない人数で来ているのだが、私が一番役立っていない人間だったように思える。私の仕事は皆が快適に働くことができるようにすること、それは昼からビールやワインを開けて振る舞ってやることだ!(笑

兄である社長も設置作業に奔走。この日の夜は湿布を貼ったらしい…(笑
これが私の仕事!皆に振る舞ってやることです!!(笑


6月からSankosha Europeがスタートしており、そのメンバーたちも我々のブース設置に大いに貢献してくれた。日本人からするととても高いブース代ではあるが、ヨーロッパである程度のイメージを感じてもらうようにやるにはこのくらいの投資は必要だろう。

出来上がったブース。やはりドイツの装飾は華やかだ!

 

 

全体の会場イメージを報告しよう。100%の会場スペースをざっとランドリー・リネン関連のブースがおよそ80%を占めていたのではないかと推測する。ドライクリーニング関連は20%程度しかなかったことだ。今まで出ていたメーカーが出ていなかった。特にドライ機の出展が少なかったと思う。イタリアからUnion、Firbimatic、Ilsa、Renzacciなどのブランドは出ていたが昔に比べれば断然少ない。一方で洗濯機メーカー、洗剤メーカーの出展は今まで通り出ていた。アメリカとヨーロッパでの各ブランドの出資レベルは違うが、出ていない、ということはなかった。これだけを見てもドライクリーニングの衰退が如実に映し出されている。

展示会場の見取り図。80%のブースがランドリー系、ドライクリーニング関連はほとんど見当たらない。

 

6日から展示会がスタートした。初日はなんと少ない来場者数であっただろうか?午後2時くらいに展示会場をブラブラしてみたが、ドライクリーニング関連のブースにはとにかく人がいないのだ。私は大いに狼狽えた。初日にいた来場者のほぼ100%がリネン・ランドリーの顧客なのだ。初日の客の入りを見てもドライクリーニング業界の衰退ぶりがよく分かる。展示会は4日間あり、2日目から少しずつドライクリーニング関連の来場者が増えてきたのでとりあえず形にはなったが、これがある意味現実なのだろう。ドライクリーニング関連のブースにはとにかく新しい技術やソリューションがない。相変わらず昔と同じものばかりが出ているのだ。人々が興味を抱かないのも当たり前だろう。すでに知っているものばかりなのだから。

イタリアRenzacciのブース。全く人がいない。
イタリアPonyのブース。こちらも全く人がいない。

 

考えてみればリネン関連はB to Bであるのに対してドライクリーニング関連はB to Cと捉えることが出来る。B to Bは隆盛を保ち、B to Cは衰退の一途を辿る。私はクリーニング業の発展を考えながら世界中を旅し、それぞれの地域の特徴などを理解しながら全体的なクリーニング業の今後を考えてきた。
例えば「ドレスコード」を取り上げてみる。昔は帽子というアイテムが必須の時代があった。何故帽子は衰退したのだろうか?これを調べてみると1960年代から1980年代にかけて死滅した、と記述されている。それまでは帽子はドレスコードの一端を担っていたが1960年代に入ると帽子から髪の毛にファッションのトレンドが変わっていったとされている。そこで「帽子をかぶる=古臭い」というイメージになったことが大きな要因だったそうだ。
それではネクタイはどうして衰退したのか?これは間違いなく地球温暖化から端を発した企業のドレスコードに対する考え方の変化に起因する。日本では政府が「クールビズ」と命名して夏のドレスコードをゆるくすることでエアコンの使用率を下げることでCO2の削減を国全体で推し進める、という大きな流れがネクタイを死滅させてしまったのだ。
まだ例を挙げればきりがないが、B to Cビジネスは常にトレンドに振り回される傾向にあることがわかる。一方でB to Bはリネンであったりユニフォームであるためにトレンドという脅威はないことが確認出来る。あえて言うならば素材が変わっていることくらいだろうか。

私はこれからのキーワードは「水」と主張している。B to Cにはトレンドがあり、そのトレンドが現在どんなことになっているか、を理解できれば水にフォーカスを置くことは誰もが簡単にたどり着くと私は考えている。しかし、ドライクリーニング関連にはその水に重点をおいていないメーカーばかりがこのTexcareでも目立つ。だから彼らには客が集まらないと結論づけることが出来る。幸いにも我々はノンプレス(英語名:Press Free Finisher)がすでにある。だから我々のブースはとても忙しく活動することができた。今までワイシャツプレス機メーカーとして君臨していた我が社であるが、それにすがっているようでは会社は潰れると感じる。

ノンプレスの周りには常に人だかり。これぞ現在のトレンドと言える。

 

人々のトレンドは確実に変わっていく。トレンドは変わらずに永遠に続くことなどありえないのだ。その代わりを見つけ、それを人々に主張していく、それが人々の興味を引き付ける源である、と私は断言出来る。次は何か?それを見つけたメーカーは多くの顧客と今後について話を続けることが出来るだろう。一方で見つけられないメーカーは残念ながらいなくなってしまうのだろう。仕方のないことだ。我々はそうならないように続けていくしかない。

チームSankosha Europeと共に!今回の展示会は大成功だった。

 

結果として我々はこのTexcareでは予想を上回るオーダーや案件をいただいた。とても良かった!この流れがこれからも続くように私の「探す旅」はこれからも続くだろう。