前回は私の展示会奮闘記を記した。今回はミラノ展示会がどんな様子だったのか、をお知らせしたい。
展示会はとても活気に満ちていた。イタリア勢力を中心にとても良い活動をしていたように思う。この展示会はランドリー60%、ドライクリーニング40%の出展というところだろうか。イタリアの展示会Expo DetergoはアメリカのClean Show、ドイツのTexcareに比べてドライクリーニングの色合いは比較的強い。なぜならばドライ機、仕上げ機とイタリア勢がとても多いからだ。
ドライ機メーカーといえばまずは不動の王座に君臨しているFMBグループのUnion、そして同グループのFirbimatic、Realstar、そして別メーカーのIlsaでほぼ世界の50%くらいのシェアが固められていると推定する。そして仕上げ機メーカーもとても多い。今回出ているだけでPony、Barbanti、Rotondi、Trevil、Fimas、Ghidini、Sidi、Cocciとアイロン台だけの製造なども含めたらまだ5〜6社はあっただろうか…。これだけのメーカーがまだまだやっていけるだけの業界なのだ。
ここには一つからくりがある。これらの仕上げ機メーカーはもともと縫製業界用の仕上げ機として成り立っている。イタリアといえばファッションナブルなブランドがとても多い。生地からやっているブランドもあれば洋服だけを展開しているブランドもある。スーツや婦人モノでドライクリーニングしか対応できない洋服が沢山製造されているところから派生しているのであろうか…。とにかくドライクリーニング機と仕上げ機のメーカー大国イタリアなのだ。しかし世界の生地素材は確実に変化している。ポリエステルの混紡素材が一気に台頭してきているのだ。今回の展示会を見ている限り、これらのメーカー達は世の中のトレンドに合わせた新製品などは全く出ていなかった。未だにウール素材を中心に考えているのだろう。強みといえば強みかもしれないが本当に変化がなくても大丈夫なのだろうか?ウール素材を中心に考える会社に「水洗い」の概念はない。相変わらず変わってないな、というのが私の感想だった。
一方でITを駆使した製品も随分と出てきた。スペインの洗濯機メーカーGirbauは新製品の洗濯機を出していた。洗濯機そのものが変わったわけではない。しかしソフトは大幅に変わっている。お好みの設定や言語など大きなタッチパネルでとても見やすいスクリーンになっていた。
みなさんは「インダストリー4.0」という言葉をご存知だろうか?
「インダストリー4.0」とは「第4次産業革命」という意味合いを持つ名称であり、水力・蒸気機関を活用した機械製造設備が導入された第1次産業革命、石油と電力を活用した大量生産が始まった第2次産業革命、IT技術を活用し出した第3次産業革命に続く歴史的な変化として位置付けられている。
インダストリー4.0の主眼は、スマート工場を中心としたエコシステムの構築である。人間、機械、その他の企業資源が互いに通信することで、各製品がいつ製造されたか、そしてどこに納品されるべきかといった情報を共有し、製造プロセスをより円滑なものにすること、さらに既存のバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築をもたらすことを目的としている。これらの仕組みの整備が進めば、例えば大量生産の仕組みを活用しながらオーダーメードの製品作りを行う「マス・カスタマイゼーション」が実現する。
(総務省ホームページから)
ということで通信を通じてエコな工場づくり、カスタマイズを可能にする工場づくりを目指そう、という動きが出てきている。イタリアをはじめヨーロッパではインダストリー4.0の推進がとても強いようでこれらの開発が進んでいる。日本ではまだまだ聞かない言葉でその機運が乏しい。Girbauの洗濯機も通信できるようになっており、それによりエネルギー消費量などの各種データを本部のPCにつなげることでデータ送信できたり、それぞれの洗濯機を簡単にカスタマイズできたりするのだ。アメリカで大人気のイタリアのコンベアメーカーMetalprogettiのソーティングシステムはまさにこれにあたる。これはソーティング、包装しながらラベルを添付、そして自動的に保管コンベアに投入、ということで通信しながらシステムが勝手に顧客管理をしてくれるのだからとても将来性が高い。ゆくゆくは我々のような仕上げ機もインダストリー4.0を検討していかなければならなくなるだろう。
ただ改めて我々の業界は今後どうしていけばいいのか?将来的なインダストリー4.0への取組みは一部で見えたものの、今後の我が業界の行く末をイメージしていた企業は殆ど見当たらなかった。もちろんドライクリーニング業がこのまま続けば言うことないのだが…。