三幸社の飛沫防止板 最終回

5月22日、我が社の事務所の一部にオフィスdeマスクを設置した。GCSC(グローバルカスタマーサービスセンター)という部署があり、ここが外部からの部品注文、メンテ依頼など様々な対応を行っている部署である。彼らが対面で電話越しに話し続けている状況を見て「彼らにまずは飛沫対策してみるか?」と言うことから設置してみた。それと同時に社員食堂にもレストランdeマスクを全テーブルに入れてみた。なかなか壮観だし、安全度が一気に上がった。これを見て「うん、事務所全部に入れよう!」と言うことになった。考えてみれば、我々は飛沫防止板メーカーでもあるのに自分たちが使っていないのはおかしいよね!と言うことで設置する事を決定した。

(事務所の全デスクに配置された。なかなか見栄えの良い事務所になった)

6月26日、全てのデスクに設置された。私は社長である兄の目の前に座っているのだが、我々の間にも飛沫防止板が入った。彼はにこやかに「いや〜、これで安心だ〜!」って・・・。俺はコロナ持ち?(笑

(我々の間にも設置。社長ともしっかり会話ができる)

執行役員で工場長の渡辺役員が独断と偏見で赤色のフレームを作った。こうやってみると赤のフレームも悪くない。残念ながら未発表なのだが、黒と白のフレームの中に赤が少々入っているとアクセントになって雰囲気が良い。色を塗る前は多くの社員が「赤なんてやめましょうよ!」と言っていたのだが思った以上の雰囲気で渡辺役員の鼻の穴が一気に広がっていた。

(未発売のレッド。全体のアクセントになっている)

皆で全デスクに入ったオフィスdeマスクを眺めていたら社長が「下のネジを緩めておいて!」と言い出した。我々は「なんでですか?」と聞いた。「少しよれているフィルムがシャフトの重みで少しずつピンと張ってくるはずだから」という。「本当にそうなるのかな?」と怪しげに思いながらも、せっかくだからやってみよう、と言うことでやってみた。翌日会社に来てみるとあらびっくり!少しシワの入っていたフィルムがきれいに張っているではないか!今度は社長の鼻の穴が大きく開いた!!(笑

この日、カタログができあがった。今までとは違い、見開き4ページのカタログ。それまでのカタログを比べても内容が相当濃くなったし、レストランdeマスクもこのカタログから正式に入った。さあ、これでラインナップもそろってきたし、カタログもしっかりしたものができたからこれで行けるだろう、と思ったらまた問題が発生。今度は「このフィルムは燃えやすい素材なのか?」という問い合わせだった。実は前の週あたりからテレビ報道でビニールを応急的に飛沫対策しているお店で火がついて一瞬で燃え広がってしまった、というニュースが流れていたのだ。実際、我々も現在使っているフィルムが燃えやすい素材かどうか、は確認していなかった。そこで実際に燃やしてみることとした。結果は写真の通り。燃えない訳ではないのだが、火種がなければ燃え広がることはないことを確認した。いわゆる「難燃性素材」という事だった。これにより素材を変更する事がなくなり一安心、皆で胸をなで下ろした。

(実際に燃やしてみた。日がそばにあると一応焦げ目はつくのだがすぐに消えてしまう)

5月29日、私はゼンドラの中澤編集長のアドバイスからPRタイムスというメディアに連絡した。商品はどんどん良くなっている。しかしどうしてもこれ以上広がらない。

「どうして?」

一つ言えることは自分の交友関係はそれほど広くない、と言うことだ。クリーニング業界であればいろいろな人を知っているが、この飛沫防止板となるともっと幅広い業界に使ってもらうことができる。しかし私はそれぞれの業界を知らない。どうやって接点を作る事ができるのか?その質問をゼンドラの中澤編集長にしたら「PRタイムスでも使ってみたらどうですか?」とアドバイスしてくれたのだ。早速、彼らのホームページから登録をして質問を投げてみた。すぐに返事が帰ってきて5月31日にオンラインミーティングをしてくれる事となった。私はそれまでに「お店deマスク」の紹介文を作ってみた。

そしてミーティングの日を迎えた。私は用意しておいた紹介文を写真付きで事前に送っておいた。それを見ながらミーティングをする事となったのだ。結論から申し上げると全く読むに値しないと言われてしまった。そこでどんな事に注意すれば良いのか?をゆっくり教えてもらう事とした。今までは自分の頭に浮かんだことをスラスラ書いただけだったが、やはりそれでは人には伝わらない、と言うことを思い知らされた。

そしてできあがったのがこの文章。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000059134.html

ポイントだけ説明しておくと

  • 会社情報:知らない人ばかりなので最低限の情報は載せること。
  • 製品情報:ここが一番最初に来るべき。何故ならばこれを一番伝えたいのだから。
  • セクション見出し:それぞれに見出しを付けて何を伝えたいのか、を題にする事。
  • 実用例:これはあれば尚結構、と言うこと。

こんなところを上手くまとめるとメディアなどが読んでくれるらしい。
これをとても丁寧に説明してくれたのはPRタイムスの舛田さん。私はこの後1ヶ月間に3つのプレスリリースと1つのストーリーを作ったのだが、彼にはとてもお世話になった。そしてプレスリリースの作り方がわかってきたので文章も作りやすくなった。この文章は3つめのプレスリリース。是非、最初のプレスリリースとの違いを見て欲しい。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000059134.html

PRタイムスを通じてプレスリリースをした瞬間にいろいろな会社からコンタクトが入り始めた。最初は似たようなプレスリリース会社からの営業活動がおおかったのだが、徐々にいろんな会社から連絡が入り始めた。

これ以外には銀行の月刊誌に掲載してもらったり、商工会議所の定期刊行物の中にチラシを一緒に入れてもらったり、J-Waveに無料の宣伝を流してもらったり、と様々な活動をしたおかげで実に様々な会社やお店からお問い合わせを頂くこととなったのだ。

現在はパーティションdeマスクという製品もリリースし、4種類の飛沫防止板を作り、おおよそ1200台が世の中に出た。自社の社員全員の給与をまかなうには全然足りない額ではあるが、何もやらないよりはよっぽどマシである。しかも4月13日に社長が「やろう!!」と言い出してからたった2〜3ヶ月でよくぞここまでできるようになったものだ、と社員全員の協力なしでは全くできなかっただろう。改めて社員一同に感謝したいとおもう。この飛沫防止板の誕生秘話もPRタイムスのストーリーに載せたので是非これも読んでいただきたい。

https://prtimes.jp/story/detail/WBq7KATRVrY

これからも「お店deマスク」シリーズは進化を続け、更にラインナップを広げることになるかもしれない。もし、読者のビジネスでこのような飛沫防止板のニーズがあるならば是非声をかけていただきたい。

三幸社の飛沫防止板 その3

5月7日、ゴールデンウィークが終わって久しぶりに出社した。ゴールデンウィーク中にどれだけの見込みやオーダーがあったのか、とても興味があった。しかし、その期待は全く裏切られた形となった。

「どうして?」

全員から動揺が走る。原因はいくつかあった。まずは価格だった。15,000円が高すぎるのだ。我々の感度がマーケットの感度とかなり差があったことが問題なのだろう。それまで三幸社の機械価格は世界でも一番高い方に位置する。それまで付加価値を売ってきた会社なので今回も同じメンタリティでモノが作られていたのは事実だ。しかしこの飛沫防止板は話しが違う。本来であれば設置しなくてもいいものを設置しなければならないというネガティブな要素が入っているからだ。様々なターゲット層に対応する事を考えると見た目も大切ではあるが、やはり価格がとても大切だ、と言うことをここで痛感した。

5月8日、早速試作ができあがった。価格を大幅に落とす事ためには部品点数を落とさなければならない。今までの概念を捨てて向き合わないと難しい。昨日から社長が直接、改善点を言い始めた。「ネジの数を減らそう」「フレームはもう少し細くても良いのではないか?」などなど。やってみた結果が写真のようになった。

(反省を踏まえて新作モデル。イメージが相当スッキリした)

 

 

(フレームが3cmから2cmへ。これだけでも相当無骨さがとれた)

前のバージョンと比較するとかなりスッキリした。横のシャフトは丸い棒を採用し、フィルムは同じモノを使っているがシャフトが挿せるように縫うこととした。これによりネジの数が大幅に減っただけでなく、フィルムのシワを伸ばす事ができる。部品が減り、フレームが細くなるとここまでシャープに見える事に社員一同大きな驚きを持った。そして料金であるが2/3の料金まで落として大丈夫と言うことももう一つの驚き!と言うことは15,000円が10,000円でできると言うことになる。これも相当な追い風になる。社員全員が「もう一度声かけをしてみよう!」と言うことになった。

5月9日、私はこの日はメンバーコースの日高カントリークラブで午前中ゴルフをやりに行った。やはり客はほとんどいない。ゴルフ場もこれではなかなか運営するのが難しそうに感じた。4月23日に納品したコース売店の飛沫防止板がどうなっているのか、もとても気になっていた。早速、売店で見てみたら、なんとフィルムの下にラップをグルグル巻きにしているではないか!私はすぐに売店の係員に聞いてみた。そうすると「思った以上にフィルムが高すぎて背の小さなお客様だと開いている部分に顔が来てしまうんです。だからこれで塞いで見ました。」と言うことだった。これはまずい!と言うことですぐに対策のフィルムを作って差し上げることとした。

(フィルムの高さが結局合わずに無残な姿に・・・。すぐに対策フィルムを作った)

レストランを訪問したら部長の小石川さんが言ってきた。「これからレストランを安全に運営するために飛沫対策をしないとまずいと思うようになってきました。我々はレストラン営業を絶対に辞めたくない。しかし今のところ安全に運営できる方法がなくて困っています。」と言うので丁度トランクに一つ入っていたオフィスdeマスクの最新型を取り出して、試してもらった。早速気になったところは三つ。まず高さが高すぎて圧迫感が強い。そして下の開口部が低すぎて共用している調味料や紙ナプキンなどが双方で使えない。そしてフレームの脚がどうしても無骨なのだ。レストランの様なところではもうちょっと細くスタイリッシュにして欲しい、と注文がついた。持ち帰って検討する事とした。

(対策した脚。上が対策後、下が対策前。同じ長さでもここまでスッキリ感が違う)

5月12日、日高カントリークラブのレストラン用ができた。圧迫感と共用備品、そして脚をもう少し細くする対策して持って行った。レストランのテーブルクロスが白だったので今回は白塗装で対応してみた。第一印象は悪くない。高さはオフィスdeマスクよりも30cm低い。これでかなり圧迫感はなくなった。そして下の開口部は20cm開けてみた。こうすればおおよその共用品はぶつからずに使い回す事が出来る。そして脚の形もスリムになった。小石川部長のリクエストからレストランdeマスクの基本形ができあがり、この脚の形が今後の全てのシリーズに適用される事となる記念すべき日となった。また、この日は同時に狭山ゴルフクラブにも納品があったので、まずは狭山を訪問したのだ。こちらではフロントにオフィスdeマスクを置きたい、と言うことで2台を納品させてもらった。これによりフロントはとても見栄えの良いモノとなった。支配人をはじめ関係者もとても喜んでくれた。その次いでに日高に持って行く予定のレストランdeマスクを彼らにも見せるだけ見せたのだ。思った以上に反応が良い。「これ、良いね!ウチにも是非サンプルを持ってきてくださいよ!」と好反応だった。こういう反応があるととても嬉しい。

(狭山ゴルフクラブのフロント。このイメージにしっかり合う黒塗りで対応した)

狭山ゴルフクラブを後にし、日高カントリークラブへ。小石川部長が待っていた。早速新作を持って行ったら彼らもなかなかの反応を示してくれた。一応合格!このまま置いてもらう事となった。

(日高で試してもらったレストランdeマスク試作品。下は共用品が自由に手に取れる様になっている)

この辺りから少しずつ異業種への販売が目立つようになってきた。居酒屋、ある会社の事務所や会議室、そしてゴルフ場。更に異業種ながらこの飛沫防止板専門代理店になってくれる会社も徐々に増え始めてきた。なんかつながり始めてきた。新しい事をやることで新しいお客様ができ、その方々から新たなリクエストをいただき、それを形にする事で次の商売が生まれる。決して儲かる商売ではないが、この時代に贅沢はいえない。一種の社会貢献として進めていくならば十分ではないか!これは4月13日に社長が言い出した事だが、たった1ヶ月でここまでの事が出来るようになったのは本当にすごいとしか言いようがない。

(居酒屋に納品。拡張ユニット付でしっかり飲食スペースとの間をシャットダウン!)

 

(とある会社の会議スペース。来客が多い事から設置を決めたらしい)

(地方のドラッグストア。これなら使える!と採用してもらった)

(大手予備校の面接スペース。シンプルだが会話も問題なくできているとのこと)

まだまだ機械の仕事は全くもらえずとても苦しい状況ではあるが、この飛沫防止板を通じて少しでも工場を動かせるようにしていきたい、と全員が一丸となっていた。